[プロローグ:世界の理を圧し折る者]
「——そこまでだ、愚か者ども」
その声が響いた瞬間、世界の時間が凍りついた。
悲鳴と火の粉が舞い散る穏健派の集落『ミルフィーの村』。
そこに集っていたのは、人間側の絶対的強者集団——「殲滅派」の猛者たちだった。美しい顔立ちに冷酷な蔑みを浮かべたエルフの極大魔導士や、血を求めて大斧を握る人間の精鋭たち。彼らは「魔族はすべて悪だ。幼子だろうと生かしてはおかん」と、無抵抗な穏健派の魔族たちを惨殺しようとしていた。
だが。
ドオォォォォォォン……ッ!!
空から舞い降りた一筋の漆黒。
それが地に足つけた瞬間、まるで「世界の重力が数十倍に跳ね上がった」かのような圧力が爆発した。
「ぐあぁぁっ……!? な、なんだこの圧力は……っ!?」
「身、身体が……動か……っ!」
地面が大きく沈み込み、エルフの魔導士たちが膝をつき、血吐く思いで絶叫する。
殺意も、魔法の詠唱も、誇りすらも——その場に存在する全ての感情が、たった一人降り立った青年の「圧倒的な存在感」によって物理的に押し潰されていた。
黒い髪、漆黒のコート。
かつて勇者パーティーの仲間であり、アルカディアの地で死んだはずの男。
——クロード。
彼は冷徹な漆黒の瞳で、ひれ伏す殲滅派のエルフや人間たちを見下ろしていた。その背後に巻き起こる漆黒の魔力の奔流は、もはや一国の軍隊すら一瞬で消し飛ばすほどの質量を誇っている。
クロードは微動だにせず、低く静かな声で問いかけた。
「……お前たちは、本当にそちら側に就くのか?」
その言葉は、目の前で平伏する殲滅派だけでなく、傷だらけになりながら立ち上がる勇者一行にも向けられた、あまりにも重い問いかけだった。
「力なき者を虐げ、種族というだけで全てを殺し尽くす冷血の側に……。俺たちが戦い、伝えてきた真実は、そんなものだったか?」
「クロード……っ!!」
血を流しながら、剣を支えに立ち上がったのは、勇者バッシュだった。
その傍らには、過酷な旅と極限の修練を乗り越え、見違えるほどの強さと精神耐性を身につけたエリス、ゼット、レオン、プルの姿がある。
バッシュは胸の奥底から、魂を振り絞るように叫んだ。
「違う!! 俺たちが教え込まれてきた正義は……俺たちが信じた生き様は、無抵抗な者を殺すためのものじゃない!!」
バッシュは真っ直ぐにクロードを見つめ、己の剣を強く握りしめる。
「魔族だから殺す、人間だから生かす……そんな冷酷な殺戮を、俺は絶対に正義とは呼ばない! 無抵抗な者を踏みにじる奴らが人間だろうと神だろうと、俺は全力で叩き潰す! 俺たちは正統派の勇者だ!!」
その叫びを聞いた瞬間、クロードの冷徹だった瞳の奥に、かすかな温かさが宿った。
クロードはひれ伏す殲滅派たちを見下ろし、小さく息を吐く。
「……すまないが、そういうことらしい」
クロードが静かに右手を一振りした瞬間、周囲の空間が歪み、殲滅派の猛者たちは絶叫すら上げる間もなく、一瞬で意識を刈り取られて地面へと叩きつけられた。
圧倒的な強者。闇に佇む師。
そして、己の信念を叫ぶ正統派勇者。
——これは。
俺たちが仲間を失い、絶望を抱え、それでも己の『正義』を証明するために駆け抜けた……すべての始まりの物語だ。
これからは、できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!
お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。
次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!




