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第2章:裏切りの影と新たな絆 第16話:残された者の誓いと、温かな手

古都アルカディアを去り、北の峻厳な山々を越える街道。

冷たい山風が吹き抜ける中、勇者パーティーの歩みはどこか重く、静まり返っていた。


クロードの爆発による『自爆(偽装戦死)』。そして、何も言わずにパーティーから姿を消した天才魔術師クルル。

かつて賑やかだったパーティーは、バッシュ、ゼット、エリス、そしてエドの四人だけになっていた。


「ハァ……ハァ……っ! 『聖光斬』っ!!」


ザッ……と土煙が舞い上がり、バッシュが無心で大剣を振り抜く。

セレスティアの村を出た頃とは比べものにならないほど、その太刀筋は鋭く、身体から漏れ出る聖なる力も重みを増していた。だが、振り抜いた大剣の先を見つめるバッシュの瞳には、消えない焦燥と痛みが深く滲んでいた。


「そこまでだ、バッシュ。……息が乱れすぎているぞ」


静かに声をかけ、二本の大剣を滑らかに鞘へと収めたのはゼットだった。

バッシュは大剣の先を地面に突き立て、膝に手をつきながら肩で荒い息を吐き出す。汗がポタポタと乾燥した土に染み込んでいった。


「……くそっ、もっと……もっと強くならなきゃダメなんだ。俺が頼りないから……クロードを守れなかった。クルルだって……俺が無力だから、愛想を尽かして出て行っちゃったんだ……!」


「バッシュ……」


エリスが痛々しそうな表情で駆け寄り、小さな手から柔らかな回復の光をバッシュの肩に翳す。

バッシュは自分の腰にそっと手を伸ばした。そこには、クロードが身につけていた小さな剣の鞘が差してある。アルカディアの惨劇の跡に残されていた、たった一つの形見だ。


「俺は勇者なんだろ……? なのに、大事な仲間を一人も守れないなんて……こんなの、勇者なんかじゃない……っ」


悔しさに拳を握りしめ、ボロボロと涙をこぼすバッシュの背中に、ポン、と軽やかで温かな手触りが伝わった。


「おいおい、自分を責めすぎるなって、勇者様」


振り返ると、陽気で親しみやすい笑みを浮かべたエドが立っていた。

エドは腰の水袋を外し、バッシュに差し出すと、柔らかい手つきでバッシュの肩を優しく叩いた。


「クロードの件は、誰のせいでもないよ。あいつは自分の命をかけて、俺たち全員を助けてくれたんだ。命の恩人なんだよ。……それに、クルルだって自分の足で歩き出したんだろ? 俺たちがいつまでも下を向いてメソメソしてたら、死んだクロードも、出て行ったクルルも浮かばねえよ」


「エド……」


「俺はさ、手先がちょっと器用なだけのしがない工作員だけど……バッシュ、お前みたいな真っ直ぐで嘘がないやつをリーダーだと思ってついてきたんだ。これ以上、仲間を失うのは俺だってまっぴらごめんだよ。だからさ——俺がしっかりお前たちの背中を支えてやる。手足になってサポートするから、お前は前だけ見て走れ」


エドの言葉には、どこまでも温かな友情と、傷ついた仲間を気遣う優しさが溢れていた。

エリスも涙を拭いながら深く頷き、ゼットも荒々しくバッシュの頭を撫でまわした。


「エドの言う通りだ、バッシュ! 俺たちは四人で勇者パーティーだ。クロードの意志を継いで、必ず平和を取り戻すぞ!」


「……みんな……。ありがとう」


バッシュの瞳から、迷いの陰りが消えた。

エドの完璧な配慮と優しい言葉によって、失意のどん底にあった四人の絆は、これまでにないほど強く結ばれ直したのだった。


——仲間を心から信頼する『光の勇者』たち。

その温かな輪の中で、エドはいつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべ、バッシュの背中を静かに見つめていた。

できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!


お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。


次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!


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