第15.5話(幕間)【クロード編】:影の帰還と、静かな強者
古都アルカディアの喧騒から遠く離れた、人里離れた鬱蒼とした森の奥深く。
苔むした岩々に囲まれた古い聖堂の跡地で、一人の青年が佇んでいた。
あつらえたような漆黒の長コートを風になびかせ、佇む青年。
その静かな佇まいと深遠な瞳には、底知れぬ魔力の質量が秘められていた。
彼の正体は、魔王軍・穏健派の頂点に君臨する魔王ルシエラに仕える最高幹部——【四天王】の一人、クロードである。
手元に握られた掌サイズの青い魔導結晶が、静かに明滅を始める。
その光の波長に乗って、聖堂内に気品と慈悲に満ちた女性の声が響き渡った。
『……聞こえるか、クロード』
「お待たせしました、ルシエラ様」
クロードは慌てる様子もなく、淡々とした声で応じた。
へりくだるような態度は見せないが、言葉の端々にはルシエラという存在への自然な敬意が含まれている。
『急な呼び出しですまない。単独での調査、苦労をかける』
「いえ。お言いつけ通り、各地の動向の探査は済んでいます」
『うむ、お前が動いてくれているなら安心だ。……だが、最近は我ら穏健派や人間に無差別に攻撃を仕掛けてくる『武闘派の魔王』の動きが激しくなってきている。我が方の領地や要塞へも、不穏な影を落とし始めていてな』
ルシエラの言葉を受け、クロードは少しだけ視線を落とした。
「武闘派の連中ですか。共存の理念を理解できず、相変わらず力任せに暴れているようですね」
『ああ。……お前の力を頼りにするのは心苦しいが、裏で動いている過激派の動向を抑えてほしい』
ルシエラの声には、四天王の中でも突出した実力を持つクロードへの、絶対的な信頼が込められていた。
クロードは静かに息を吐くと、特に大袈裟な誓いを立てるでもなく、当然のように告げた。
「分かりました。僕が動けば、武闘派の過激な動きも抑え込めるでしょう。裏の邪魔者は適当にあしらっておきます」
『頼んだぞ、クロード。お前がいてくれるのは実に心強い』
「お任せください」
通信が静かに切れ、青い光が収まる。
静寂が戻った聖堂で、クロードは漆黒のコートの袖口を整え、ゆっくりと森の奥へ向けて歩き出した。
「さて……行くとしますか」
圧倒的な強者ゆえの余裕と静けさを纏い、影の英雄クロードは闇の中へと消えていったのだった——。
できる限り毎日投稿を続けていきたいと思っています!
お目通しいただけたのも何かのご縁ですので、これから毎日読みに来ていただけたらとても嬉しいです。
次回の更新もぜひ楽しみに待っていてくださいね!




