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『少し』『不思議な』骨董品屋――嘘です!『非常に』『危険な』呪物マニアの先生が、呪いの効かない僕を手放してくれません!  作者: 東中
ビスクドール

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「ちょっと、ちょっと待って。整理させてください」

 落ち着いたはずの思考がまた掻き乱され、無意識に額に手を当てる。

 考えようとするが寝不足の時みたく、脳がチリチリしてまったく頭の中がまとまらない。

「はいはい。どうぞどうぞ」

 待ってましたと言わんばかりに、先生が弾んだ声で僕を手で指し示す。

 嬉々としたその態度に少しげんなりしながら、反芻するようにひとつひとつ確認する事にした。

「その。人形の、《《何か》》がまた新しくなっている、と」

「そうそう、面白いよねえ。昨日の今日だよ」

「しかもその《《何か》》がふたつに増えた、と」

「それそれ、なかなかに珍しい事だ、これは」

「つまり《《何か》》とは……」

「とは?」


 先生が次の言葉をニコニコ顔で待っている。

 待っているけど、これ以上は駄目だと脳内の僕が待ったをかける。

 怪異の真っ只中に身を置いている現状。

 正気度というパラメータがあるのなら、目減りしていってる実感がある。

 嫌だ、関わりたくない、全力で回避したい。

 はいもう無理、無理でーす。


 腰に手を当て、大きく息を吐く。

「とりあえず僕帰っていいですか」


「いいけど。また憑いてくるよ?」


「嫌だあああ!!」


 怒涛のごとく押し寄せる絶望。逃げ出す事も無駄だと聞かされ、膝から崩れ落ちて頭を抱え床にしゃがみ込む。

「なんで僕なんですか! 先生が気に入られたんじゃないんですか!」


「そりゃあ、新しい中身は昨日の女子高生たちだからねえ」


「……はい?」


 全く想定していなかった台詞に思わず顔を上げる。いつの間にかこちらを向いていた人形と目が合った気がした。

「それで年の近いキミに憑いてったんだね。にしてもやるねえ、キミも」

「なんか今サラッと、ものすごく怖い事言いませんでした? 言いましたよね?」


 それまでの怖さが吹き飛ぶような《《怖い》》話を聞いてしまった。

 中身が昨日の女の子たち?

 あり得ない、けどそのあり得ないことを僕はもう何度も体験してしまっている。

 考える。

 中身の入れ替わった人形が、なぜ僕に憑いてきたのか。

 人形であれ意思が人のものなら行動に意味があるはず、だ。きっと。

 もしそれが助けを求めての事なのだとしたら。


 恐怖を隅に追いやり、気持ちを奮い立たせ起き上がる。


「どうにかしないと」

「何を?」

 僕の言葉が予想外だったのか、先生は目をぱちくりとさせた。

「何って……呪いで二人が取り込まれてるんですよ、神隠しじゃないですか! 大変な事じゃないですか!」

「そうかい?」

「きっと彼女たちは僕を頼って来たんです、先生怪しいし。例えば、その、僕の『鈍感力』とやらで何とか出来ませんか」

 のらりくらりと僕の話をかわそうとする先生を逃さないため、目に力を込めて真正面から先生を見据えて言った。

「助けましょう、家族も心配してますよ!」

「んー、どうだろうなあ」

 僕の焦りをよそに先生は落ち着いていた、むしろ冷めていると言った方がいいくらいだった。

「ああもう! なんでそんな冷静なんですか!」


「というかキミ、根本的に《《分かってない》》ね」


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