第7話「可愛い靴を10年履かなかった理由が、全部正しすぎる」
第7話「可愛い靴を10年履かなかった理由が、全部正しすぎる」
“可愛い”と思って買ったパンプスの靴。
いざ、外出に履こうとする。
しかし。
もし災害が起こったら、走れないのでは?
と考える。
これを繰り返す。
結局10年以上、眺めているのみ。
“大人になったら夜景の見えるホテルで外食をする”
と思い込んで、購入したワンピース3着。全部黒色。
同じく10年以上。
神棚のように飾っては眺めている。
この靴、ヒール5cm。ワンピース(ロングスカート)。
ともに全力疾走は不可能。
地震発生から避難場所まで。
私の現在地。間に合わない。
外出時の発生時、さらに困難。
浸水した場合、絶望的。
ワンピースとパンプスを履く。
全身鏡でチェック。可愛い。
玄関まで行く。
愛用のウォーキングシューズを見る。
無言で靴を戻す。
やっぱり履く。
ドアまで行く。戻る。
ドアから外へ出てみる。
やはり戻る。
繰り返した結果。
災害時用に走れる。
動きやすい服装に着替える。
愛用を履く。
***
外に出る。
徒歩7分のスーパーマーケットへ。
歩く。
小さい石につまづく。
「・・・・・・」
パンプスだったら危なかった。
この選択は“生存確率を最大化した結果”だ。
帰宅時。
ひかりと出会う。
「麗子やん、飲もうよ」
お腹を出した服を着ていた。
引き締まっている。
思わず凝視する。
「ほら行くで」
腕を引っ張られる。
横からも凝視。
美しい腹筋。
私の部屋だ。
ひかりは、スパークリンリングワインを飲んでいた。
私はミネラルウォーター。
お酒は飲まない。脳への悪影響が懸念される。
お互いスーパーマーケットで購入したものをつまむ。
「麗子、玄関においてたパンプス可愛いやん」
「可愛いです」
「履いてるとこ、見たことないんやけど」
「・・・安全確保です」
「意味わからん。ほんで上は? 何と合わせんの?」
「・・・少々お待ちを」
私は神棚のように飾っていたワンピースの1着を見せる。
「こちらの予定です」
「ええやん! 可愛いやん」
「可愛いです」
「いつ買ったん?」
「・・・10年以上前です」
「もう化石やん。これ着て外、出てないやろ」
「出てないです」
「ほんで、いつ着るん?」
「“完璧な日”に」
「その日いつ来んの?」
「まだ観測されていません」
「・・・マジか、やば」
「はい。残念ですが・・・もうすぐ減価償却として計上します」
「いやいや。着たらええやん!」
——パシャ。
ひかりは、ワンピースとパンプスが映るように。
写真を撮った。
「観賞用ですか?」
「ええから、ええから」
「・・・」
気づいたら深夜だった。




