伊吹 第24話「伊吹が見た。“何かの式”(誰も結婚とは呼ばない)」
伊吹 第24話「伊吹が見た。“何かの式”(誰も結婚とは呼ばない)」
朝。
俺はこの日が嫌だった。
先日見ていた。
町内とマンションの掲示板。
『あの2人の節目イベントあり』
『私服参加 ・ 15分程度で終了予定』
「節目って何だよ」
とりあえずジャケットを羽織って行く。
場所は式場ではない。
でも“それっぽい場所”に人が集まっていた。
マンションの住人たちの会話。
「今日だね」
「ついにね」
「何が“ついに”だよ」
テーブルには飲み物と焼き菓子。
花も飾ってある。
司会役の町内会長がいる。
「これ完全に式だろ」
しかし、誰も「結婚式」とは言わない。
白川麗子と夕凪悠真。
主役の2人がいた。
いつも通り。普通に私服。
それぞれ言う。
「今日は人が多いね」
「イベント密度が高いです」
「お前らだけ温度違うのやめろ」
名前のない“何かの式”が開始。
町内会長が話す。
「では・・・本日の“共有確認”を始めます」
「共有確認って何だよ!!」
住民の一人が言う。
「誓いみたいなもんだよね」
「“みたいなもん”で進めるなよ」
町内会長の言葉。2人が答える。
「では、お互いの安定継続について」
「今のままで問題ないです」
「継続は合理的です」
拍手。
「これ結婚式だよな?!」
「違うよ」
周りから否定される。
これは結婚式じゃないらしい。
じゃあ俺は何を見せられてんだよ。
町内会長の言葉。2人が答える。
「では最後に、一言ずつ。 誓いのようなものを」
「これからも、変わらないと思う」
「必要に応じて、変化は最適化されます」
拍手。
「なんも誓ってねぇ!!」
“何かの式”が終了。
10分も経っていなかった。
片づけ。
住民は満足している。
俺だけ呆然と立っていた。
「結婚式じゃないけど“それ”っぽかった」
夕凪が隣に来る。
「伊吹、どうだった?」
「マジで意味わかんねぇ」
「うん」
「何もかも違うはずなのに」
「うん」
「なんか妙に腑に落ちた・・・腹立つ」
麗子さんが言う。
「異常は観測されていません」
「俺の脳が異常なんだよ!!」
片付けが終わる。
住民たちの会話。
「良いイベントだったね」
「うん、あの2人らしいよね」
伊吹は一人帰る。
考える。
「“名前”にこだわってんの。 俺だけ?」
「結婚とか恋人とか。 言葉におさめようとすんの、俺だけなのか?」
途中。
夕凪たちのマンション掲示板だけ覗きに行く。
掲示板に貼られた紙。
『本日の“共有確認”終了しました。 ご協力ありがとうございました』




