第9話 出航
※お知らせ
序盤(1〜5話)を改稿・再構成したため、話数が変更になっています。
内容自体は大きく変わっていませんので、そのまま読み進めていただいて大丈夫です。
採掘を終えた俺たちは、麻袋を抱えて洞窟を抜けた。
砂浜を歩いて桟橋へと向かう。
「おう、お疲れさん。今ちょうど整備が終わったところだ。で、レンとタイガはどこまで送ってやれば良いんだ?」
ビリーが船から降りて、笑顔で出迎えてくれる。
どこまで送るって……俺だけみんなとは違う故郷にでも送ってくれるつもりだったのか……? ビリー、人が良すぎるだろ……。
「レンとタイガは『ヴェルーナ』の冒険者ギルドに用事があるらしいから、このままヴェルーナに引き返してもらえば問題ねぇ」
マイクがそう言うと、ビリーは短く「了解!」と返事をした。俺もすぐに「お願いします」と頭を下げる。
ヴェルーナ……それが、俺が今から行く町の名前か。
どんなところなんだろう?
気になるけれど、彼らにはあえて聞かないでおこうと思った。
だって、変な想像をするよりこの目で見た方が――きっと良い。
「じゃあ、全員船に乗り込んで出航の準備、手伝えよー」
ビリーの一声で、マイクたちは麻袋を抱えたまま「はいよー」と船に乗り込んでいく。
「あっ、はい!」
タイガを肩に乗せた状態の俺も、麻袋を抱えて慌てて船に乗り込もうとする。
「うおっとっと……と!」
船から桟橋にかけられた板がグラッと揺れ、落ちそうになるところをなんとか耐える。
ふぅ、危ない……。
「おおぉ、大丈夫かい、レン?」
ボブがそう言って俺の麻袋を受け取って船へと積み込み、俺の腕をグイッと引っ張ってくれた。
「す、すいません……俺、船、初めてで……」
「船が初めて……!? んじゃあ、どーやって漂流したの……」
ボブは目を丸くした。
た、確かに……!?
「えっと、実を言うと、よく、覚えてなくて……」
俺のその苦し紛れの一言のせいで、彼らにめちゃくちゃ心配される羽目になった。
しかし、俺が元気で前向きだと言うこともあり、最終的には〝ニホンというド田舎のちょっと記憶喪失の青年〟で話が落ち着いた。
彼らの心配から解放されたところで、改めて自分の乗り込んだ帆船を見渡してみる。
歩くとギシギシと音の鳴る木製の船。
2本の背の高い柱があって、真っ白な帆が畳んである。
奥には扉があった。向こうは部屋になってるのか……。
そして一番驚いたのは――
「縄、多くね……!?」
柱から無数の縄が張り巡らされている。帆船って、こういう感じなのか……。
勝手に甲板、帆だけで走っているのかと思っていたけど、実際には見渡す限り、縄だった。
「うん、紐がいっぱいだぁ♪」
タイガもそう言って俺の肩からぴょんと飛び降りて、甲板をウロウロ歩き回っていた。
そんな俺たちを、向こうで作業をしていたビリーが笑う。
「だはは! おもしれぇ反応だな、レン。ほら、出航してからいくらでも歩き回ってくれればいいからよ、今はその鉱石、タルに入れてそこの縄に括り付けろ」
「あっ、はい、すみません……!」
隣でボブも同じことをしているようだったので、見よう見まねでタルを縛った。
上空でバサッと大きな音がしたため顔を上げると、大きな帆が空を覆っていた。
船体がわずかに傾き、風を受けた帆が大きく膨らむ。
「おぉぉ、すげぇ……」
帆船だという実感が湧いてきて、思わずはにかんだ。
「じゃ、錨、上げていいぞー」
いつの間にか船の奥の方にいたビリーからそう掛け声がかかる。
マイクたちは「おうよ!」「はーい」と返事をしながら「わっせ、ほいせ」と海から縄を引き上げていた。
横から興味津々に眺めていると、大きな錨が顔を出す。すげぇ、すげぇ、本物だ……!
「よし、出航!」
ビリーがそう声を上げて大きなハンドルを回す。
ザザンと波の音が聞こえ――
――船は、滑るようにゆっくりと動き出した。




