表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第一章 旅の決意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/23

第4話 残されていた手記

 地底湖での絶景キャンプを楽しんだ俺とタイガは、世界中を旅するためにこの廃村を出る決意をした。

 

 どうやらこの土地は小さな島のようで、岩山の向こうは海岸になっており、桟橋があるらしい。

 その桟橋にたまに船が停泊して、数人の人が岩山に入っていくとのこと。


 タイガ曰く、その人たちは岩山の入り口付近の壁をカンカンと削り、石を袋に詰めて持ち帰っているらしい。

 滞在時間はそんなに長くなく、袋の中がいっぱいになったらすぐに船に乗って帰っていくそうだ。


 ひとまずの目標は、その人たちに会えるまで岩山の向こうで生き残ること。

 しっかり、準備をしていかないとな。

 

 ◇


 準備の一環で、いつもお世話になっている廃屋を片付けていると――


 ――作業台の引き出しから、ボロボロの手記を見つけた。


「なぁ、なぁ、レン。それなんだ?」

 タイガが作業台にぴょんと飛び乗り、俺の持っている手記を覗き込んできた。

「なんだろうな、見てみるか」


 軽くペラペラとページをめくってみると、ここに住んでいた錬金術師の手記だということが分かった。

 そして、あるページで手が止まる。


 ――――

 魔物が活性化してきたために、錬金守護獣を造った。

 彼が生まれるまでには、少し時間がかかる。

 ――――


「これ……!」

「錬金守護獣……ボクの、こと……? なぁ、レン! 早く次のページにいってくれよ」

 

 タイガはそう言って俺の手をちょんちょんと突き、急かしてきた。

 俺はコクンとうなずくと、次のページをめくった。


 ――――

 しかし、魔物が活性化してきた原因は、この土地のマナの揺らぎにあるだろう。

 私たちは、錬金術の核に深く踏み込み過ぎた。

 

 特にゼラードの「賢者の石」の研究は危険だ。あの研究により、空気中のマナに異常が現れていることは明白だ。

 

 このままでは、この島が危ない。

 研究を止めてもらえるよう、ゼラードを説得しなくては。

 ――――


「なるほど、危険な研究をしていたやつがいたのか……」

「あぅ……」

 タイガはシュンと落ち込んだ。よしよしと、タイガの頭を撫でる。

 

 『マナ』というのは錬金術の本で学んだ。俺たち生き物の魔力の素となる元素で、空気中の8割を占めているらしい。窒素かよ。

 まぁ、それは置いといて、もう少し続きを読んでみよう。


 ――――

 ゼラードは聞いてくれないどころか、研究室に閉じこもって出てこなくなってしまった。

 

 いよいよ、この島も私たちも無事では済まない。

 今後、ゼラードのように「賢者の石」に憑りつかれる錬金術師が現れることも避けなくてはならない。

 

 私たちは、賢者の石と共に消滅することを選んだ。

 賢者の石を消滅させるためには、我々の命をかけるくらいの魔力を消費するからだ。


 気がかりなのは、私たちのために生み出している最中の錬金守護獣だ。

 守護獣には無意識に「守る」という強い意志が働く。

 彼が戸惑ってしまわないか、不安だ。

 ――――


「消滅って、マジか……」

 それに、守護獣の性質についても触れられていた。

 

 タイガは岩山の中でも、ごく当たり前に俺を魔物から守ってくれていた。

 この手記に書かれていることは、多分正しい。


「守護獣は無意識に守るって……そっか、ボク、それでこの村から離れようって思わなかったんだ」

「タイガ、そうだったか……」

 

 そうだよな。タイガは俺にも話しかけてきてくれた。

 この愛嬌があれば、岩山の向こうに来る人たちにだって、話しかけることくらいできたはずだ。

 

 それを今までしなかったのは、この村を無意識に守ろうとしていたからなのか。


 俺たちは更に続きを読んだ。


 ――――

 星詠みの錬金術師カーラが、希望の星を詠んでくれた。

 何もないところに一つポツンとたたずんでいた小さな星の側に、新たに星が生まれたという。


『どこからやってきたのかも分からないそれは、ひとりぼっちの小さな星に、そっと寄り添うだろう』

 カーラの言葉だ。


 錬金守護獣に寄り添ってくれる存在が現れる予知であると、私は信じたい。

 ――――


「……これって、俺のことか!?」

 星詠みって言ったら、星を使った占い、みたいなもんだよな。

 もしかして、女神様は、そのことを知っていて、俺をここに……?

 

「星? カーラって言ってる人の言葉は、なんか難しいなぁ」

 首を傾げるタイガ。比喩表現は、ちょっと難しかったか。


 ――――

 もし、その新たな星が『人』であるのなら、この手記を残していく。

 これから先は、今この手記を読んでいる『あなた』に宛てた手紙であると思ってほしい。


 まだそこに錬金守護獣はいるだろうか?

 一見動物のような姿をしているが、言語能力を有しているため、すぐに分かるはずだ。


 もしまだ錬金守護獣がこの島に残っているのであれば、どうか私たちのことは気にせず自由に生きてほしいと、伝えてほしい。

 生み出したのはこちらなのに勝手を言うようだが、どうか、どうかお願いだ。

 ――――


「この人、ボクに、自由に生きてほしいって……!」

 タイガの瞳がキラリと光る。

 この手記、タイガのためにも見つけられて良かったのかもしれない。


 ――――

 賢者の石を使った錬金道具は壊していくが、それ以外の安全な錬金道具は残していこうと思う。

 錬金守護獣を託すお詫びだ、好きに使ってほしい。

 使い方は、本棚に残していく本を見てくれ。


 錬金道具の作り方を継承するのはやめておこう。ゼラードのような人物が生まれてしまっては、私たちの覚悟が無駄になる。


 もしかしたら、今までの私の手記を読んで、錬金術は怖いものだと思ってしまったかもしれない。

 だが、安心してほしい。


 錬金術の危険な要素は、私たちが残らず連れていく。

 私がこの家に残していく錬金術は、楽しいものばかりだ。

 錬金守護獣にも、錬金術は楽しいものだと伝わっていることを願う。

 ――――


「この人、優しい人だな……」

「うん、ボクを造った人は、優しい錬金術師……。ボク、錬金術が楽しいものだって、知ってるよ」

「そうだな」

 

 俺が使っても大丈夫なように、大丈夫なものだけを残していったってことか。

 というか、既にもう色々使わせてもらってます……。勝手に使い過ぎて若干罪悪感があったから、ここで許してもらえるのは俺の良心的にも助かる。


 錬金道具を色々残していってはくれたけど、もうそれ自体を作ることはできないよってことだ。

 ん? そろそろ、この手記も終わりみたいだな。


 ――――

 では、私たちは今から危険な錬金術師と、賢者の石の抹消に取り掛かる。

 きっと、私たちの身体は魔力の粒子となってしまい、消滅してしまうだろう。

 だが、それでいい。死体は嫌だからな。


 お別れだ、名も知らぬ旅人よ。

 あなたの進む道に、錬金術の明るい未来と、女神の加護があらんことを。


 錬金術師 イヴン・トゥグラーより

 ――――

 

「ふぅ……」

 静かに手記を閉じる。なんとも言えない熱い気持ちが、胸の奥に込み上げてくるのを感じた。

 

「レン……。この手記、見つけてくれてありがとう。ボク、自由に生きて、レンと自由に冒険する!」

「おうよ!」


 無意識に責任を感じていたタイガの心が、自由に飛び立った。

 よし、俺もイヴンから好きにしていいって言われたしな。

 俺もまた――自由に飛び立つんだ。

 

 錬金術は、調合、成形、分解の3種類。

 次は成形、チャレンジしてみるか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ