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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第一章 旅の決意

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第3話 秘境キャンプと決意

「ここ、坑道になってんのか……」

 ランタンに火を灯して辺りを確認してみると、整備された洞窟が続いていた。

 

 そりゃそうか、錬金術師たちもあの閉鎖的な空間にこもりっきりではなくて、この坑道を使って向こう側と行き来してたってことだな。


 岩壁に設置してある松明にランタンの火を分けて、坑道内を明るくしていきながら進んでいく。

 

 すると、奥の方から「キューッ!」という鳴き声が聞こえてきて、緑色で楕円形のぷるんぷるんの何かが飛び出してきた。

 目は赤黒く光り、今にも襲い掛かってきそうだ。


「げっ、なんだコイツ!?」

 すぐに鑑定眼でチェックしてみると、赤色で『スライム』と表示された。


 すると、タイガが俺の前に躍り出る。

「大丈夫。魔物はボクに任せて」

 

 魔物!

 この世界には、魔物が出るのか……。

 

 タイガの身体が光り出し、みるみるうちに大きくなっていく。

「え、ちょ、タイガさん!?」

 

 俺よりも大きくなったタイガは、完全に〝虎〟だった。

 

「えーい」

 虎タイガは幼児声のままじゃれるようにスライムをひっかく。

 ブンッとものすごい風圧を感じ、ただのひっかきなのにすさまじい威力なのが伝わってくる。

 

「キュー……」

 簡単に吹っ飛ばされたスライムは、壁に打ち付けられると同時に黒い霧となって消えた。

 スライムの消滅した真下には、黒い文字で『スライムゼリー』と表示される、ぷるんぷるんの何かが落ちていた。


「あっ、素材落ちたね。錬金術に使えるかもだし、拾っとく? って、レン、どうしたの?」

 ぽかーんと口を開けて固まっていた俺は、その虎タイガの一言で我に返った。


「おまっ、タイガ、めちゃくちゃつえーじゃねぇか! すげぇな!」

 俺が興奮気味にそう言うと、タイガは得意げにふふんと鼻を鳴らした。

 

「ボク、守護獣だって言ったでしょ? 人を魔物から守るのが、ボクの役目だからね♪」


 そうか、タイガは魔物から人を守るために錬金術師に造られたのか。

 そして、村の中で虎サイズにならなかったのは『虎の間は魔力を消費して疲れるから』だそうだ。


 村の中では全く遭遇しなかったのに、この坑道にはわんさか魔物が出る。

 村には魔物が出ないための何か仕掛けがあったのだろうか?


 ◇


 気を取り直して坑道を進んでいくと、数分で開けた空洞へと出た。

「ここ、ボクのお気に入りの場所なんだ♪」

「うわっ、地底湖か……! 綺麗だ……」


 開けた空洞の奥には、ほんのりと青く光る湖が広がっていた。

 ここなら、ランタンがなくても暗くない。なるほど、湖の上だけ吹き抜けになって空が見えてんのか。


「な? 綺麗だろ?」

 得意げな虎タイガ。俺は大きくうなずいた。

「おう、めっちゃ綺麗だ」

 

 ここで俺はある名案を思い付く。

「そうだ、タイガ。今日はここでキャンプしようぜ!」

 

「キャンプって、焚き火したりってことだよな! うん、やりたい! あっ、でも魔物が出るよ……ボクずっとこのままは疲れるかも……」

「あっ、そうか……」


 ここも、村みたいに安全にはできないものか……。

 

 ――そうだ!


「タイガ、村はさ、あの女神像が魔物除けになってくれてんじゃないか?」

「女神像……広場のやつか! なんか微妙に魔力を感じてたし、そうかも!」


「よし、一旦村に戻ってキャンプの準備だ」

「えっ、あの女神像をここまで運んでくるの!?」

「違う違う、俺に考えがある」


 俺たちは急いで村へと引き返す。村に戻ると、虎タイガは子猫タイガへと戻っていた。

 俺はいつも使わせてもらっている廃屋に駆け込むと、タンスの引き出しをあちこち開けた。


「あった、これだ!」

 引き出しの中から、ミニマムサイズの女神像を取り出した。

 これは『携帯女神像』らしい。こんなところにも女神像があるなって、不思議に思ってたんだよな。


「わぁ、ちっちゃい女神像だ♪」

 タイガが嬉しそうに飛び跳ねる。


 そして、キャンプに必要な道具を持って、再び坑道の地底湖へ。

 携帯女神像を地底湖の側に置くと、像から淡い光が放たれて魔物が近くに寄り付かなくなった。

 

「やっぱりか! あの村は女神像に守られていたんだな」

「そーだったのか! 女神様が、ボクたちを守ってくれていたのかぁ」

 

 それに、携帯女神像の使い方も把握した。

 持ち歩いても効果はなくて、地面に置くとそれを中心とした数メートルの範囲が守られるって感じだ。


 俺たちは早速火を起こしたり、魚を捕まえたり、鍋の準備をしたりとテキパキとキャンプの準備を進めた。

 そして、地底湖に月の光が差し込む頃――


 俺とタイガは幻想的に輝く地底湖を眺めながら、焼き魚とスープを堪能していた。

「綺麗なところで食べると、美味いものがもっと美味くなるね!」

 タイガはそう言ってガツガツと魚にかぶりついていた。


「あぁ、本当にな……」


 ――もしかして、この世界には他にもこんなに綺麗な、秘境と呼べるところがあるのか……?

 

 そんなことが俺の脳内に思い浮かぶ。


 ――その時だった。


『……んさま。……れん様。早川蓮様』

「うわっ、なんだ!? 誰だ!?」

「なんだ、なんだ?」


 突然聞こえた女性の声に、俺もタイガもキョロキョロと辺りを見回す。

 その声は、女神像から聞こえているような気がした。


『あなたをそちらへ転送した女神です。特例として、この携帯女神像を通じてあなたへ語り掛けています』

 

「あっ、あの時の……!」

「おぉ、本物の女神様だぁ♪」


『この度は、勇者召喚に巻き込んでしまい、本当に申し訳ありませんでした。前の世界では一旦は死亡処理をさせていただきました。ですが、今回はこちらのミスということで、もう一度日本に転生してもよい、という判断になりました』

 

「……マジ?」


『もちろんこの世界に残るか、日本に生まれ直すかは早川蓮様の自由です。いかがなさいますか?』

 

 俺は、目を閉じて今までの生活を振り返った。

 タイガに起こされて、生き残るために必死に魚を焼いて、錬金術をやってみて――


 日本ではキャンプ動画を見たり、ゲームも色々やってきた。

 サバイバルゲームが一番好きだったけど、RPGも大好きだ。

 

 その経験もあって、魔力だとか錬金術だとかって単語がスッと頭の中に入ってきた。

 それに、キャンプ動画を見ていなきゃ、魚を焼くことだってできなかったと思う。


 空っぽだと思っていた俺の28年間は、この世界では決して無駄ではなかった。


 ――俺は、この世界で錬金術師として生きていきたい。


 そして、タイガと一緒に世界中の秘境を巡って――


 最後に思い浮かんだのは、俺の家の、冷たく光る蛍光灯だった。

 さようなら、今までの俺。

 

 ゆっくりと目を開け、静かにこう言った。

「女神さん、俺は――この世界で生きていくよ」


 俺のその言葉に、女神の微笑む声が聞こえてきた。

『ふふっ。早川蓮様、転送前よりも、生き生きとした表情をされていますね。承知致しました。それでは、女神の加護があらんことを――』

 

 女神像からの声は、静かに消えていった。


「レ、レン! この世界に、残ってくれたのか……!?」

 タイガの表情が、パーッと明るくなっていく。

 もしかして、俺があっちの世界に帰っちゃうかもって心配してくれていたのか?


「おうよ。それでな、タイガ。一つ提案があるんだ」

「なぁに?」


「俺と一緒にここを出て、世界中のこういう綺麗な場所……秘境を探し出して、一緒にキャンプしよう」

「わぁ、面白そう……! うん、ボク、レンと一緒に行きたい!」

 

「よし、決まりだ!」

 

 そうと決まれば、本格的に廃村を出る準備をしないといけないな。

 それに、今はまだ調合の錬金術しかできないから、成形くらいはできるようになっておきたいかも。


 魔王を倒したり、国を救ったり――俺にはそんな大層な使命はない。

 これは、俺とタイガが最高の景色で、最高の飯を食うために、世界中を旅する物語だ――

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