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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第三章 エルフの里の依頼

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第36話 エルフの魔道士

 ――翌日。

 

 シエラとタイガと共に、冒険者ギルドを訪れた。

 ギルドの建物内は、こんな会話で持ちきりだった。


「あのずっと出されてた緊急依頼、ついに達成されたんだって」

「昨日だろ? 知ってる、知ってる。たった一人の冒険者が解決したって話だぞ」

「えっ、私は、薬師と魔道士の2人組だって聞いたけど――」

「なんかデカい前衛もいるって――」


「ほっほっほ。お主が名乗らんせいで、皆、言いたい放題じゃな」

 シエラが呑気に笑う。

 

 俺は、小さくため息をついた。

「いいよ。好きなように言わせておこう。別に、悪口じゃないっぽいし。さて、今日は思いっきり依頼をするぞ。どれにするかな――」


 壁一面の依頼書を眺める。

 タイガが「あっ」と声を上げた。

「レン、見てみて! あそこ、グレン豚って書いてある!」

「ホントだ。『害獣グレン豚の討伐依頼』って――昨日食ったあの豚、害獣だったのか……」

 

「うむ……。大きな牙が生えておって、気性が荒く、一直線に突進してくるのじゃ。農園や果樹園なんかが、被害を受けておる。恐らく、討伐依頼は一件ではないはずじゃ。冒険者にかなり助けてもらっておると聞く」


 シエラにそう教えてもらって、再度壁の依頼書を見渡すと、確かにグレン豚の討伐依頼がいくつもあった。

 いや、まるでイノシシだな……。味は豚や牛っぽかったけどな。

 

 どれも、雷や炎の魔法は禁止。毒の武器の使用も禁止されていた。

 ――食うからだろ、これ。


「……なら、グレン豚の討伐依頼、やるか」

 俺は、ブドウ園からの討伐依頼を壁から外した。

 報酬のフェアリーブドウに目がくらんだのは、内緒だ。


 昨日、冒険者ギルドには酒場の後に立ち寄った。

 そこで緊急依頼の報告を済ませて、シエラの冒険者登録もしたんだ。


 そのため、シエラも見習いの冒険者。

 グレン豚は魔物ではないため、見習いでも依頼を受けることができる。


 俺とシエラは臨時でパーティを組み、『害獣グレン豚の討伐依頼』を受注した。


 ◇


 ――フェアリー果樹園にて。


 ブドウ園を囲う柵が壊され、一番端のブドウの木幹が大きくえぐれていた。

 いくつかのブドウの房が落ちてしまい、実はつぶれてしまっていた。


「シエラちゃんが依頼を受けてくれたのか! これは心強い」

 依頼人のおじさんが、嬉しそうに出迎えてくれた。


「うむ。冒険者デビューの初依頼なのじゃ♪」

 シエラはやる気満々だ。


 一方で俺とタイガは、その被害の悲惨さに圧倒されていた。

「うわぁ、ブドウが、もったいない……。ジャムにしたら、とっても美味しいのに……」

 タイガは瞳をうるうるとさせながら残念そうに言った。


「おやおや、可愛い使い魔君だね。フェアリーブドウは好きかい?」

「うん、ボク、フェアリーブドウジャム好き!」

 タイガはニコッと笑って答えた。

 

 今朝のロールパンに昨日買ったジャムをつけてやったら、めちゃくちゃ美味そうに食ってたんだよな。

 おじさんは、満足そうにうんうんとうなずく。


「……グレン豚って、ブドウを食うために果樹園を襲うんじゃないんですね……」

 俺は、地面でつぶれているブドウの実を見てそう尋ねる。

 だって、食うためだったら、つぶさないで食ってくよな……。


「そうなんだよ。せめて、食べて、美味しかったって感想を言っていけって、感じだろう?」

 そう言ってプンプンと怒るおじさんに、俺は「あはは……」と苦笑した。


 おじさんに、グレン豚のすみかを案内してもらう。

 すると、木々にドンドンと突進しまくっているグレン豚の群れを見つけた。

 全部で10頭くらいだろうか。


 ブヒブヒと怒りながら、あっちこっちの木を傷つけている。

 こりゃ、イノシシもびっくりの暴れっぷりだな……。


「あいつらだよ! あいつらが最近うちの果樹園まで突進範囲を広げているやつらだ」

「了解じゃ。レン、タイガよ。ここはワシに任せてくれ」

 シエラはそう言って一歩前に出ると、魔法杖を構えた。


「おう。頼んだ!」

「シエラ、頑張って!」


 どこからともなく風が吹き、シエラの身体がふわっと浮き上がる。

 思わず「おぉ……」と声が漏れた。

 そよ風の魔法を使った時とは、明らかに雰囲気が違う。


 シエラは杖の前に魔法陣を描き、こう唱えた。

「――アイスレイン……!」

 

 ヒヤッと身体に刺さるかのような冷たい冷気が、辺り一帯を覆う。

 次の瞬間――


 ――グレン豚の群れに、大量の氷塊が降り注いだのである。


 ドンッ、ガンッと、鈍い音が聞こえてくる。


「わわわ、マジか……」

 次々に倒れているグレン豚。

 ものの数秒で、討伐を終えてしまった。


 これが、エルフの魔道士か……!


「完了じゃぁ。冷やしておいたゆえ、鮮度も抜群じゃて」

 シエラは、そう言って無邪気に微笑んだ。

 

 その後、俺はその辺に転がっていた木片で、即席で荷車を錬金。

 大量のグレン豚を積んで、果樹園へと帰るのであった。


 ◇


 他にも色んな依頼をこなし、あっという間に日が暮れる。

 初めに依頼を受けていた果樹園の晩飯に招待されていたので、再び果樹園に向かうと――


 ――炭の良い匂いが漂ってきた。


「あーっ、バーベキューしてる!」

 焚き火の上でじっくり焼かれている肉塊が見えて、タイガが嬉しそうに駆けていった。


 その日、報酬のフェアリーブドウをもらうだけではなく、討伐したグレン豚のBBQまでごちそうになったのであった。

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