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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第二章 冒険者ギルド

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第25話 山頂の夜明け

 諸々の後片付けを済ませ、焚き火を消す。

 魚介コンソメスープはあえてたくさん作ったから、明日の朝にも食べよう。

 

 俺の懐中時計には目覚まし機能が付いていたので、いつもよりもかなり早い時間にセットする。


 これで、日の出も逃さないだろう。

 タイガと一緒に寝袋に潜り、就寝。


 今日もたくさん動いたからな、あっという間に寝てしまった。


 ◇


 ――チリリリリ……!


「うわっ、もう朝!?」

「ん……」

 懐中時計とタイガの大声のダブルパンチで、俺も目を覚ます。


 タイガが器用に懐中時計を止めてくれる。

 これが、俺たちの朝のいつもの光景だ。


 でも、今日はいつもとは違う。

「あれ、まだ真っ暗だよ?」

 

 テントの外に出ても、寝る前と風景が変わっていない。

 タイガは不思議そうに歩き回り、そのままサークルの外へと出ていった。


「レン、大変! 雲の海なくなってる!」

 そんなタイガの声が聞こえてきて、俺も「マジ!?」とサークルの外へと飛び出る。


 外は寒く、思わず身震いする。


「マジだ……」

 あんなにあった雲海はどこかに去っており、視界が綺麗に晴れていた。


 暗いけど、星空に照らされた風景も趣があった。

 俺たちが登ってきた岩山を一望できて、その奥には平原、海と広がっている。


 雲海の日の出も良いかなと思ったけど、橙色の雲海は夕暮れの時に見たもんな。


「タイガ、ここで太陽が昇るのを待とう」

「うん!」


 俺とタイガはテントの中にあった寝袋を引っ張り出し、サークルの外でくるまった。

 

 だんだんと空が明るくなる。

「もうそろそろかも」

「お日様、楽しみ~」


 水平線の向こう側が赤く輝き、太陽が顔を出す。

 空色と赤が溶け合うグラデーションが、水平線を境に広がっていく。


「おぉぉ……」

「お日様出てきた……!」


 ――これだ。


 この、なんとも言えないエモい感じ。


 俺はこれが――見たかったんだ。


 思わず吐いた息が、グラデーションの中に白く溶けていった。


 ◇


 俺とタイガは口をぽかーんと開けながら日の出の様子を見守った。

 タイガが途中でハッと我に返る。


「あーっ! お日様におはよう言おうと思ってたのに、忘れてた! お日様~、おはよ~!」

 タイガの元気な声が早朝の空に響き渡る。

「ははは。見とれちゃってたな」

 

 念願の山頂日の出を満喫した俺たちは、朝のキャンプの準備をする。

 朝食は、ヴェルーナの屋台で買っておいたロールパンと、昨夜の残りの魚介コンソメスープ。


 そして、七輪の上でフライパンを温めて、溶いた卵を流し入れる。

 ジュワッと音を立てて広がっていく卵を、素早くかきまぜた。

 あっという間にスクランブルエッグの完成だ。

 

 今日はそこまで風もなかったので、サークルの外で食事。

 なんて優雅な朝なんだろう。


 食後にはコーヒーを。

 成形錬金術で作った、金属のフィルターでハンドドリップ。

 すぐにコーヒーのいい香りが鼻をくすぐった。


 タイガは苦くて飲めなかったので、リンゴをすりおろして、リンゴ100%ジュースだ。


「あー、最高の朝だったなぁ……!」

 片づけを済ませて、朝日に向かってうーっと伸びをした。

「うん、美味しいし、楽しいし、綺麗だった!」

 タイガが山頂を駆け回る。


 キャンプは、言い換えれば野宿だ。

 だというのに――まるで高級ホテルでの朝食のような、そんな贅沢さを感じた。


 ◇


 岩壁のサークルは成形錬金術で元に戻しておいた。

 大騒ぎになっても困るしな。


 そして、山頂に別れを告げる。

「また来るからな――」

 

 そんな俺の優雅な時間は、終わりを告げた――

 虎の姿になったタイガに乗って、一気に下山する。


「うわぁぁぁっ!」

「あはは、レン、楽しい!?」


 タイガは容赦なく色んな高さからジャンプをして、かろやかに着地する。

 

「こ、怖い……! けど、楽しい! けど、こわ――うわぁぁぁっ!」


 リアル絶叫アトラクションだ……!

 

「ははは、レン、叫びすぎ~」

「わぁあぁ! タイガ様~、もう勘弁して~!」


 これのおかげで下山はあっという間。

 しかし、俺はなぜかヘトヘトだった。


「うへぇ、死ぬかと思った……」

「楽しかったね。またやろうね♪」

「おま……ほんっと元気だな~、タイガは」


 俺たちは顔を見合わせて笑うと、山道を抜けて街道へと入った。

 子猫に戻ったタイガと並んでのんびり歩く。


 向こうの方に、見渡す限りの大森林が広がっている。

「あれがグレンティナ大森林だな」

「あの中にキルウェンって町があるんだよね!」


「そうそう。あと、エルフの里があるらしいな」

「エルフって何?」


「エルフって言ったら――」


 俺の知っているエルフの想像は耳が長く尖がってる種族のことだけど、合っているんだろうか。


「……なんだろうな。あんまり外に出ないみたいだから、そもそも会えないかもな」

「そっか~。ボク、会ってみたかったな~」

「な、俺も」


 そんなことを話しながら大森林への入り口に差し掛かる。

 

 すると――


 大森林の入り口に、女性がうつぶせで倒れていた。


「えっ! 大丈夫ですか!?」

「うわわ、大丈夫!?」


 しゃがみ込んで様子をうかがう。

 後ろ姿は10代くらいの女性に見えるが――


 ――耳が、長く尖がっていた。


 あれ、エルフいきなり会えたかも!?


 もう一度「大丈夫ですか? しっかりしてください!」と話しかける。

 すると、何やらもごもご言っている反応があったので、ちょっとだけ耳を近づける。


 後ろ姿からは想像できないババ臭い口調が聞こえてきた。

「腹が……」


「腹? 腹が痛いんですか?」


「腹が……


 減ったのじゃ……」



 


 

 

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