第23話 俺にしかできない錬金キャンプ場
「すげぇ……」
見渡す限りの雲海。
夕日に染まって見事な橙色だ。
山頂の周りを渦巻くように流れていく。
まるで、橙色の海の中に浮かんでいる小島のようだった。
しかし、それと同時に俺たちはある壁にぶち当たった。
「風……つっよ!」
ビュウビュウと音を立てて風が吹き荒れる。
そうか、こんなところで野宿するのが大変だから、みんなここには来ないのか……!
「これ、焚き火できる……?」
タイガが全身の毛をなびかせながら言う。
「焚き火どころか……このままじゃ何も置けないな……」
「どうしよう、ちょっと下に降りてキャンプする?」
「うーん……どうすっかなぁ~」
俺はてっきり、山頂からの風景を楽しみながらのどかにキャンプできるもんだと思っていた。
雲海が広がっていたのは、まだ綺麗だから良いんだ。
むしろ、こっちの方が秘境感も出ている。
問題は――風だ。
手で顔をかばいながら、風の吹き荒れる山頂を見渡した。
決して真っ平らな訳ではなく、少し盛り上がった岩肌なんかも見える。
「そうか……」
その岩肌を見つめていて、俺はあることを思い出した。
「レン、なんかいい方法、思いついたの?」
「タイガ、俺――無人島の岩山の穴を、錬金術で塞いだよな……」
「え? うん。トンネルだったのが、普通の壁になったよね」
「あんなことができたんだから、風よけくらい、作れるよな」
「あ……そっか!」
――そう、俺は錬金術師だ。
錬金術師の腕輪をつけて、盛り上がった岩肌に手をかざす。
魔力を送り込むと、岩肌は高く伸びていき、壁を作っていく。
テントもすっぽり収まるくらいの面積がいいよな。
高く伸びてきた岩壁を、今度は円形に整えていく。
出入りができて、そこから雲海も眺められるように、少しだけ隙間を作る。
「よし、こんなもんか!」
出来上がった岩壁のサークルの中へ入ってみると、あんなに吹き荒れていた風が嘘のように収まった。
作った足場が崩れ落ちた反省も活かして、岩壁は十分厚みも持たせた。
その岩壁を風が叩く音が響き渡っており、外の過酷さがうかがえる。
「わぁ、レン、すごいよ! これなら焚き火もできるし、テントも張れる!」
タイガは嬉しそうにサークルの中を走り回っていた。
「だろ? 念のため焚き火と七輪は入り口から離れた奥でやろう。んじゃ、タイガ、早速準備だ」
「うん! ボク、道具出してくね」
「頼んだ」
俺がリュックを下ろすと、タイガは待ってましたとばかりに中に顔を突っ込んで、道具を次々に引っ張り出していく。
俺がそれを設置していく流れが、いつの間にか自然と出来上がっていた。
テントを広げて、中に寝袋を放り込む。
テントのすぐ外には、携帯女神像を置く。
少し離れたところにテーブルと椅子を設置して、その隣に収納棚を置く。
テーブルの下には水のタルを。
焚き火と七輪は奥へ。
鍋をかけるスタンドも設置。
辺りもすっかり暗くなった頃――
「できた! 俺にしかできないキャンプ場だ!」
「うわーい、やったー♪」
「んじゃ、次は――晩飯の準備だ」
「ボク、途中にあった川で魚を捕ってくるよ!」
虎になったタイガはそう言って、桶を咥えて下山していった。
よし、俺はその間に食材の下ごしらえだ。




