第22話 山頂を目指して
それから数日、俺たちは様々な依頼をこなした。
定番の採取から、魔物討伐。
腰の悪いおばあさんの、墓参りの付き添い……本当に色々やった。
浜の横穴で料理の修業もたくさんした。
かなり貯金も貯まったので、銀行口座を開設。
成形錬金術で、冒険者証や銀行証、通貨をまとめて入れられる『財布』も作った。
今まで金は腰の布袋に入れているだけだったから、ウエストポーチなんかも作ってみた。
更に、以前は高くて買えなかった『素材図鑑』も買うことができた。おまけに『食材図鑑』も。
どこにどんな素材や食材が生えているか。
どこにどんな素材を落とす魔物が生息しているのか。
これが分かるようになったのは大きい。
そして、料理器具も錬金術で作ったり、店で買ったりと片っ端から揃えた。
全部がすっぽりと収まってしまう収縮リュックは最強だ。
「よし、タイガ。ヴェルーナの町、出発するぞ」
「うん、またいつか来ようね」
「だな」
宿屋を出ると、そこには見慣れた顔ぶれが集まっていた。
「マイクさん、ボブさん、ビリーさん!」
「おっ、来たぜ!」
「久しぶりだね~、レン、タイガ」
「わーい、みんな久しぶり~♪」
タイガも嬉しそうだ。
「昨日会った時、『明日出発します』つってただろ? だから、こいつらにも声をかけたんだ」
ビリーが言う。
彼とは港でちょくちょく会っていたので、そろそろ次の町へ向かうことを話していたんだ。
「そんな、すみません。俺たちのために、わざわざ……」
マイクとボブに近況報告をしつつ、くだらない話で盛り上がる。
そして――
「では、そろそろ行きますね」
「おうよ、気を付けていってこい!」
「行ってらっしゃい~」
「またこっち来たら港ぶらつけよ。多分俺いるから!」
「はい、必ず! 皆さんもお元気で~」
「ばいば~い!」
3人のおじさんに背を向けて、町の北門を目指す。
すると、北門の前には、更に別の3人も待っていた――
「レンさーん!」
「まだ出発してなかったんだな」
「間に合って良かったよ♪」
「アイシャさん、トムさん、コリンさん!」
「わーい、アイシャ隊だ~!」
「今日出発って、言ってたものね」
「こんなリュック一つで山を越えるだか? 大丈夫だか?」
「本当に馬車を使わずに行くの? なんなら、僕今から馬車、手配してあげよっか?」
「あはは、ご心配ありがとうございます。多分、大丈夫だと思います……」
ここでもまた、くだらない会話で盛り上がる。
そして――
彼女らとも別れを告げて、北門から町の外へと出る。
ヴェルーナの町を振り返ると、アイシャたちがまだ手を振ってくれていた。
次々に出発していく馬車を見送りながら、街道を歩く。
街道に出ても、しばらくは露店が広がっていて賑やかだった。
馬車のガタゴトという音に混じって、店主の呼び込みの声が聞こえてくる。
「ヴェルーナの町、めちゃくちゃ良い町だったよな……」
「うん。お料理は美味しいし、宿のお風呂は気持ちいいし、優しい人がたくさんだった!」
「キルウェンは大森林の中にあるんだよな」
「どんなところかな? 楽しみだな♪」
「おう。まずは、山頂を目指すぞ!」
「山頂キャンプだ~!」
◇
街道をのんびり歩いていると、だんだんと風景がのどかになっていく。
向こうには岩山の影が見えてくる。
道が岩に変わってきたところで、『レガメ山道』の立て札が。
「ここが、目的のレガメ山か」
「レン。疲れたら僕の背中に乗せてあげるからね」
「ありがとな。山頂の分かれ道までは魔物も出ないらしいし、そこまでは頑張って歩こうかな」
「分かった!」
何台もの馬車に追い抜かれながら、緩やかな坂を登っていく。
だんだんと標高が高くなってくるにつれて、俺のワクワクも高まっていった。
中腹辺りで『グレンティナ大森林→』『↑レガメ山 山頂』という2つの立て札を見つける。
グレンティナ大森林というのが、キルウェンのある森だ。
俺たちはひとまず山頂だ。
そこからは魔物がポツポツ姿を現したので、タイガに先導をお願いした。
虎になったタイガは、相変わらず、ちょっとじゃれているだけなのに無双状態だ。
途中、携帯女神像を置いて、昼休憩。
ヴェルーナの屋台で買ったホットサンドとコーヒーをいただく。
タイガはピーチジュースだ。
疲れたらタイガの背中に乗せてもらおうとも思っていたけど、なんとか自力で登れていた。
ずっとインドア派だったけど、ここんところ動いてばかりだったもんな。
ちょっとは体力がついたのかも。
山頂に近づくと風と共に少し雲が出てきて、視界が悪くなってくる。
日も暮れる頃――
『山頂』の立て札のある、開けた場所へと到着した。
そこには、見渡す限りの橙色の雲海が広がっていた。




