第21話 俺の進む道
「あぁぁ~、ポルタ! わたくしの可愛い可愛いポルタ! よく無事に戻ったザマス……!」
「わんっ、わんっ♪」
ポルタは尻尾をブンブンと振りながら、マダムフィレーネに抱き締められていた。
マダムは何度もありがとうと感謝を伝えながら、依頼書にサインをしてくれていた。
無事報酬も受け取ったところで、マダムの豪邸を後にする。
「まさかわんちゃんだったとは、思ってもいなかったわ……」
「でも、見つかって良かっただな~」
そんな会話で盛り上がりつつ、冒険者ギルドへと戻る。
ギルドで依頼達成の報告をすると、アイシャの予想通り、俺の冒険者ランクが『初級冒険者』へとランクアップしていた。
これで討伐依頼なんかも受けられるから、稼げる手段も増えたな。
報酬は仲良く山分け。初めは俺とタイガが見つけたからと言って、俺たちの取り分を増やしてくれようとしていたけれど、それは俺が断固拒否。みんなで協力して得た報酬だしな。
緊急依頼も終わって臨時パーティが解散になると、アイシャはこんな嬉しいことを言ってくれた。
「ねぇ、レンさん。良かったら、このまま私たちと固定パーティを組まない?」
「えっ、俺、錬金術師っていう、無名の職業なのに、誘ってくれるんですね……」
登録時の説明でも不利になるかもって言われていた、全く浸透していない職業。
それでも誘ってもらえるなんて、素直に嬉しかった。
「僕見てたよ。なんか魔法みたいに光って、足場を作ってた。すごい職業だよ♪」
コリンが言う。やっぱり、あれ見られてたんだな……。
すごく嬉しい。だけど、俺にはどうしても譲ることのできないところがあった。
「オイラたちはヴェルーナに留まって活動するパーティだから、もし条件が合えば、なんだけどな……」
そう。俺が冒険者ギルドに入ったのは、旅をしながら働けるギルドだったからだ。
誘ってもらえたのは本当に嬉しいけど、俺とタイガには、自分たちで決めた目的がある。
「本当に嬉しいんですけど、俺とタイガは――あちこち旅をしているところなんです。だから、パーティには入れません。ごめんなさい……」
俺は深く頭を下げた。
アイシャたちが慌てたようにフォローをしてくれる。
「あぁ、良いの、良いの! なんかそんな気はしてたの。ダメ元だったから、気にしないで」
「ちゃんとした目標があって、偉いだよ」
「錬金術っていうの、もうちょっと見たかったけど……。レンとタイガは、自分たちのしたいことを楽しんでよね♪」
「皆さん、ありがとうございます……!」
こうして、俺とタイガはアイシャ隊に別れを告げた。
◇
アイシャたちは、このギルド支部に隣接している『冒険者の酒場』という施設で知り合ったらしい。
パーティを組むの、すげぇ楽しかった。
そんなに急いでパーティを組みたいとかはないけれど、冒険者の酒場がどんなところか覗いてみるのもいいな。
俺たちはアイシャ隊と別れたその足で、ギルドに隣接する冒険者の酒場へと足を踏み入れた。
「おぉ、ここも賑わってるな……」
「酒場みたいに料理も食べられるんだね!」
大きい受付の奥には、普通の酒場が広がっていた。
「そうなんです、ちょうど前衛を探していて――」
「10日だけなんですけど――」
「魔法使いがいないと受けられない依頼があって――」
そんな会話が聞こえてくる。
なんか……結婚相談所みたいだな!?
って、俺は結婚相談所には行ったことがないんだけど。
「こんにちは。パーティの仲間をお探しですか?」
入り口で突っ立ってるもんだから、受付嬢に話しかけられてしまう。
「あ、えっと、どんな募集があるかなと思いまして……」
「募集登録者の確認ですね。現在登録されているのは、こちらの方々になります」
受付嬢は、紙の束を渡してくれた。
なるほど、こうやって自分を登録して、マッチング相手を探すのか――って、やっぱ結婚相談所じゃねぇか……。
前衛の剣士で、活動範囲はヴェルーナ全域。
求めるパーティメンバーは後衛の魔道士……か。
どうやら、どうしてもやりたい依頼があるらしい。
こっちは後衛の弓使いで、活動範囲は聞いたこともない町まで。
俺の行きたいキルウェンでもないし、この人が求めているのは前衛だ。
そうか、自由きままに旅なんて条件はないのか。
町の外に出るために目的地までパーティを組むとか、ある依頼をこなすために組むってのが多いみたいだな。
「ご希望の条件の方は見つかりましたか?」
「あ、いえ……」
「それでしたら、ご自身を登録されていかれますか?」
「いえいえ、ホントにちょっと見たかっただけなので、大丈夫です」
「そうでしたか。我々はこのように条件の合う方とパーティを組むお手伝いをさせていただいておりますので、また必要になりましたら、いつでもお待ちしておりますね」
「はい、ありがとうございました」
ペコペコとお辞儀をして、酒場を出ようとする。
すれ違いで入ってきた男たちから、こんな会話が聞こえてきた。
「できれば『エルフ』の魔道士がいるといいけどな~」
「エルフの魔法はケタ違いだもんな」
「隣町……何て名前だっけ」
「キルウェンだろ? あの町のある森、エルフの里があるんだよな」
「えっ、じゃあ、キルウェンの酒場行った方がよくね?」
「あそこのエルフは森からは出ないって噂だぞ。この町までは来てくれねぇよ」
ふぅん……この世界には、エルフもいるのか。
「なぁ、なぁ、レン。なんで仲間、探さなかったんだよ?」
タイガが俺の肩から、俺の頬をちょんちょんと突いてくる。
「ん? あのな、タイガ。こういうのは、出会い頭にドーンッてぶつかって『すみません。大丈夫でしたか』みたいな出会いが良いんだよ」
「……何それ」
「……すまん。忘れてくれ」
俺たちは、そのままヴェルーナの町の人混みに紛れていった。




