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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第二章 冒険者ギルド

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第20話 真っ白ふわふわな天使

 水辺にずらりと並ぶ大豪邸に、俺たちは思わず「うわぁ……」と声を漏らす。

 町に並ぶ普通の家だってすげぇワクワクしたのに、ここはまるでリゾート地だ。


「依頼人のマダム、フィレーネさんのお宅は、この辺りのはずだけど――」

 アイシャにそう言われて、辺りを見渡す。


 すると、豪邸の門の前で、落ち着きなく周囲を見回しているマダムを見つけた。

 ふくよかで、綺麗に化粧をしている。

「あの方じゃないでしょうか……?」


 俺がそう言うと、アイシャは「本当だわ、ありがとう!」と言って、マダムのもとへと駆けていった。

 俺たちも後を追う。


「すみません。冒険者ギルドより派遣された冒険者です。緊急の依頼をされたフィレーネ様でしょうか?」

 そのアイシャの問いに、マダムは大きくうなずいた。


「そうザマス。わたくしが緊急依頼を出したフィレーネ、ザマス。引き受けてくださり、感謝するザマス」

 持っているふわふわの扇子が小さく震えている。やっぱり、お子さんが心配だよな……。


 アイシャが問う。

「お子様が迷子になられたとのことで……良かったら、お子様の特徴を教えていただきますか?」


「そうザマスね。わたくしの可愛い可愛い坊やの名前は、『ポルタ』というザマス。見た目の特徴は、真っ白でお空の雲のようにふわふわで――天使のように可愛いザマス」

 

「……!?」

 俺たちは、目が点になった。


 真っ白でふわふわ……!?

 そういえば、町で見かけた犬耳の人には、ふわふわの尻尾がついていたよな……。


 マダムフィレーネのお子さんは、あの動物の耳の生えた種族なのか……?

 アイシャも同じことを考えていたのか、更にこう尋ねた。


「お子様は、『獣人族』なのでしょうか……?」

 そうか、動物の耳の種族は獣人族か。見た目そのままの種族名で、覚えやすくて助かるな。


 ――すると、マダムは突然ヒステリックな声を上げる。


「わたくしの可愛いポルタをそんな風に言わないでザマス!」

「ご、ごめんなさい……!」

 咄嗟に謝るアイシャ。なんかよく分からんが地雷を踏んだっぽい……。


「はっ、ごめんなさいね。わたくしったら、ポルタがいないあまりに……。とにかく、ポルタは名前を呼べばちゃんと返事をするザマス。ポルターって呼びながら捜してほしいザマス……」

 

 マダムはそう言ってシュンと落ち込んでしまった。

 そうか、誰だって子どもがいなくなったら不安だよな。


「いえ、こちらこそ不躾(ぶしつけ)な質問を失礼しました。分かりました。ひとまず町中を捜してみますので、フィレーネさんはここで待機をしていてください。もしかしたらお子様も帰ってくるかもしれませんので」

「分かったザマス。お願いするザマス……」


 俺たちは、マダムの大事なお子さんを捜すため、町の中央付近へと向かった。

 

 ◇


「多分、ポルタ君は獣人族で良いわよね……」

 アイシャが気まずそうに言う。

「そうですね、真っ白な尻尾の獣人族の男の子を捜してみますか?」

 そう提案すると、みんなはうんとうなずいた。


 アイシャの指示で、アイシャとトムと俺が町の三方向へと散らばる。

 タイガは散らばるとタイガまで迷子になりそうだったので、いつものように俺の肩にいてもらっている。


 残ったコリンは、高い建物をひょいひょいっと上まで登り、町全体を見渡していた。

 あんな軽々と登ってしまうなんて……器用なものだ。


 俺たちがコリンを見ていると、彼は時折指を指してくれる。

 白い尻尾の獣人族の子どもを見つけた合図だ。

 

 その方角にいたメンバーが手を挙げて合図を送り、その周辺を捜すというスタイルだ。

 

 コリンを見上げていると、俺の近くを指差す。

 俺とタイガは手を挙げて合図を送り、指を指された辺りへと向かった。


「ポルタ君~」

「ポルタ~」

 呼んだら返事をするって言ってたもんな。


 指示された場所へ到着すると、すぐ近くに真っ白なウサギの耳を付けて、ぽんぽんのような尻尾のある子どもを発見した。

 あれ、ポルタかも……!?


「ポル――」

 そう呼びかけた瞬間、その子どもは女の子の声で「ママー、あれ買ってー!」と叫んだ。


「もう、シェリン。昨日違う色のやつを買ったばかりでしょう?」

 そんな母親の声が聞こえてくる。


「違ったかー……」

「違ったね……」


 俺とタイガがコリンを見上げて大きくバツ印を作る。

 コリンは残念そうにうつむきながら、了解の丸印で返してくれた。


 ◇


 そんなことをしているうちに、俺とタイガはいつの間にかヴェルーナ港の方まで来ていた。

「ポルタ君~」

「ポルタ~」


 桟橋の方まで来ると、タイガが鼻をクンクンと動かした。

「あれ、お魚とかの匂いに混じって、獣っぽい匂いがする……。いつもは港はお魚の匂いばっかりなのに」

 タイガは俺の肩から飛び降りると、クンクンしながら港の外れへと向かった。


「ちょ、タイガ、待てって。海に落ちるなよ!」

 俺も慌てて追いかける。


「ここだ、ここ!」

 タイガが石造りの桟橋から海を覗き込む。

 俺も同じように覗きこんでみると――


 ――真っ白で小さく、そしてふわふわなポメラニアンのような犬が、桟橋のくぼみに入り込んでしまっていた。


 もしかして……!?


「ポルタ?」

 そう呼びかけてみる。

 その犬は尻尾をブンブン振りながら、「わんっ♪」と大きく返事をした。

 

 念のため鑑定眼で確認してみると、緑色で『ポルタ』の文字が――


 間違いない。

 マダムフィレーネの捜していたのは――愛犬ポルタだ!


「ポルタお前……どうやってそんなとこ入ったんだよ……」

 俺がポルタと言ったからか、ポルタはまたしても「わんっ♪」と返事をした。


 どうやって救出する……?

 海に飛び込む……?

 いや、その後ポルタを抱えてこの桟橋をよじ登れる自信がない。


 そうか、俺は――錬金術師だ。

 腰に付けていた布袋から『錬金術師の腕輪』を取り出し、装備する。


 そして、石の桟橋に手を掲げて魔力を送り込んだ。


 桟橋が少しずつ引き伸びていき、ポルタのところまで階段状の足場ができた。

 よし、これなら――


「ポルタ、おいで!」

「わんっ♪」

 ポルタは尻尾を振りながら嬉しそうに駆け上がってくる。

 しかし、数段登ると、なぜか満足したように止まってしまった。


 俺は仕方なく、自分で作った足場を伝ってポルタのところまで降りていく。

 ポルタは俺が近付いても逃げることなく、大人しく抱えられていた。


 その時――


「うわっ!」

 足場が薄かったためか、バキッと崩れ落ちる。

 俺は間一髪のところで、桟橋に手をかけて踏みとどまっていた。


 ポルタはポルタで俺の肩や頭を伝って桟橋の上に行き、悠々とくつろいでいる。


「レン! 大丈夫か!? あがれそう?」

 タイガが心配そうに覗き込んでくる。


「……ヤバい、無理そう……タイガ、助けを……」

「わ、分かった……! あっ、トムー! トームー!」

 

 タイガは近くにいたらしいトムに声をかけ、すぐに連れてきてくれた。

「レンさん!? 大変なんだな! すぐにオラが引き上げるんだな!」

 

 トムは俺を軽々と引き上げてくれて、俺も無事桟橋に上がることができた。


「助かりました、ありがとうございます、トムさん……。タイガもありがとな」

「間に合って良かったんだな。コリンが必死に港の方に行けって指示を出してくるから、何事かと思っただよ。それにしても、ポルタはわんちゃんだっただな~」


 そうか、コリンが俺のピンチに気付いてトムを向かわせてくれたんだ。

 そして、トムがポルタの可愛さにメロメロになっている間に、成形錬金術で桟橋の形を元に戻しておいた。


「おーい!」

「レンさん? 海に落ちそうになってたらしいけど、大丈夫だった?」

 コリンとアイシャもすぐに合流。

 事情を説明し、みんなでマダムフィレーネのところへと戻るのであった。

 

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