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異世界秘境キャンプ旅~キャンプオタクが失われた錬金術で快適生活。もふもふな守護猫タイガと巡る絶景と飯テロの旅~  作者: るあか
第二章 冒険者ギルド

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第18話 上達していくキャンプ飯

 ヴェルーナ浜の横穴の中は、既に薄暗く、ひんやりと静かだった。

 

 早速、リュックからキャンプ道具を取り出す。

 折り畳み椅子とテーブルを広げ、その上に火をつけたランタンを置く。

 

 更に、取っ手付きの収納棚も取り出し壁際に置く。

 この中には錬金道具や料理道具を入れてあるんだ。


 調合鍋や小ビンを取り出し、テーブルに並べると――

 まるで小さな工房みたいになった。


「どうだ、この秘密基地感……!」

 自分で言ってみて、ゾクゾクしてくる。

 秘密基地は、何歳になってもロマンがあるものだ。

 

「秘密の……きち?」

 首を傾げるタイガ。

「俺たちだけの秘密の場所ってことだ。かっこいいだろ?」


「ボクたちだけの秘密の場所……! うん、カッコいい!」

 嬉しそうに走り回るタイガ。


 リュックから薪を取り出し、慣れた手つきで組み上げる。

 焚き火に火を入れると、パチパチと乾いた音が洞穴の中に優しく響いた。


 廃村とも地底湖とも違う。

 洞穴の中が橙色に染まった。


 なんてやる気の出る雰囲気なのだろう。


「よし、やるか。まずは調合だ」

 俺は布袋の中から、『オリーブの実』を掴めるだけ取り出した。


 タイガがそれを見て「あっ」と声を上げる。

「そのオリーブの実、調合しようと思ったから、あんなにたくさん採ったんだ!」

 

「そういうこと」

 午前中に『オリーブの実の納品依頼』をやったんだが、納品個数よりもかなり多めに採取しておいたんだ。


 念のために『錬金調合書』を確認する。

 よしよし、ちゃんとあるな。


 調合鍋にオリーブの実を一気に投入し、魔力を送り込んだ。


 ――調合は無事成功。大量の『オリーブオイル』が完成した。


「っしゃぁ、油は料理の基本だしな。これでしばらく油には困らないな」

 持っていた空きビンにオリーブオイルを注ぐ。


 さて、いよいよ今日のメインイベントだ。

「いいか、タイガ。山頂のキャンプで美味い飯を食って、日の出を迎える。今日はそのための料理修業だ」

「うん、ボク、食べるのとっても楽しみだ!」


「おうよ、楽しみにしててくれ。えーっと、まず、やることは……」

 まずは必要な道具を設置することに。


 焚き火の上に鍋をかけるスタンドを。

 その側に、焚き火の火を分けた七輪を置いた。


 パスタは焚き火にかけた鍋で茹でて……それから七輪をコンロ代わりにしてフライパンで炒めて……。

 そんな想像を悶々とする。


 マスターは色んな作業を全部同時にやっていた。俺もそれができたらいいんだけど、いきなりできるとはとても思えない。

 一つずつできるようになっていこう。


 レシピを一通り確認する。


「あー……パスタのお湯を切るのにザルがいるのか……」

 イヴンの廃屋から使えそうな鍋やフライパンなんかは持ってきたけど、ザルは持ってきていない。

 いきなりの準備不足に直面。


 成形錬金術で作る?

 まぁ、俺とタイガの分だけだし、今日は手製の菜箸で地道にやるか。


「とりあえず、材料を切るか……」

 

 お手製のまな板をテーブルの上に置き、その上でニンニクをトントンとみじん切りにする。

 唐辛子は輪切りに。

 切れたら木の皿に乗せてちょい放置。


 次に、釣ってきた魚2匹を3枚におろしていく。

 ちなみに今日釣った魚はヴェルーナダイとナンヨウカマス。

 海鮮BBQでもお世話になったし、美味さはもうお墨付き。


「パスタに手を付けだすとテンパりそうだし、まずはこいつを焼こう」

 捌いた魚に塩コショウを振る。

「その魚はいつもの焼き魚?」

 タイガが興味津々に尋ねてくる。タイガ、好きだもんな、焼き魚。


「そう。質素なパスタだけじゃなと思ってさ」

 俺はそう返事をしながら、七輪の網の上に魚を並べた。

 隣でタイガが「わーい♪」と小躍りしている。


 すぐに、煙に交じっていつもの焼き魚の良い匂いがしてくる。

 タイガの鼻も常にヒクヒク状態だ。

 

 ひっくり返して両面を焼く。

 ジュウジュウと良い音を立てながら、脂がしたたり落ちる。

 

 焼けたところで皿に取る。

 タイガが「もう食っていいのかー!?」と身を乗り出して聞いてきたので、一切れだけ先にあげることにした。

 

 はふはふ言いながら焼き魚に食らいつくタイガを横目に、俺の料理は次のステップへ。


 蒸留装置を使って、鍋の中に蒸留水をためる。

 イヴンの錬金道具である蒸留装置は、ビーカーを外して使うこともできる。

 

 そのため、海と鍋を蒸留装置でつなぐだけで、まるで水道から鍋に水を注いでいるみたいに使えるんだ。

 これは便利。


 鍋を焚き火の上に吊るして、沸騰するのを待つ。

 多分、要領を得てきたら、魚を焼きながらお湯を沸かせるんだろうな。


 お湯が沸騰したところで、塩を適当にザッと入れ、パスタをばらばらと入れていく。

 懐中時計で時間を計りながら、次の工程を確認。


 なんだか真剣になってしまって、口数の少ない俺。

 適当に鍋に材料をぶち込んでいた時とは違い、レシピを見ながらやるってなんか緊張するんだよ。


 一方でタイガはもう魚を食い終わり、パスタの鍋を興味津々に覗き込んでいた。

 いつかタイガと楽しく会話をしながら余裕の料理ができるようになりたい。


 パスタがゆで上がると、菜箸でちまちま救出しながら皿に移していく。

 ゆで汁はちょっとだけマグカップにとっておいた。


 よし、後はこれを全部炒めるだけだ……!

 七輪の上にフライパンを乗せて、オリーブオイルを敷く。

 

 ニンニクと唐辛子を入れると、ジュゥゥッ! と良い音がしてきた。

 すぐに香ばしいニンニクの匂いが辺りに広がる。

「おおぉっ、レン、マスターみたいだ! クンクン、良い匂い……」


 確かに、マスターも最初、オリーブオイルでニンニクを炒めていたっけ。

「はははっ、だろ? えっと、ニンニクがきつね色になるまで、だ……」

 

 菜箸でちょっとずつ動かしながら炒めていく。

 ニンニク……きつね色になってきたか?

 いや、もうちょっとか……?


 そんなことを考えている間に、今度はニンニクが黒っぽくなってくる。

「あっ、やべ、やりすぎか……! えっと、ゆで汁入れて……」


 マグカップのゆで汁を急いで流し込み、菜箸でぐるぐるとかき混ぜる。

 そして、皿に取っておいたパスタをガバッと入れる。

 塩コショウも振って、絡めていく。


「おお、なんかできてきた気がする……!」

 

 そのまま全部皿に移すと――人生初の、イチから作った『ペペロンチーノ』が完成した。

 

 見た目はシンプルだ。

 オリーブオイルを絡めたパスタに、唐辛子の赤がポツポツと散らばっているだけ。

 でも、匂いは最強だ。


 一口食べるとニンニクの香りが口いっぱいに広がり、唐辛子のピリッとした刺激が良いアクセントになっていた。

「美味い、美味い! 知ってる味だ。間違いないやつ!」

 

 タイガも、パスタを一本ずつちゅるちゅると食べる。

「わぁ、美味い! ボク、これ好きだよ! でも、レン。焼き魚は冷めちゃったね……」

「だな……。次はもっと要領よくやらないと――あっ、そうだ!」


 俺は焼き魚をフォークでバラバラにほぐすと、その身をペペロンチーノに散らしてみる。

 すると、質素な見た目だったパスタが、なんとなく豪勢になったような気がした。


 魚のほぐし身と一緒にパスタを巻いて、食べてみる。

「んー、これも美味い!」

 ニンニクの風味、焼き魚に合うに決まってるか。


「ほら、タイガもこうやって食べてみろよ」

 俺は、もう一度魚と一緒にパスタを巻くと、「あーん」と待っているタイガの口に放り込む。

 

「もぐもぐ――お魚と一緒に食べると美味い! レン特製のペペロンチーノだ!」


 洞穴中に俺たちの笑い声が響き渡っていた。

 

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