第14話 初めての納品依頼
俺は早速、タイガと共に壁一面の依頼書を眺めた。
依頼書の中には『初級冒険者以上』のように、冒険者のランクを指定しているものも結構ある。
魔物討伐がらみのものは、ほとんどランク指定だ。
無謀な依頼を無理に受けさせないようにしてんだろうな。
順番に依頼書を見ていくと、『納品依頼』ばかりがたくさん並んでいるゾーンにやってきた。
納品依頼は『基本的にギルドに納品する』って、登録係の説明でもあったな。
初心者にはとっつきやすくてちょうどいいかも。
「タイガ、この辺の『納品依頼』ってやつで、なんか気になるやつあるか? あっ、でも俺たちはまだ『見習い』だから、『初級』『中級』『上級』って書いてあるやつはダメだ」
「え~っ、ボクが選んでいいの!? そうだなぁ~、あっ、これがいい!」
タイガが指し示したのは、『ヴェルーナ貝の貝殻 50個納品』という依頼だった。
「おぉ、貝殻集めか……。なるほど、近くの『ヴェルーナ浜』ってところで採れるんだな。よし、んじゃこれにするか」
俺はそう言って、その依頼を壁から外した。
「わーい、やったー! 貝殻集め~♪」
タイガは上機嫌で、俺の頭をポンポンと叩いていた。
ロビーの奥に連なる受付カウンターへ行き、依頼書と冒険者証と冒険者手帳の3点を提出した。
「この依頼を受けたいんですけど……」
「ありがとうございます。拝見しますね……。はい、問題なさそうですね。ではこちら受注処理をさせていただきますね」
受付嬢はそう言って依頼書に『依頼進行中』の印を押した。
「初めての依頼ですね。依頼進行中は冒険者手帳を預かりますので、こちら2点をお持ちになってください」
「分かりました」
受付嬢から依頼書と冒険者証を受け取って、俺とタイガの初依頼がスタートした。
◇
町の地図でヴェルーナ浜を確認すると、町の東側に広がっていることが分かった。
町と浜の境界辺りでは、子どもたちが走り回って遊んでいる。
ここも女神像に守られた範囲内なのか。携帯女神像を置かなくても、安全に採取ができそうだ。
歩くとキュッキュと音がするサラサラな砂。ところどころに貝やサンゴの欠片が落ちている。
ハマグリくらいの大きさの貝殻を鑑定すると、『ヴェルーナ貝の貝殻』と表示された。
拾い上げると、水色にツヤツヤと光って綺麗だった。まるで海みたいだ。
依頼人は『雑貨職人』だったはず。これでお土産用の雑貨でも作るんだろうな。
「タイガ、これがヴェルーナ貝だってさ。同じやつを集めてくれ」
「わぁ~っ、綺麗な貝殻だね♪ 分かった!」
タイガの首に布袋をかけてやると、タイガは見つけた貝殻をせっせと拾って袋の中へと入れていた。
よし、俺もタイガに負けないように頑張ろう。
砂を見つめながら貝殻を黙々と拾う、地味な作業。
けど、こうやって何かを集めるのは、案外夢中になってしまって楽しい。
波の静かな音。
そして、子どもたちの楽しそうな声だけが聞こえていた。
◇
「ふぅ~っ。タイガ、どうだ?」
ある程度拾ったところで、タイガの進捗状況を確認する。
「ボクいっぱい集めたよ!」
そう言うタイガの袋には、貝殻がパンパンに詰まっていた。一方俺の袋は、その半分くらい。
「マジかよ……俺の負けだ」
「わ~い、ボクの勝ち~♪」
タイガは嬉しそうに俺の周りを駆け回っていた。
まぁ、タイガが楽しそうだからいいや。俺も釣られてふふっと笑う。
2人で集めた貝殻の数は62個。よし、必要なのは50個だし、数は十分だ。
余りは換金カウンターで引き取ってもらおう。
帰り際に、向こうの海沿いの岩壁に横穴が開いているのを発見した。
なんかあそこ、良い感じかも。
今日はやめておくにしても、覚えておこう。
◇
ヴェルーナの町の冒険者ギルドに戻って素材を提出する。
依頼書に赤くてでかい『納品完了』の印をドンッと押してもらい、俺の初依頼は無事に完了した。
受付嬢から返してもらった冒険者手帳には、今受けた依頼の内容が書かれていた。
……こうやって記録されていくの、頑張ったのが分かってなんか良いな。
「それではこちらが今回の報酬となります」
「ありがとうございます!」
俺が受け取ったのは500G。貝殻1つ10Gってことだな。
更に、余った12個の貝殻も換金カウンターに引き取ってもらう。
こっちは60Gになった。1つ5Gだ。
確かに、納品依頼の方が単価が高いな……。
その後も、このヴェルーナの町周辺で簡単に集められる納品依頼をいくつかこなした。
いつの間にか日も暮れてきたし、今日の依頼はここまでにしておこう。
そろそろ寝床を確保しないと……。
一瞬、ヴェルーナ浜の横穴が頭をよぎる。
でも、ヴェルーナの町に来てから、実は俺、『宿屋』の文字を目にしていたんだよな。
宿屋なんてみたら、泊まってみたいだろ……!
毎日野宿ってのもなんか違うしな。
そのため俺は、今日泊まる宿屋を探すことにした。




