おもいで
「まーた化粧なんてして、俺には理解できん」
馬車の上、手綱を握りながら、隣に座る魔法使いへ戦士はため息を吐いた。
「まー、筋肉だるまには分からないわよね~かわいそうに」
魔法使いはそんなこと意に返さないといった風で、コンパクトを見ながら口紅を塗る。
「筋肉だるまだと!? そんな褒めても何もでんぞ!!」
「別に褒めてねーから!」
「なぬっ!?」
「……全くこれだから脳みそ筋肉なやつとの会話は疲れる、ね、勇者~」
馬車の荷台に腰をおろしている勇者は、困ったように笑う。
「俺にふるのはやめてよ」と勇者。
「脳みそまで筋肉だと!? お前まさか……これが口説かれてるというやつか」
「だから褒めてねーってば!」
そんな漫才を見て、勇者と僧侶が笑う。
「まったく笑い事じゃないわよ、私のこの美貌はこんな筋肉馬鹿のためにあるんじゃないっつーの!」
「筋肉馬鹿……」
「だから褒めて……ってほんとに落ち込んでんのかよッ! 鈍いくせにメンタル弱すぎでしょ!」
「筋肉馬鹿……筋肉馬鹿……」
ズーンと身を沈めながら戦士はうわごとのようにつぶやいてる
「あーもうごめんって、言い過ぎたわよう」
「すまん……しばらく放っておいてくれ……すぐ…復活するから」と戦士。
「お前もうめんどくせーよ!」
「くすくす」
「あ、なーによ僧侶、あんた笑っちゃってないで一緒にこの馬鹿なんとかしなさいよ!」
「えっ いえ、私にはどうしようも……」
ごにょごにょと僧侶は困ったように言葉にならない言葉を並べる。
「何言ってるかわかんないわよう」
「魔法使い、僧侶をあんまり困らせるな」
「なーによ勇者まで、私が悪者?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
「もう怒った、勇者なんてしらない!」
魔法使いは頬をふくらませ、プイッとそっぽを向いてしまった。




