34
ったく、結局ほとんど私が騎士として戦ってたんじゃん。
楽しかったからいいけど。
でも今度は剣も魔術もありの単独試合がしたいな。北橋誘ってみるか。
「姉さん。俺、魔術になりたいんだ。姉さんの言う通りにはできない」
試合終了後、健闘を称える握手を交わしながらレイス君がシンディにそう告げる。
シンディは渋い顔でレイス君を見た。
「最後だけとはいえ私の隙をつくだけの才能があるんだ。絶対に騎士になるべきだ」
こだわるなあ、この人。
事実くらいは伝えておくか。
「私とあなたが試合に集中できたのはレイス君がこの子と魔術で応戦してたからなんですよ。神と競り合うなんてかなりの才能じゃないですか。魔術になるべきです」
「……私も、そう思う」
おっと、神が味方してくれちゃったよ。
「……魔術、続けるべき。その強さに免じてまた呼ばれてあげる」
あ、消えた。
「なっ、消えたぞ! どういうことだ!」
「俺が召喚した存在だから元の住処に帰ったんだよ」
つーか、気づいてなかったんかい。
私今さっき神だって言ったじゃん。人の話聞いてないな、この人。
「剣が嫌いなわけじゃないんだ。魔術のほうがもっと好きってだけで。それを、その、姉さんにも認めてもらえたら……。学園に友達もいるし……」
こら、最後のほうゴニョゴニョ言って、何言ってるか聞き取れなかったぞ。
シンディは小さくため息をつく。
「フン。勝手にしろ」
シンディは場内から出て行ってしまった。
素直になれないのは難儀だねえ。
私たちも退場するとしますか────。
「ミラ!」
選手入場の案内もないうちにユーフェミアがずかずか乗り込んで、私の両肩をがっしりとつかんだ。
「……あの、何か?」
「あなた、ミラよね!」
「え、いや、私は────」
私は────。
誰なんだろう?
三浦千紗都?
ううん、それは前世でのことで、今の私はミラ・ヴェスタで、でもさっき戦ったのは三浦千紗都で、感情の大部分だって三浦千紗都のもので、今だって私は大切な主を「ユーフェミア」と呼んで。
まるで乗っ取られたみたいに。
────。
「────、グゥッ! 筋肉痛が!」
腹を押さえうずくまる。
「ミ、ミラ⁉」
「大変です、ユーフェミア様。突発性の筋肉痛に見舞われ頭に問題が発生したようです!」
「ハア、何言って────。だいたい抑えてるのはお腹じゃない!」
「体が言うこと聞かず頭に手が行かないのです。応援できなくて申し訳ありません。健闘を祈っております!」
早口でまくしたて、逃げ出す。
後ろで「ちょっと、しっかり動いてるじゃない!」というユーフェミア様の声が聞こえたけど、うん、気のせいだ。
私は、ミラ・ヴェスタは学びました。
前世なんて気軽に呼び起こすもんじゃないな、と。
この呪われし闇の力は封印します。
優勝候補だったシンディさんがまさかの一回戦敗退となったこの大会は、飛び入り参加のハワード・ユーフェミア組の優勝で終わった。
私たちは二回戦を棄権した。
理由は、レイス君のほうは目的を達成したから。私のほうは恐るべき闇の力を使うのが嫌だったから、ってのと、体の節々に痛みが走ったから。
無茶な動き方をしたせいで、私は本当に筋肉痛に襲われることになった。




