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「というわけで、お呼びしました。その道の専門家、レイス・コンティノー様です」
「どうも。今日はいかにしてサボるかについてお教えしたいと思います」
放課後の空き教室で、大変よろしくない授業が始まる。
教師、レイス君。
生徒、ユーフェミア様。
その他、私。
レイス君は「まずダメ出しから」と一言添えて、ユーフェミア様に向かって指をさす。
「サボりの授業なのに、放課後俺を呼び出す時点でもうだめです」
「日中は普通に学校の授業があったでしょう」
「ユーフェミアさん真面目なんだよ。試験終わったしもうすぐ夏季休暇だし今学期中は授業出る必要ないんだって。今日のも復習みたいなのだったろ」
「あなたは出てないの?」
「出てないよ」
堂々と言い切った。
さすが先生。心底呆れます。
「今日はこのためだけにわざわざ学校に来ました」
レイス君学校にいないから、わざわざアイリスに連絡してもらいました。
「ってことで始めるわけだけど。休む方法は複数あって、
一つ目は術の開発や訓練。俺がよく使う方法。俺は召喚術適正があるからそっち中心だけど、難病に効く治癒術を開発するとか危険度高くて開発者以外使用したことない術を会得するとかそういうのもあり。
二つ目、魔術師活動する。魔術署とか私立の魔術請負所とかに所属して魔物退治すると休める。コネがあると雇ってもらいやすいよ。ユーフェミアさんなら身内のところでいけるんじゃない?
三つ目、優秀な成績をだす。俺が今日休んだのはこの方法。手っ取り早くていいんだけど学内の成績だけじゃあまり長期間は休みとれない。学外の大会ならそれなりにとれる。
ユーフェミアさんは何がしたい?」
「暴れたいわ」
「なら二番目と三番目かな。夏になったら魔術大会たくさんあるし二、三個大きなので優勝すれば一か月は休めると思う。んで、途中から二番目に切り替えて野外活動。────どう?」
ポンポンポンと考えを出していく。
ユーフェミア様は案を聞いた後、口元に手を当て考え込んでから一つ質問した。
「大会はもう登録期間が終わってるんじゃないかしら?」
「そういうことならお任せを! ちょっと待ってて」
レイス君は意気揚々と通信機を取り出す。
「あ、セシル? 今、二階の第二教室にいるんだけどさ、頼みたいことがあるからちょと来てくんない?」
『学校来てたんだ。いいかげん授業出なよ。今から向かってあげる』
「おー、よろしく」
短い会話で通信を切る。その直後、セシルがいきなり教室内に現れた。空間魔術はまだ慣れないな。
「やっほー。僕に何の用?」
セシルは早速用件を聞く。
「ユーフェミアさんが夏にある大会に今からでも出られるようどうにかなんない?」
「大会? この暑い中なんでわざわざ」
セシルが首をかしげる。
ユーフェミア様はいたって普通に答えた。
「二学期からの学校を休むためよ」
「へ? なんで……あー、あー。そういうことか。だったらデトアール家の力で参加ねじ込める大会があるから協力するよ」
詳しい説明はなかったけれど、セシルはすべてを察し、うなずいた。昨日の今日だからわかって当然か。
ユーフェミア様が足を組んでひじをつく。
「あら、デトアール家の嫡男が私に協力していいのかしら?」
「学校じゃ王子と仲良くするよ。これは合宿の時ミラにお願い聞いてもらったお礼。────あの時の借り今返すけどいいよね、ミラ?」
「あ、はい。もちろんです」
頼み事はちゃんと考えてたんだけど、今しがた思いもよらず解決したのでもう何でもいいや。至宝を持ち歩くだけの簡単な仕事だったのになんか申し訳ない。
ユーフェミア様が何のことか聞きたそうに私のほうを見たけど、言葉に出るより先に、セシルが出場する大会についての話し合いを始めた。
そして暇になったレイス君が私のほうへ来る。
「本当に良かったのか、ユーフェミアさんサボらせて」
「良くはないけど、背に腹は代えられないっていうか」
「例のやつ?」
「例のやつ」
例のやつ:悪逆非道を極めたユーフェミア様がショウに殺されるのを阻止するやつ。
レイス君には阻止のお願いを協力してるんだけど、貸し借り的なお願いの仕方だからどこまで協力してくれるかは謎だ。
「昨日のことは話には聞いた。でもさ、行動があからさますぎないか? 学園にたてついてるみたいだ」
「やだなあレイス君。みたいじゃなくてたてつてるんだよ」
不思議なことを言う。
さっきセシルが察したようにユーフェミア様が学校休む理由なんてみんなわかるに決まってる。学園への無言の抗議だよ。
「だったら悪手だろ。学園と同時に王子にまでたてついてみえる。王子派が多ければユーフェミアさんの立場が悪くなるし、反対にユーフェミアさん派が多くても気まずさを感じた王子がユーフェミアさんへ怒りの矛先を向けるかもしれない」
あー、うん。それは私も考えた。
ショウ自身は選ばれたことをおかしいと思っているわけだし、ショウにとばっちりがいくのはまずいな、と。
でも、こうも考えた。
ユーフェミア様を登校させ続けると闇の組織的なところに入りそうだな、と。
どうしようか悩んでいた私は、ふと、報連相という言葉を思い出したのだ。夕食のサラダを食べているときだった。前世の知識ありがとう。なおサラダにホウレンソウという野菜が入っていたわけではない。
というわけでショウにはもう報告連絡済みだ。
「ショウ王子にはちゃんと『ユーフェミア様が二学期から休むので周囲から冷たい目を向けられることもあるかもしれませんが、何卒宜しくお願い致します』って伝えてる」
「自己中心的なお願いだな」
私の天秤はユーフェミア様に傾きっぱなしですので。
「王子は何て?」
「『わかった、引き受けよう』と」
「すごいな。俺なら断ってる」
「レイス君は一緒に休みそうだよね。二学期も学校来ないの? 来るなら頼みたいことあるんだけどきいてくれる?」
「ゴメンね、他あたって」
「王子を見習いなよ」
本当に断りやがって。
レイス君は楽しそうに肩を震わせた。
「ウソウソ。何? 一応聞くよ」
一応かい。
どうせ断るんだろ、と思いつつも、一応お願いしてみる。
「二学期から、ユーフェミア様の立場が悪くならないようにしつつ、ショウ王子についても周囲の視線から守ってほしいなって」
「うわ、面倒くさそう」
速攻拒否された。確かに面倒な頼み事だけどさ。
「そういうのはセシルの方がいいんじゃないか? 何事においても『あだ名付き』の言葉が一番効果あるって」
「うん。でも頼む前にセシル様自ら王子と仲良くするって仰ってたから」
セシルに頼もうと思ってたのはこれなんだよね。向こうで話し合ってる二人を見るに王子偏重の可能性もなさそうだしいい感じに叶っちゃった。
「ま、セシル様がいらっしゃるからレイス君に無理にとは言わないよ」
外進生側にも『あだ名付き』の存在が浸透してきたし一人でいいでしょ。
私が言うと、レイス君はわざとらしく口を尖らせた。
「そんな風に言われると傷つく。お詫びに俺の頼み聞いて」
なーにがお詫びだか。傷ついてなんていないくせに。
でも仕方ない。話くらいは聞いてやろうじゃないか。
「頼みって何?」
「今度は別の神捕まえたいんだ」
「また性懲りもなく」
ホント、休むことに全力だよね。
くだらない内容だけど一応聞いちゃったからね。答えはちゃんと出すよ。
「ゴメンね、他あたって」
いやー、ショウのような人間になるのは難しいですなあ。
断られることは予測できていたらしく、レイス君もあっさり諦める。
夏は私も忙しい。各種大会に参加するユーフェミア様について回るんだから。これを機に通信機も買っちゃおうかな。
「ね、レイス君の通信機はどんな機能があるの?」
「俺の? 普通に通信機能と、地図情報と計算機能と目覚まし機能、あと魔力貯蓄機能がある。魔力貯蓄はいらなかったんだけどこれしかなくてさ」
「ちなみにお値段は?」
「そんな高くなかったと思うけど、通信機買うの?」
「あると便利だし」
「俺ついてこうか」
「え、なんで、別にいいよ。買い物くらい一人でできる」
全力拒否。
レイス君と二人きりになると何が起こるかわかったもんじゃない。きっとまた生贄にされる。
「ちぇー、ミラがいると捕まえやすかったのにな」
「はいはい」
全然うれしくない褒め言葉をどうも。
「ま、いいや。どうせそっちも休みの大半は王都だろ。俺もだから、また姉さんとこの店においでよ」
「そうだね。お店にはいくよ。お店で会おう。それ以外の接触はよそう」
「警戒しすぎ」
「った!」
頭はたかれた。
石橋は叩いて渡るもんだし、そもそも危ないことに近寄らないことが重要なんだぞ。前世の知識だ。




