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「先生、内進生代表セシル・デトアールです。付き人二人同行させます」
「成績優秀だな。許可する」
という大変雑なやり取りを経て、四人で外へ出る。
外は話通り魔物であふれかえっていた。
そこかしこにいるものだから、住人たちは気にも留めてない。
魔物と動物の違いは、体内から人に害を与える瘴気を発するかどうか。
同じ大きさ同じ形でも、瘴気の有無で魔物と動物に分けられる。
瘴気自体は魔物が体内で生成しているものなので、魔物を退治すれば瘴気の放出は止まる。よほどの魔物でなければ、退治して一斉に噴出することなどない。
ガンガン退治してるのが内進生で、おっかなびっくり退治してるのが外進生。
見分けがつけやすくて大変良いと思います。
中には魔術を使わず手で叩き潰してる生徒もいるけど、ウェンディの話じゃ、ウェンディの友人たちは魔術を使おうと意気込んでいたらしいので違うかな。
セシルを先頭に少し歩いたところで、ウェンディの友達は見つかった。
「あの子たちです」
お店で買ったものを手に、順番に魔物退治をする四人組を指さす。
意外と早く見つかったな。
ウェンディの意志が変わる猶予もなかったので、逆に良かったのかも。
「ふーん、あの子たちか。さ、行ってきなよ」
セシルが言う。
「────」
ウェンディは深く息を吐きだし、手のひらに何かを書いてゴクンと飲むふりをしてから、歩き出した。私たちは、目立たないよう陰に隠れる。
下手をしたら友人をなくしてしまうかもしれないという恐怖を抱えながら、彼女たちに声をかけるウェンディ。
どう言うんだろう。
何て言うんだろう。
ここからじゃ何も聞こえない。わかるのは表情としぐさだけだ。
あー、ハラハラする。どうかウェンディの友達が心の広い子たちでありますように。
「じゃあ僕行くね」
「えっ、見ていかれないんですか」
「結果はもうわかってるでしょ」
セシルはちょいちょいと女子生徒たちを指さす。
「四人なのに買ったのは五つ。そういうことでしょ」
言われてみれば、誰か一人は必ず荷物を一個余分に持っている。
頭を下げるウェンディと、慌てて止めようとする女子生徒たち。
セシルの言う通り結果はもうわかりきってるのかも。
「自信はなくても人を見る目は合ったってことだね。最初っから腹割って話してればよかったんだよ。────じゃ、僕はイーリのところに行くから。ミラはちゃんと至宝守ってね」
いうだけ言って、去っていく。
至宝は────、よかった、ちゃんと持ってきてた。
「私らはどうする?」
北橋に訊く。
ウェンディにはこのまま友人たちと仲良く楽しく魔物退治してもらって全然かまわないんだけど、万一報告に戻っていた時誰もいないのはまずい。残っておいたほうがいいかな。
北橋を見たら、なんだか深刻そうな顔をしていた。
「どうかした?」
「ウェンディ、さっきおまじないをしてたな」
「おまじない?」
「緊張をほぐすおまじない」
「そういえばしてたね。手のひらに『人』って書いて飲み込む、おまじな、い────!」
「そ。俺らの仲間がいるな」
二日連続レイス君が頭なでられるのを見て、ユーフェミア様がこそっと「私のほうが多く倒したわ。ミラは私を褒めなさい」とかわいい子というので褒め、和やかにテーブルマナーを習ってるウェンディを横目に見ながら夕食をとった後、就寝前にウェンディの部屋に押し掛けた。
「あの、おまじない? ヤナギダ・シノちゃんっていう地元の友達から教えてもらったの」
大当たり。
高校のだれかだろうとは思ってたけど、元クラスメイトでした。世間は狭いね。
柳田志乃さん。
背が高くてきれいで物静かでいつも本を読んでた元クラスメイトの女の子。そんでもって────。
北橋をちらりと見る。
「珍しい行動だったんで気になったんだ。ごめん、それだけ。じゃあ失礼しまーす」
愛想笑いを浮かべて早口でまくしたて部屋を出る。
ぱたんと扉を閉めた北橋は、そのまま手で顔を覆ってしゃがみこんだ。
「……柳田かよー」
「柳田さんだってね。で、どうする?」
「どうって?」
「北橋のことだから『ほかのやつの状況知りてー、会いに行こうぜー』みたいな感じかと」
「似てない物まねやめろ。……会わねえよ」
「柳田さんだから?」
「柳田だから」
柳田志乃さん。
背が高くてきれいで物静かでいつも本を読んでた元クラスメイトの女の子。
そんでもって、北橋の元カノ。




