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北橋が指定したのは王都のはずれの森にポツンとたたずむ廃屋だった。
その昔、とある貴族が愛人との密会を楽しむために建てたものらしい。
なんでそんなことを知っているのかというと、実は私もここを利用したことがあるからだ。
王都に捨てられたばかりのころさ迷い歩いてこの廃屋を発見し、数日寝泊ました。その間に屋敷を探索して貴族と愛人の恋文を見つけ察したのだ。
私がここを見つけたということは当然ほかの人も見つけるわけで、王都にやってきたごろつきが根城にしようとしたので見つかる前に逃げ出した。
ここに来るのはそれ以来ぶりである。
あの後も絶えず誰かが使ってるだろうとは思ってたけど、まさか今は友人と王子が使用してるとは。
古めかしい扉を開け、あちこち傷んだ屋内へと入っていく。
「来てやったわよ、北橋」
私が来訪を告げると、屋敷に入ってすぐの右側廊下から北橋が姿を現した。後ろにはショウもいる。ショウは人目がないところだからと安心しているのか、フードを下していた。
「ご無沙汰しております、ショウ王子」
一応挨拶をしておく。
ショウは私を見て、
「幽霊じゃなかったんだな、ミラ・ヴェスタ」
そう言った。
一度会っただけの私の名前をしっかり覚えてるなんて記憶力良いな、さすが少女漫画のヒーロー。
「ショウ王子は北橋に攫われたのですか?」
ショウなら返り討ちできそうなのに。
私の質問に対し、北橋が抗議の声を上げた。
「だから攫ってないって。────逃げてきたんだよ」
「誰から?」
「広場でゴチャゴチャいってるやつらがいたろ。あいつらの仲間から」
反第二王妃過激派連中か。
北橋の説明にショウが補足を入れる。
「城であいつらに連れ去られて何とか逃げだしたところでこいつと会った」
「マジ焦ったぜ。急に、匿え、って言われるんだぜ。数年ぶりに会っただけの単なる顔見知りから。────三浦もちゃんと一人できただろうな? つけられてねーだろうな?」
「つけられてないよ。その辺は抜かりなくやってる」
でも、そっか。
よく考えたらショウが出歩いて連れ去られたなんて情報が簡単に出回るわけがないんだ。こんな重大事件、治安維持署の人がペラペラ吹聴してまわるはずがない。エンヴァントさんだってマオ先輩がズバリ核心をついた質問をしたからぼかして肯定しただけでそれ以外の情報は口にしてないし。
エンヴァントさん自身、マオ先輩が知ってることに疑問を持ってる風だったしね。
あれはショウの情報が欲しい過激派連中が流した噂だったんだ。
全然よくないけど、でもちょっと安心した。
過激派はエンヴァントさんたちにお任せしよう。
私はもう一つの気になる話に移りたい。
「────元の世界に戻れるってどういうこと?」
北橋が言ったあの言葉の意味。一から十まで洗いざらい教えてもらいましょうか。
私が北橋を見ると、北橋も真面目な顔で私を見返した。
「死んだ後、っていうとなんか変な感じだけど、でっかい木があって花がたくさん咲いてるところに集められたの覚えてるか?」
「全然」
首を横に振る。
北橋はハァッとため息をついた。
「だよなー。お前ひとり遅れてきたし、アズリの里にいなかったもんな」
「だからちゃんと説明してって」
「いいかよく聞けよ」
北橋が見てきたこと言われたことを語る。




