寝言は寝てから―3―
「し、……知られてんのんか」
「はい。隠すことでもないですし」
というか全世界に俺としては言いふらしたい。コレは俺の嫁で、俺だけが喰って良くて、所有権を主張できるのも俺だけだ。家人だけでなく王都でもその事実を鳴り響かせたい。もちろん、もちろんサーラ自身を見せるなんてもったいないことはしない。声も聞かせない。今までずっとしてきたように、おおっぴらにサーラのための衣装を買って、家の中でだけ着せる。彼女が喜ぶようなものをきっとずっと探し続ける。
それだけでも、俺の立場を鑑みれば噂は神速で王都を巡るはずだ。
手は、出されにくくなる、はず。
サーラが落ちてきた人間だというのは、王宮のごく一部では知られている。魔法は使えない。だが魔法自体はかけられる。同時通訳の呪は効いている。
つまり、成人に到底満たない年齢、抵抗なんぞは欠片もできそうにない華奢な体つきを鑑みれば、サーラは垂涎の研究対象な生物だということだ。議論もできるし。
知性を持ち、都合のよさそうな存在として彼女はずっと、主に研究者たちからの垂涎の的になっている。それはもう仕方がなかった。
だが、だからといって彼女の身柄を研究所に渡すかと言えば答えは否だ。するものか。
「ぉぉぉぉ。なんやんこのプライベートだだ漏れ感。だいたいやな、私は不思議やってんけどアンタらは平気なんか。自分の、その、なんや、こんなん、隠すべき事柄ちゃうんか」
「何のことについてでしょう」
「な、何についてとか……なんで笑ろてん?! うっわコイツいけずか!」
「いけず?」
無茶振りばかりしてくる研究所に対して、我ながら好戦的な笑みを浮かべていたことを誤解されたらしい。サーラが足の間に抱き込んでいる自分の枕の端を弄う。そんな仕草もかわいいが、彼女は自分の見た目よりも年齢を気にするタイプだ。はっと手遊びを止めて私をまっすぐに見てきた。なので私も遠慮なくわからない単語を聞き返す。
たいがいの言葉はありがたいことに自動翻訳してくれるが、サーラが気を許した時に使う言語には意味が取りにくいモノが多い。意地悪……か?
どこを、どう取って。
「言いにくいことをわざわざ言わせんのんは、やらしいで?!」
「サーラ、そんなに枕を叩かれたら埃が立ちます。枕の代わりに私を叩けばいいのでは。ほら、足の間に抱き込んでしまえば叩きやすいでしょう?」
「意味がわからん展開キタコレ!」
叫んで投げつけられた彼女の枕を難なく受け取ると、硬直している。……あぁ。どうやらからかいすぎたようだ。夫である私に対してすらこんな暴挙は初めてだし、混乱させてしまった。反省しよう。
「サーラ。おいでなさい」
「ぅわっ?! ちょ、はっちん、これ『おいでなさい』ちゃうやろ? 引き寄せたら違う単語やで!?」
「……ディーダラーとバッチンの性行為の横で寝ていたくせに。私がこういうことをするのは、お気に召さない?」
耳元で囁く。
しまった。本気で欲情しそうだ。




