土を掘るそして女子高生を探す 3
層番号、A-20。
ここから、密度が変わる。
「有機物反応、増加」
音声がそう告げた。
珍しくはない。
だが、この数値は少し高い。
俺は掘削速度を落とした。
土の色が、わずかに暗い。
水分ではない。成分の違いだ。
スコップの先に、引っかかる感触。
「対象物反応」
しゃがみ込み、手で払う。
最初に出てきたのは、布だった。
劣化しているが、形は残っている。
厚みがあり、均一。
「衣類。分類——防護用途の可能性」
続けて、硬いもの。
金属。
丸みを帯びた形状。
「頭部装備」
ヘルメット。
内部に土が詰まっている。
だが、元の形ははっきりしている。
周囲を広げる。
同様の物体が、いくつも出てくる。
間隔は不規則。
配置に意図はない。
「……散在」
さらに掘る。
今度は、長い金属。
直線的で、機構がある。
「武器。分類——射出型」
同じものが、複数。
弾薬らしき小型物体も確認。
「戦闘痕跡」
自動音声が、カテゴリーを更新する。
俺は、手を止めずに記録を続けた。
次に出てきたのは——骨。
人間。
完全ではない。
分断されている。
「有機体残骸。人類」
淡々と、処理される。
数は、増えていく。
一体ではない。
二体でもない。
層の中に、混ざっている。
武器と、装備と、同じ場所に。
「……」
俺は、作業を続ける。
特別な処理はしない。
この層では、これが“通常”だ。
しばらくして、記録媒体。
破損しているが、反応はある。
電力供給。
ノイズ。
映像が立ち上がる。
煙。
地面。
揺れ。
視点が低い。
人間の視点。
走っている。
息が荒い。
何かを叫んでいるが、音声は不明瞭。
次の瞬間、光。
衝撃。
映像が乱れる。
切り替わる。
別の場所。
同じ構造。
同じ装備。
同じ動き。
「……繰り返し」
俺は、そのまま記録に残す。
「同様の戦闘状況が複数確認される。時間的連続性は不明だが、構造的変化が少ないことから、長期間にわたり同一形式の戦闘が継続していた可能性」
映像は続く。
昼。
夜。
昼。
変わらない。
進展が見えない。
ただ、同じ行動が繰り返されている。
「……」
ノイズ。
最後の映像。
静止。
誰も動いていない。
地面に、同じ装備が散らばっている。
それで終わる。
「記録終了」
装置を切る。
「推測記録」
短く、言葉をまとめる。
「本時代は、長期的戦闘状態にあった文明と考えられる。技術水準の変化が乏しいことから、戦闘形式が固定化し、終了条件を持たない状態に移行した可能性がある」
一拍。
「結果として、消耗の継続により文明機能が維持できなくなり、崩壊に至ったと推測」
それだけだ。
珍しくもない。
戦争は、よく終わらない。
理由がなくても続く。
終わる理由がなければ、続く。
俺は骨を避け、装備を回収する。
ランクは高い。
だが、それだけだ。
価値はある。
意味はない。
立ち上がる。
土を踏む。
柔らかい。
この層は、有機物が多い。
だから崩れやすい。
だから、残る。
スコップを入れる。
また一つ、掘る。
戦争の層の下には、別の時代がある。
平和かもしれない。
違う戦争かもしれない。




