土を掘るそして女子高生を探す 2
層番号、A-19。
前層よりも、明確に硬い。
「組成変化。人工密度、高」
音声がそう告げる。
俺は手を止めず、そのまま掘削を続けた。
この硬さは、自然じゃない。
加工された構造物が、まとまって埋まっている時の反応だ。
数分後、露出。
最初に見えたのは、金属の関節だった。
「機械部品、確認」
そのまま周囲を広げる。
ひとつではない。
同じ形状の部品が、いくつも連なっている。
「……量産型」
口に出す必要はないが、出た。
規格が揃っている。
誤差がほとんどない。
これは個体じゃない。
“製品”だ。
さらに掘る。
やがて、全体像が見えてくる。
人型。
関節構造、バランス、配置。
人間に近い形状をしている。
「分類——作業機械」
スキャナがそう判断した。
妥当だと思う。
この時代は、おそらく——
「労働の代替が進んだ時代」
俺は、そのまま記録に音声を乗せた。
こういう場合、簡易的な推測を残すことは許可されている。
「同一規格の機械個体が複数確認される。用途は不明だが、人型であることから、環境適応を人間基準に設計された可能性が高い」
言いながら、土を払う。
別の個体。
さらに別の個体。
どれも同じだ。
違いがない。
「大量生産」
それが、この層の特徴だ。
しばらくして、別の反応。
金属ではない。
だが人工物。
掘り出す。
板状の装置。
保存状態は、悪くない。
「記録媒体、確認」
電力を流す。
一瞬の遅延。
映像が立ち上がる。
並んでいる。
機械が。
同じ形のものが、無数に。
規則的に配置され、動いている。
人間の姿は、少ない。
いるにはいるが——動いていない。
立って、見ているだけだ。
「……」
俺は、そのまま観察を続ける。
機械が動く。
運ぶ。
組み立てる。
配置する。
すべて、無駄がない。
速度は一定。
誤差は見えない。
「効率化の極地」
記録に残す。
画面の端に、人間。
何かを操作している。
だが、関与は少ない。
「人間は管理側に移行」
もうひとつ、映像が切り替わる。
都市。
整っている。
崩れもない。
混乱もない。
ただ——静かだ。
動いているのは、機械だけ。
「……」
ノイズ。
一瞬、映像が歪む。
止まる。
すべての機械が。
同時に。
その後の映像は、残っていない。
「記録途切れ」
音声が処理する。
俺は装置を停止した。
「推測記録」
少しだけ、間を置く。
「本時代は、労働の大部分を機械に依存した文明と考えられる。生産効率は高く、構造的には安定していた可能性がある」
そこで一度、言葉を切る。
「……ただし」
続ける。
「依存対象の停止、あるいは制御不能により、文明維持機能が崩壊した可能性が高い」
事実ではない。
だが、この星では珍しくない終わり方だ。
人間は、よく任せる。
そして——
任せたものに、終わらされる。
「記録終了」
装置を切る。
機械の残骸を見下ろす。
同じ形。
同じ構造。
個体差がない。
だから、壊れる時も同じだ。
全て、一斉に止まる。
それだけのことだ。
回収。
ランクは高い。
だが、それ以上でもそれ以下でもない。
価値はある。
意味はない。
俺は立ち上がる。
また、掘る。
次の層へ。
違う時代が出てくる。
だが、やることは変わらない。
見る。
記録する。
回収する。
それだけだ。
土を崩す。
また一つ、文明が終わる。
そして——
次の文明が現れる。
繰り返し。




