第八話 村
「ジェナードにラーガス、それと嬢ちゃん達、お前達には、本当に迷惑をかけちまった…。詫びとして、飯でも馳走させてくれ。」
「マジでェ!?やっほーい!!」
「え!いや、いいですよそんな!ガルナさんはなにも悪く無いんですから…!」
「これは俺の問題だ。こうでもしねぇと気が済まねぇのよ!」
先ほどの恨みがこもったような表情から一転、人が変わったように、ガルナはこちらに笑顔を向けていた。きっと、こっちが素なのだろう。
こんな人でも、あんなにさせるほど嫌われているとは……あれ、そういえばどうするんだろ。
「せっかくの誘いだが…我々は遠慮しておこう。他の皆の帰り場所を確認せねばならないし、そもそも食欲があまりないからな。すまないな。ガルナ殿。」
「あぁ〜…そりゃそうか。いや、こっちこそすまねぇ。あんたらのこと考えきれてなかったよ。じゃ、また機会がある時にでもな!」
「ああ、先に私たちは村に戻る。では今度こそ、またな、ジェナード、ラーガス。」
「2人とも、じゃあね。」
「おーう!またなァ!」
「またね。」
サロウとリリィは、2人一緒に、手を繋いで帰っていく。彼女らがいたから、誤解を解くことができた。感謝してもしきれない。
「そんじゃァ、行こうぜェ!」
「ちょ!待って!」
「待て待て。」
意気揚々と村に歩みを進めるラーガスを2人で止めに入る。もう〜この子は…。
「何だァ?」
「このまんま入っちゃったら攻撃されるに決まってるでしょ。さっきご馳走するって言ってましたけど…どうするんですか?村の外とか?」
「いんや、村の中だぜ。2人とも、ジッとしててくれ。」
何をするのだろう。言われるがまま僕らは横並びでジッとする。
使うのは久々だからな〜、という呟きが聞こえる。好奇心と不安が同時に湧いてきた…。
「うし…じゃ、いくぜ。そー…れ!」
そう言いながら、ガルナは手を僕らにかざした。その瞬間、彼の手から何か霧状のものが僕らに降りかかった。
「うわっ!?」
「おおうッ!?」
「びっくりした…ってラーガス!?なんか…肌が橙色に、あっあと耳が!!」
「そういうジェナードだって!鼻が短くなって…色もちげェし、あと髪まで!!」
「…だはははは!慌てすぎだろ!安心しろって、そりゃただの認識変化の魔法だ。種族は変わっちゃいねぇよ。ほれ、上裸だとあれだから一旦余った服貸してやるよ。」
自分らの変貌にあたふたしていると、ガルナが笑いながら教えて、僕にはポンチョを、ラーガスにはクロークを貸してくれた。
「認…識……?」
「マ……ホウ…?」
「あ、もしかしてそっからか。
じゃ説明すっと、魔法ってのは…改めて言うとむずいな……俺たちゃみんな魔力っつーエネルギーが体の中にあってな?そのエネルギーで色んなすげぇ力を使うのよ。で、今使ったのが『認識変化』。かけられた奴に対する認識を、かけた奴が好きに決められる。今回は、俺が2人に対する認識を、『人間』に変えといた。これで村に入っても、何も思われないってわけだ。ま、かけた本人には影響しないけどな、だから俺から見たら、元のゴブリンのままだ。」
「魔法…なんとなく存在は知ってたけど…そんな凄いのがあったんだ…。知らなかった。」
「へあァ…。」
「ああラーガスが固まっちゃった。」
「まっ!要は今お前らは見かけだけ人間ってわけだ。これで安心して飯が食えるし、村も見回れるぜ!」
これは…本当に、世界は知らないことばっかりだ…驚いても驚き足りない…っていうかなんか痒いな…なんかの虫にでも刺されたかな…
「すげェ〜〜!!!人間…とか、色々なんかいっぱいいる!!」
「色んな種族がいるからな。あの豚っぽいのはオーク。あのちっこいのはドワーフで…おっ珍しい、ローグもいる。商人か?」
「あのカエルみたいな人のことですか?」
「そうそう、体から出す粘液で薬とか作るんだ。あと、敬語とか遠慮しいことしなくていいぜ。もっと仲良くなりてぇんだ。」
「わかりま…わ、わかった。」
「おう。」
「ガルナァ!すげェぞすげェぞ!面白ェ〜!!!」
「あいつはもうちょい遠慮とか覚えるべきだな。」
「あはは…。」
そうこうしている間に、酒…場?とやらに着いた。色々ごはんを食べれる場所らしい。そういえば僕の村にもこういう食堂みたいなのはあったな。
入ってみると、色んな人達が騒ぎながら飲み食いをしていた。そういった人たちを横目に、僕らは奥の方の席に着いた。
「よーっし頼もうぜ!とりあえず酒と…お前らは?酒、飲むか?ていうか歳いくつだっけ?」
「僕は6つ。」
「オレ10!」
「ブッ!!!若っけ!!!?おいおい、体と年齢が比例しなさすぎだろ!ラーガスに至っちゃてっきり18そこらかと思ったのに、10って…。」
「ゴブリンの寿命は50くらいだから、人間から見たら歳に対して体の成長は早いんだと思う。…あと、僕はお酒苦手だからいいかな。一回村に持ち込まれたのを飲んだけど、気分が悪くなったんだよね。」
「オレも酒はいいや!苦いし!」
「まそもそも2人とも未成年だしな…。いや、種族が違うんだから未成年でもアルコールはいけるのか…?あぁもうめんどくせぇ。2人ともジュースとかでいいか。飯はどうする?」
「おすすめにしてもらってもいい?何が美味しいかわかんないし。」
「オレこのぴりから…なんだこれ?」
「牛ステーキだね。ピリ辛牛ステーキ。」
「それで!」
「あいよ、じゃジェナードは俺と同じやつにするか。すんませーん!!!」
ガルナは店員を大声で呼び始めた。注文をとっている途中で、また体が痒くなってきた。さっきから妙に痒いな…傷ついちゃうよ…。
「どしたァ?ジェナード。」
「いや…さっきから痒くて…虫に刺されたのかも…。」
「ふゥん。……ッ!?おいッ!ジェナード!」
「え、なに?」
「掻いてるとこが…なんかッ緑になってる!!」
「え…えぇ!?」
「お客さん?どうしたんだい?」
不思議に思ったのか、別の店員が、僕の腕を覗き込んできた。その瞬間、みるみる顔が青ざめていった。
「なっ…!お客さ…いや、お前っまさか!!か、解呪!!」
店員がそう言って、腕をかざすと、痒みはなくなった。そのかわり、全ての視線が僕に突き刺さった。
「え、え?」
「おい、あれ…まさか…。」
「ゴブリン……!?」
「なんでこんなとこに!!」
「しまった…!ジェナ…」
「そいつを殺せぇ!!!誰でもいい!!この店から消せぇ!!!」
店員の一声で、客が全員動き出し、剣や斧、拳を握り、僕の元へ四方八方から向かってきた。
「うわっ…!」
「「ジェナード!!!」」
その瞬間、ガルナが斧で、ラーガスが盾で、僕を守ってくれた。
「ふ、2人ともっ!」
「ラーガス!!担げるか!?」
「任せろォ!!」
「うぉわ!?」
ラーガスは僕を掴んだ後、凄い勢いで肩に担ぎ、入り口に走る。だけど客が入り口方面に!
「逃すかぁッ!!!」
「すまねぇが、どいてくれ!ハァッ!!!」
「ぬぐぉ!!」
「おわッ!!!」 「どわぁ!!」
「いってぇ!!」
「ぶぎゃ!」
何をしたのか、ガルナは斧を地面に叩きつけたら、辺りの客が全員吹っ飛んでいった。客がそれたので、僕らは入り口に向かって全力疾走した。
「すまねぇ!!賠償金は今後払う!!」
「いらんわんなもん!2度と来るんじゃねぇ!!バケモンがぁ!!!」
「うおおぉお!!!どいてくれェェ!!!」
村を走り抜けてる間、色んな人が僕を見ていた。
嫌悪、拒絶、恐怖、怒り…全ての負の感情が、僕だけに向けられていた。
わかっていたつもりだった。
叫ばれたり、嫌悪されたり、攻撃されたり…ゴブリンの嫌われ具合は、理解したつもりだった。
これが普通なのだ。
この村のこの反応は、実質世界の反応のようなものだ。
僕はこの光景を、一生忘れないだろう。
山あり谷あり
追記
一部ミスがあったため書き直しました
再追記
やばいミスもあったので書き直しました




