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LEGENDERS  作者: 鮪男爵
3/8

第三話 洞穴での激突

 奴隷達が入っている牢屋は5つ。同じ牢屋に入っている奴隷もいるらしい。酷い話だ。


「ラーガス、鍵穴を壊して。なるべく音が鳴らないように。」

「任せろ!フンッ。」


 ラーガスが拳を叩きつけ、バキッという音と共に、牢屋の鍵がひとつ壊れる。彼の怪力は本当に頼りになる。ラーガスがいなければ、きっと牢屋から出すこともできなかったろう。


「さすがだよ。その調子で、奴隷が入ってる牢屋の鍵を壊していって。」

「おう!フンッ。 フンッ。」


 サクサクと鍵を破壊していく光景は、少し恐怖を覚える。それはさておき、彼女達を出さないと。

 牢屋の扉を開け、眠っている茶髪の人間の女の子に話しかける。


「えっと…起きて!」

「んぅ……………ッ!!」

「もう大丈夫だよ!今から逃げ」

「ヒィ!嫌ッ…嫌ァッ!!」


 起きて僕の顔を見た途端、彼女の表情が、恐怖に染まり、彼女は、悲痛な声を上げた。


「ちょっ…大きな声を出さないで…あぁいや」

「来ないで!来ないで、この化け物!!!」

 

しまった。僕は大馬鹿だ。彼らと同じ顔の僕が近づいたら、“そう“思われるに決まってるじゃないか。

 どうしよう、これ以上の接触は彼女の精神を傷つけてしまう。どうすべきか考えているうちに、同じ牢屋から、誰かが飛び出し、


「ッ!」


 僕の首に、鋭い何かを突きつけた。


「なんだ…貴様……ッ。牢屋を開けて、何のつもりだ…!彼女に…ち、近づくな…一歩でも、近づいた瞬間…貴様の、首…を掻っ切るぞ…ゲス野郎…ッ!」


 声の主は、先ほど震えていた獣人だった。毅然とした言葉を喋っているものの、声も、体さえも震えていた。


「うォい!危ねぇな!怪我しちまうだろ!?」

「ッぅあ!あ、やめ…やめて…!」


 焦ったラーガスが獣人の腕を掴み上げる。攻撃手段を奪われた彼女は、みるみるうちに子犬のように弱々しくなっていった。まずい!


「ラーガス!離して!怖がっちゃう!!」

「え?お、おう!」


 手を離した瞬間、再び彼女は攻撃態勢に移る。

 とても短い頻度で呼吸をしながら、体を震わせながら、こちらを見据える。

 僕も息を整え、両手を上げる。


「ラーガスっ」

「えっ?あ、ああ」


 理解したラーガスも、同じように両手を上げた。


「な、何の…つもりだ…!」

「僕たちは、貴女たちに危害を加える気はありません!貴女たちを逃がすため、出口まで案内します!」

「…ふざ、けるな!!そんなもの…誰が、し、信じる、ものか!!」

「お願いです、信じてください!絶対に、何かしようとする気はないんです!」

「…ッ……」


 人間の子はまだ怯えた目で見つめる。獣人に至っては、まだ警戒を解く気はないらしい。うーん…仕方ない。


「では…こうしましょう。今から…僕の右腕の骨を折ります。」

「はァ!!?」

「なッ!?」


 ラーガスも獣人もこれ以上ないくらいに驚いている。


「ここにいる彼に、僕の腕を折ってもらいます。危害を加えられないように、です。それでも信じられなければ、ご自分で逃げてください。だけど、僕らなら、なるべく安全に逃げられるルートを知っています…。」

「…だがッ…。」


 獣人はたじろいでいる。これだけ言ってもだめか……やむを得ない。僕は右腕を、ラーガスに横向きに突き出した。


「ごめんラーガス、頼める?」

「…マジか?本気で言ってんのか!?ジェナード!!」

「本気だよ。彼女らが安全に逃げるために。信じてもらうために。これは僕なりのけじめのつもりだ。これだけじゃあ足りないだろうけど…。」

「だけどよォ…。」


 くそっ。ここでこんな時間をくう暇は無いのに。急がなきゃ!


「迷ってる暇はない!ラーガス!思いっきりお願い!急いで!!」

「…アー!分かったよ!どうなっても!!しらねェからな!!」


 そう言って、ラーガスが腕を振りかぶる。その腕は、思いっきり、僕の腕に……


「待ってぇ!」


 つんざくような声が、洞穴に響く。それは、ラーガスでも、獣人でもなく、怯えていた、人間の声だった。


「……信じ、ます…。私たちを、助けて…ください…。」

「…リリィ…。」


 人間の子の名前らしきものを呟いた獣人が、一呼吸置いた後に、こちらに向き直る。


「ジェナード…と、ラーガス……と言ったな…?」

「は、はい…。」

「おう。」


 そう言うと獣人は、地面に拳をつけ、頭を下げた。


「私は…サロウ。先ほどまでの非礼…申し訳ない。…できることならどうか…助けて……くれ…ッ!」


 …獣人は、とてもプライドが高い。そんな彼女の、サロウの、洞穴の汚い床に頭をつけた謝罪は、大きな…大きな誠意を感じた。

 それと同時に、先ほどまでのやりとりで目が覚めたのか、リザードマンやオーク、他の人間達が、怯えた目つきで牢屋から出てきた。

 僕は、サロウとリリィ、そして今起きた者達に告げた。


「…頭を上げてください。無論、そのつもりです。僕らで、ここにいる全員、必ず逃します。なので、僕たちを、信じてください。」


 洞穴の牢屋の空気に、少しだけ、希望が流れた。

進みが遅くてすみません。

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