第二話 固まる決意
数時間前………
「今日だ…実行するのは、今日だ!」
ずっと見て見ぬふりをしてきたけど…もう、耐えられない!
僕は朝食を食べた後、自室に戻って計画を立てていた。奴隷達を逃がす計画だ。
奴隷の数は7人。彼女らを逃がすためになるべく見張りに会わない、見つかりにくいルートを練っていた。
だけど、いくら深夜に行動するといっても、僕だけでは厳しいところが多い。そこで…
「頼りにしてるよ、ラーガス。」
「オウ!任せとけ!!」
彼の名はラーガス。僕と同じゴブリンだけど、とっても顔が整ってる。ちょっぴりおバカだけど、根はいいやつで、ゴブリンとは思えないほどの怪力を有している。
彼こそ、今回の計画の要だ。
「よし…こんな感じで行けば、障害は少ないはず。ごめんねラーガス、計画に巻き込んで。」
「気にすんなよ!オレ達がやってたことは悪いことっつーのはなんとなくわかってんだ!これで良い感じになるなら喜んでやるぜ、ジェナード!」
そう言ってニカっと笑ったラーガスは、とても同じゴブリンとは思えなかった。
8時間後……現在
今は深夜2時。大半のゴブリンが寝静まった時間に僕たちは、外にある奴隷達の牢屋に続く道を歩いていた。
2分ほど歩いた先に、適当に掘られたであろう洞穴の中にある牢屋を見つけた。しかし…
「やっぱり見張りがいるね。2体。」
ゴブリンと言えど、そこまでザルではない。長い木の槍を持ったゴブリンが2体、見張りをしていた。けど、1体は欠伸をしているし、もう1体はうつらうつらとしている。これならいける!
「行くよ、ラーガス」
「オウ!」
僕らは堂々と牢屋に近づく。すると当然、見張りに見つかる。
「おい、待ちな。今日の種付けはおわりだ。ヤりたきゃまた……くあァ…明日にすんだな…。」
小さいあくびをかきながら、見張りの1体はそう言う。もう一体は今にも寝そうだ。
「いや、別にそういうつもりじゃなくて…見張りの交代ですよ。」
「あん?まだそんな時間経ってねェぞ…」
「アンタらが随分眠そうだったからよォ!オレ達が代わりにやってやろうと思って、な!」
ラーガスの言葉に頷く。見張りは少し悩んだように俯き…
「…んじゃァ頼むわ…。オイラもう眠くてよ………おら、行くぞ…」
もう完全に目を閉じている相方を引きずりながら、見張りは帰っていった。
「名演技だよ、ラーガス。」
「あんがとよ!しっかし見張りになりすますとは、ジェナードは頭いいなァ!」
感嘆に礼を言いつつ、洞穴に入る。
ひどく暗く、ジメジメとした洞穴の中に、牢屋が見える。その中には…
……衣類や髪がボロボロになった人間、歯を鳴らしながら震えている狼の獣人。牢屋の辺りには、様々な液体が飛び散って…言葉に表すのに躊躇するほど、とても酷い光景だった。
「オレ…初めてここに来たけど、こんな…こんなだったのか……。」
いつも明るいラーガスも、思ったように言葉が出ないようだ。無理もない。
僕だって、こんなの予想以上だ。
「これは、この光景は、僕らゴブリンの業だ。ラーガス。
助けるよ。」
薄暗い洞穴の中で僕は、改めてそう決意した。




