第十二話 5分後
「……ド………ェナード………ジェナードッ!!」
「……っ……ぅあっ…」
「っ!起きたか!?……はぁ〜…よかった…」
誰かが僕を呼びかける声が聞こえたから、重たい体をなんとか起こし、声のする方を見ると、ガルナが安堵したように、座り込んでいた。
「ガルナ…えっと……どうしたの?」
「そりゃこっちのセリフだぜ!!あいつらを村の外に誘導してたら、村の方から爆音が聞こえたもんでよぉ!急いで見に来てみりゃぁ、お前は倒れてるし…見てみろ!」
「えっ…?うわぁ!」
ガルナに促されて周りを見渡すと、ぐちゃぐちゃになった木々、土が凹んだような大穴、そして何より、沢山のゴブリンの死骸が散らばっていた。何かに切り裂かれ、潰され、殴られたような形跡を残しながら。昨日対峙した数より死骸が少ないのを見る限り、何人かは逃げ出したみたいだ。長の死骸もない。彼も逃げ延びたらしい。
あまりの異様な光景に、吐き気を催しかけたが、その瞬間、“彼“を思い出した。
「待って…ラーガスはっ!?見当たらないけど…!どこに行ったの!!?」
「あぁ、お前がぶっ倒れてる間、周りを見るついでに探したんだが……どこにもいなかった。」
「じゃあ、逃げきれたってこと…?」
「そう思いたいが…だがよジェナード。どう考えてもそうは思えねぇ。話を変えるが、さっき…大体5分前か…何が起きたか覚えてるか?」
いきなり話題を変えられた僕は、驚きながらも、気を失う前の記憶を頑張って辿ってみる。
「えっ?……えっ…と、確か…長達に追い詰められた時、なんか…空から大きい何かが、降ってきて…それで……ダメだ、多分そこで気絶したかも」
「ま、今んとこはそれで十分だ。つまり、デカい何かが、お前らを襲ってきたってことだろ?辺り一面ぐちゃぐちゃにされて、阿鼻叫喚だったはずだ。そんな中、ラーガスはお前を後に逃げ出すと思うか?あのラーガスがだぞ?」
…よく考えなくてもわかる。ラーガスのことだ。倒れてる僕を見たら絶対に助け出しに来る。絶対だ。そう思いながら、僕はガルナに首を振って応じた。
「だよな。あいつの死骸があるわけでもないし、着てたクロークのかけらも見当たらねぇ。忽然と消えちまったわけだ。……で、これは俺の仮説なんだが…」
「なに?」
そう言ったガルナは、腰を据え、息を整えながら、その仮説を口にした。
「攫われちまった…とかじゃねえかな」
「攫われた…?誰に、っていうか何のために?」
「誰っつったらそりゃあ、デカい何かなんじゃねぇのか?理由は知らんが」
「うーん…そうなのかなぁ」
「襲ってきた奴もわかんねぇし、さっきの状況だって見てねぇんだ。今考えたって仕方ねぇさ」
「…まぁ、そうだね…。……ラーガス…」
一体、どこに行ってしまったんだ。5分前まで確かに存在した友の突然の消失に、落ち込んでたら、ガルナがバシィッ!!と背中を叩いてきた。…びっくりしたし結構痛い……。
「そう気を落とすな。もしとんでもないことに巻き込まれてたとしても、そう簡単に死ぬような奴じゃないだろ?あいつは」
「いたた………そうだね、落ち込みすぎてたよ。くよくよしてる場合じゃないね。ありがとう、ガルナ」
「気にすんな、お前の何倍も生きてんだぜ?こっちは。年長者の役割ってわけよ」
そう言ってニカッと笑うガルナは、ラーガスとはまた違う頼もしさがあった。年の功というやつなのだろうか。いや別にそこまで老けてるわけじゃないと思うが。
そんなことを思いつつ、僕は、今からやるべきことを考えていた。まず何をすべきか……あっ。
「そうだ、ソーイ達はどうしたの?村の外に連れてったって言ってたけど」
「森から出ない程度のとこに待機してもらってる。あいつら緑だから、森と同化して外の連中にも気づかれにくいはずだ」
「そっか。とりあえず向かえに行かないとね。それから、彼らをどうするか決めないと。連れ出してきたはいいものの、結局話し合う前にラーガスが消えちゃったからな」
「それについてだが…俺にひとつ当てがある」
「当て?彼らをどうするかってことだよね?それってなんなの?」
疑問に思い聞いてみると、ガルナは予想だにしない答えを返してきた。
「王国だ。ファン王国に、あいつらを連れていく」
「えぇ!?」
そう言った彼の顔は、どことなく複雑そうな顔つきだった。
ようやく、プロローグが終わりました。




