第十一話 最強の2人
「こんだけなら呼んだけどよ…」
「…思ったよりいたんだね。これで全部…かな?」
「多分…オラ達が知ってる奴、また知ってる…って感じに集めたから…」
「急に言われたから来たけど…」
「なんだなんだ?」
「そこにいる奴誰だっけ?」
ソーイ達がそう言って連れてきた“伝統反対派“は…9人程集っていた。村が100人程度いるって考えたら少ないけど、それでも僕らからしたら大切な9人だ。集まった9人は、何が何だかわからないと言った感じで、わちゃわちゃしていた。
「2人とも、呼びかけてくれてありがとう。そして集まってくれた9人も、ありがとう。早速だけど、僕についてきてほしい」
「なんでだ?」
「それは……あぁ〜…えっ…と、そう、美味しい物をご馳走したくて!森の外にあるんだ!その美味しい物が!」
「ウマイもの!?」
「マジ!?」 「食いたい食いたい!」
「ワーーイ!」
だいぶ苦しいが、彼らなら信じてくれると思っていた。ここさえスムーズに進めば、あとはどうにかなる。少々苦笑しながらも、僕を合わせて12人は、混乱に乗じて抜け出して…
「おい、オメーらどこ行くんだ?」
…!!まずい!偶然こちらを見ていたであろうゴブリンに見つかった!!ここで捕まったら全部水の泡だ!考えろ、皆を逃しつつ、どうにか誤魔化せる方法を…!動揺を隠しつつ、顔を見せぬよう、背中越しに応答する。
「えっ…と」
…いや、だめだ。いつのまにか、ちらほらとこちらを見ている者がいる。適当な理由で誤魔化そうとしてもここまでの大人数じゃ誤魔化しきれないかもしれない。ましてやここでちんたらしていたら、長がやってきて僕ら諸共全員捕まる可能性だってある…ええぃやむを得ない!
「皆!ここから真っ直ぐ進めば、鎧を着たお兄さんと、大きいゴブリンがいる!その人に着いていけば美味しい物をご馳走してくれる!さぁ、行って!」
反対派の皆に、なるべく早口で小声で伝え、村の外へと追いやった。彼らはちょっと怪訝そうな顔をしながらも、ご馳走を思い出し、村の外へと走っていった。彼らを任せたよ、ガルナ、ラーガス。
「あッ!おい待てッ!」
「ここは通さない!それに、君達は彼らを追う必要はないんだ!」
「なんだと!?テメェなんなんだ!」
当然村の連中はそれを追いかけようとするが、その眼前に僕は踏み出し、彼らに顔を向けながら、その言葉を言う。
「まだわからない?僕はジェナード。村の裏切り者だ。」
「えッ、…!あ、ホントだ!!」
ようやく気づいたらしい彼らは、驚愕しながら僕を見つめていた。…ここまで来ると流石に怖くなってきた…僕ら、よくここまで世代が続いてきたな…。ていうかバラさなくても案外誤魔化せたのでは?最早取り戻せない後悔をあとに、目の前の集団に言葉を連ねる。
「逃げた何人かのゴブリンよりも、迷惑な裏切り者1人を捕まえたほうが、君たちにとっても都合はいいと思う…長も喜ぶんじゃないか…?」
「おぉ…おぉ!そうだ!それがいい!捕まえろ!!」
その瞬間、無数のゴブリン達が、僕を捉えようと、迫ってきた。これでいい。これで、11人の善良なゴブリン達が解放された。僕1人でこれだけの成果は、間違いなく大きいはずだ。来るであろう沢山の衝撃に、思わず目をつぶる…。
「ジェナーーーーーード!!!!!」
大声とともに降ってきたそれは、地面に降り立った衝撃で周りのゴブリンをブワッと軽く吹き飛ばした。
「遠くから見てたけど、我慢できなかった!だいじょぶか!?」
「…なんとなくさ、来るんじゃないかって期待してた自分がいたんだ。情けないよね、頼りっぱなしで。」
「?何が情けねェんだ?オレはいつだって、お前のとこに来るぜ!!」
「ありがとう…。ゴブリンの皆は?」
「あいつらなら、ガルナに任した!ガルナならなんとかしてくれるだろーしな!」
こんな状況下でも、ラーガスの口から見える歯が、一際輝いて見えた。本当に、頼りになる友達だ。そうこうしてるうちに、奥から、見慣れた奴が歩いてくるのが見えた。
「……どうりでおかしいと思ったわけじゃ。ウチのモンに西とか言える奴がいるわけがないし、そもそも奴らが攻めてくるわけもない。…まぁた貴様ら、というわけか。つまらん誤報をばら撒きおって…ぬけぬけと戻ってきて、今度は何がしたい…?」
「もう目的は済んだから、帰りたいんだけど」
「はいそうですか、と帰すほど、わしは優しくない。この顔の傷の借りも返さにゃならん…帰れるもんなら帰ってみぃ。今度は逃さんぞ」
そう言われ、辺りを見渡すと、いつの間にか僕たちは沢山のゴブリン達に取り囲まれていた。
「妙な動きをしてみろ。いくらラーガスが馬鹿力を持ってたとしても、この人数差じゃひっくり返せん。あの橋のような小細工もさせんぞ」
「そんなの、やってみなきゃわからないじゃんか。だよね、ラーガス。」
「そんとーりだ!オレとジェナード!2人いりゃあ最強ッてやつだぜ!」
僕たちと、長達、両陣営が睨みをきかせていると、またも空から、何かが降ってくる音が聞こえた。
空を見上げると、何か、とても大きな物が見えた。
轟音とともに降ってきたその何かは、僕たちの目の前に落ちてきて、それで、
そこから先は、覚えてない。




