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LEGENDERS  作者: 鮪男爵
プロローグ
10/13

第十話 他のひと

「この森ん中にあんのか?随分薄暗ぇな。」


 魔法バレ事件から数時間後、嫌な顔をしながら呟いたガルナを横目に、僕ら3人は、件の村がある森の入り口に辿り着いた。既に外は暗くなりつつあり、それ以上に森は暗さを増していた。


「…戻って、きちゃったね…」


「だなァ…。…ウマくいくといいけどなァ」


「厳しいだろうなぁ〜…。まぁ失敗しても大丈夫だろ!俺が2人まとめて守ってやるからよ!おっさんに任しとけ。」


 そう言って胸を叩くガルナは、本当に頼もしい。ラーガスも勿論強いが、ガルナは持ち前の肉体と長年の経験からか、ただの旅人にしては凄まじく強いのだ。

 さっきも斧で床を叩いた時に、すごい衝撃波を出してたし、多分まだまだ知らない力を持っているのかもしれない。


「んじゃ、入っぞ。…ぅぐっ…」


「っ!ガルナ!大丈夫?」


「どしたァ!?」


「いや…大したことじゃねぇ…この森、やばいな……当たり前かもだが…あのクソどもの臭いが、至る所に立ちこんでやがる…入った瞬間にこれかよ…」


「だ、大丈夫?きつかったら、今日は中断しても…」


「…いや、平気だ。慣れてきた、今までにも感じた臭いだしな」


「え!オレら臭かったってこと!?」


「あぁ〜…いや、そこまで……じゃねぇぞ?」


 臭かったみたいだ。ことが終わったら体を改めて洗おうと、僕は決めた。ていうか、そんな臭うんなら酒場に居た時も不味かったんじゃないか?多分バレてなくても追い出されてたかもしれない。

 そんなことを考えながら、僕らは森を進んでゆく。東から進むのが村への最短ルートだが、川にかかる橋が壊れてたから、今回は西側から進むことにした。それに、東側には見張りがいるかもしれない。

 どの道見つかるかもしれないが、村に向かう途中で見つかっても面倒だ。


「…なんか、妙に見張りがいねぇな。こういう時、何体かいるもんだが…」


「逃げる時、色々あって撃退したから、その影響かも」


「撃退ぃ?お前ら…何したんだよ」


「ちょいとかけらを纏めて、ぶつけた…みたいな」


「はぁん…?」


 何言ってんだ、とでも言いたげな顔で見てくるガルナに僕は苦笑した。

 確かに今思えば、だいぶ無茶苦茶な戦術だったかもしれない。


「ま少ないなら少ないで楽でいいんだけどよ…木が少なくなってきたな……。…っ!あれか?」


「あ…!」


 進んでみると、見慣れた景色が広がっていた。

 木や藁で作られた家屋、奪った物を保管する倉庫、色とりどりの植物が育てられている畑、そしてそれに囲まれているようにそびえ立つ長の土像が見えた。

 …いつしか慣れきっていたが、改めて見るとあまりにも趣味が悪い村だ。

 それに同意するかのように、眉を顰めに顰めるガルナの顔が視界の端に見えた。


「…何だありゃ…気持ちわりぃ……お前らあんなのが好きなのか?」


「いや別に…」


「オレは好きだぜ?長じゃなかったらもっと好きだけどな!」


 草むらの影に移動しつつ、そんな話を続ける。…この辺りでいいかな。2人に合図し、ここに静止させる。


「じゃあ嫌いなんじゃねぇか…で、始めるんだろ?準備はできてるぜ」


「うん…じゃあ、1発お願い、ガルナ」


「おうよ、ほいっと。スゥ━━」


 ガルナは口元に魔法をかけ、息を吸い始める。そして、


「「「敵 だ あ あ あ ぁ あ ぁ ぁ ー ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」」」


 その瞬間、とてつもない轟音が村中に響く、当然村の者らは飛び起き、何事かと外に出る。皆うつらうつらとしながら、突然の轟音に混乱しているようだ。

 間髪入れずガルナはもう一言叫んだ。


「「「東 ぃ ! 壊 れ た 橋 の 方 か ら 人 間 が 攻 め て き た ぁ ! ! ! !」」」


「…あぁ!?何が起こっとる!何故人間が攻めてきた!!?」


「ど、奴隷を助けにきたんじゃ…」


「はあぁ?!昨日の今日じゃぞ!!?あのマヌケどもに持ってかれて、メスどもは空じゃわ!!そもそも、何故攻めて……ええぃ!お前達、こんか!!川は幅がある!渡ってる間ならワシらでもどうとでもなる!迎え撃つぞ!!」


「「は、はいぃ!!」」


 困惑しながら怒る様子の長は、40人ほどの部隊を連れて、東に移動した。


「これでいいのか?まだだいぶ残ってるし、お目当ての奴が長とやらについてってたら意味なくないか?」


「大丈夫。長の部隊は、長に心酔してる者しかいない。それに、長がいなければ難易度がかなり下がる。後は僕が…」


「ジェナード、やっぱりオレが行ったほうが…」


「だめ!ラーガスは見た目の差が大きいんだから、いくら彼らとはいえ、バレちゃう!僕ならまだいけるはず…!」


 そう言い残し、混乱の渦中にある、大量のゴブリン達の中に潜り込んだ。

 そう、彼らはおバカなのだ。だから実質指名手配の僕がいても、そうそう気づかない。


「ソーイ!ロバン!いるかい!?」


 まあまあな声で、件のゴブリンを呼びかけると、左右から、ゴブリンの間を掻き分けて、2人のゴブリンが寄ってきた。


「誰ダ?オラを呼んだのは…。」


「オレッちになんか…ん?………ッあ!オメェ!ジェ…」


「しー!!…余裕がないからさっさと聞くよ。村の伝統、種付け作戦について、どう思ってる?」


「な、なんでそんなこと…」


「いいから!ちなみにわかってると思うけど!僕は大っ嫌いだ!君たちは、どうなんだ!」


 僕のあまりの勢いに気圧されたのか、2人は、ぼそっと答え始める。


「…そりゃ…嫌だァよ…。長に言われて何回かやろうとしたけど、やっぱり、女達は…すごく、悲しそうで…痛そうで…」


「オレッちもだ…あんなまでして…オレッちは、気持ちよくなんか……なりたくねェ…」


「…!」


 ぽつり、ぽつりと出てきたそれは、紛れもなく、後悔と、反対の言葉だった。

 僕は、わかっていなかった。この村の誰もが、楽しんでそういうことをしているんだと。正しいのは僕らだけなのだと。そう決めつけて、ラーガスのみ誘ったのだ。

 …いるんじゃないか、ちょっと周りに目を向ければ、僕らに似た人達が、正しい人達が。…とにかく、これでこの2人は大丈夫だ!


「ソーイ、ロバン、…ありがとう……頼みがある。」


 あとは、芋づる式だ…!

流石におバカなゴブリンでも、真正面でじーっと見てれば気付きます。

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