ダンスと殿下
いや、なんで殿下がここにいんの!?
さっき私挨拶しましたよね!?それで終わりましたよねぇ!?
鼻血どころか、私の頭はパニック状態だ。
「で…殿下、どうしたのですか」
必死に声を絞り出し殿下に尋ねた。
「ああ…。…リリス嬢、私と踊っていただけるか」
そう言って私に手を差し出す殿下。
………なにこれ!?フラグ回収ですか!?
回避したと思ってたのに!何故に私!?挨拶しただけで後は何もしなかったのに!
「恐れながら、私以外に殿下と踊りたいご令嬢は沢山いらっしゃいます。ですので、その方々と踊られたらよろしいかと」
よし、これで回避成功だ!よく言った私、偉いぞ!
「いや、私は貴女と踊りたいと思った。だから、踊ってくれないか。…さっきもディルクと踊っていたようだしな」
そう言ってジトッと私の隣にいるディルクをみた。
ディルクはこころなしか顔が青ざめているように見える。
て、そんなことより。何そのセリフ!私と踊りたいと思ったなんて、やめてくれ!私はヒロインじゃない!悪役令嬢です!!
そのセリフを言う人間違えてますよぉ!?
私が何も答えずにいると、ディルクが肘で私をこっそりつついてきた。
「で、どーすんだよ」
小声で言ってくるディルク。
「どーするも何も断れる訳ないでしょ!」
それに小声で返す私。
断りたいでも断れない。何故なら、目立たないところで言われたならまだやりようはあたっのに、いつの間にか会場にいるほぼ全員が私たちのやり取りに注目していたからだ。
「じゃあ早く返事すりゃあいーじゃん」
簡単に言ってくれるな、こいつは。
今度遊びに来た時、お菓子の量減らして唐辛子を詰め込んでやろうか?
「したくないのよ、したら鼻血が」
「鼻血?何言ってんだよ、もう諦めろ」
…はい。分かりました。踊ればいーんでしょ、踊れば!
こうなったらもうやけくそだ踊ってやろうじゃないか。
「そんな言葉を頂けて光栄です。ぜひ、踊らせてください」
私はそう言って殿下の手をとった。
殿下の手は剣を握っているからか、ゴツゴツとしてとても逞しかった。(まあ、ディルクもだけどね笑)
ホールの中央に行くと、ワッと周りがうるさくなった。
はい、気にしなぁーい。気にしなぁーい。
私は石像です、ただ踊るだけの石像。
踊り始めるとみんながヒソヒソとなにか言っいるのが分かった。
何を言っているのかは分からないが、どうせまた悪口だろう。
「なんて、お似合いのお二人なの…」
「…神々しい」
「婚約者はランバーノ公爵家のご令嬢で決まりだな。他は考えられん」
(リリスは自分の状況に手一杯でそんな言葉などきこえていなかった。)
私は鼻血を出さないために殿下の顔を見ないようにして踊った。
それでも目の前には立派な胸板があって、それだけでも鼻血がでてしまいそうだった。
耐えろ私!頑張るのだ!これが終われば…そう、美味しいケーキが待っている!頑張れ、私!
自分を鼓舞しながら殿下と踊る。
…さっきもおもったけれど、なんで私?
なんで私と踊りたいと思った?
うーん何故だろう。
一人で悩みながら踊っていると、頭上から声が落とされた。
「なにか、気になることがあるのなら質問してくれて構わない」
…まさかエスパー?
私の思っていることが分かるなんて、今度から考えていることがバレないように注意しなくては。
「では一つだけ。あの…何故殿下は私と踊りたいと思ったのでしょうか」
そうきくと殿下は、少しだけ目を見張りそしてふっと笑った。
「何故…か。何故なんだろうな。自分でもよく分からない、ただもう少し貴女と話してみたいと思った。それと私の事はカインでいい」
…何故だろう。髪の色も身分も違うはずなのに何故か…カイと笑っている姿がとても重なった。
そのままボーッと殿下を見ているといつの間にか曲が終わっていた。
離された手が少しだけ名残惜しいと思ってしまった。
それは多分殿下が私の推しだからだろう。
推しだから少しでも長くそばにいたいと思ったのだろう。…うん、きっとそうだ。
「私の頼みをきいてくれたことに感謝する」
「いえ、こちらこそ。私の相手をして下さりありがとうございます」
私が頭を下げると、次は学園でっと言って殿下は去っていた。
………よくやった私!鼻血を出さなくて良かった!
私は殿下という大きな壁を乗り越えたことに歓喜に打ち震えながも、この後はもうゆっくり静かに過ごしたいとソニアとスカーレットとのところへと向かったのだった。




