第3話 俺様のネズミ退治とお婆さんの思い出(3)
三日目の午後に、商人さんがやってきた。
受付で依頼票に達成確認のサインをしてくれた。もちろん、茶色の女の人が手続きをしてくれる。俺様は机の上で見ているだけだ。
「それから、ヌコ様と年間契約の約束を頂いたのですよ。ハンターギルドを通じて契約したほうがいいですか?」
茶色の女の人は、ちょっと驚いたみたいだ。
「みーちゃんと契約を? 喋れないのを良いことに、都合よく解釈されているのでは?」
「いえいえ、ちゃんと、お互いの条件を納得したはずです。そうですよねヌコ様」
「にゃ」
茶色の女の人は、書類をあっちこっちめくりながら、やぱり規則上は例外になるから、ギルマスに相談してくると、奥の方に行った。
商人さんと、ペンを転がしたりして遊んでいると、茶色の女の人が戻ってきた。
「今回は立会人の形でお願いします。ギヨム商会とハンターみーちゃんの契約に、ハンターギルドが立会人として名前を記載させて頂く形式で進めさせて下さい」
商人さんと、茶色の女の人が、相談しながら、契約書を作っていく。
「それで報酬は・・・キラーサーモンの半身ですか? それはちょっと少ないのでは? 年間ですよね? 10日に一回となると、赤金貨で4か5枚位は頂かないと」
入荷したキラーサーモンは、ずっと前から買い手が付いていて、一匹だけ自分用に確保しておいたそうだ。奥さんと娘さんも大好きで楽しみにしているから、半身以上は譲歩できないんだそうだ。
ちなみに、キラーサーモンは高級食材で、一匹赤金貨2枚の売値が付いているらしい。
結局、「10日に1回」を、「一月に1回(ただし俺様が行ける時)」として、キラーサーモン半身を前金として、契約終了後に、赤金貨1枚の報酬となった。ギルドへの手数料は、諸経費込で銀貨1枚くらいだとか。俺様が稼いた場合の税金がどうなるのか、いまだに解らないらしい。
「しかし、お嬢さんも、なかなかおやりになる。商人としてもやっていけそうですね。
それでは、キラーサーモンは、ここでお渡しすればよろしいですか?」
俺様は、机から降りると、外へ歩き出しながら「にゃ」と鳴いた。
一緒にギルドから出ると、商人さんは、停めてあった馬車から、木箱を取り出した。
でかいな。俺様がうーんと背伸びをした3倍くらいの長さがある。
木箱を肩に載せた商人さんと、向かいの商店街へ。野菜売りのおばあさんの所へお邪魔する。
おばあさんが座っている後ろの机に上がると、机をパシパシと叩きながら、商人さんに「にゃ」と鳴いた。
「そこへ下ろせばいいのですか? おばあさん、ちょっと失礼しますよ」
木箱を開けると、キラーサーモンの半身がお出ましだ。笹みたいな葉が詰め込んであって、ひんやりと冷たい。
商人さんが、これは俺様の報酬だと説明してくれた。
「おやまあ、キラーサーモンかい? これは美味しそうだねえ。みーちゃんにね。キラーサーモンが食べたいって話をしていたんだよ。うれしいねえ」
おばあさんは、早速料理を作ると言う。
商人さんも店の奥に引っ張り込まれて、俺様としばらく待たされた。
サーモンと野菜のスープ。熱いスープは俺様には無理なので、サーモンを取り出して、お皿の上で冷ましてくれた。
俺様にはちょっと塩辛いかも?
商人さんは、素朴な味わいでとても美味しいと、おかわりする。
「戦争に行った息子が帰ってきたみたいだねえ。なつかしいねえ」
おばあさんと商人さんは、どこかの国の話をしていた。おばあさんの故郷の食材も仕入れることができそうだとか、この料理を店で出していいかとか
次の日から、おばあさんの所に行くたびに、サーモンを食べさせられた。
木箱には保冷の魔術が掛けられているそうで、しばらくは冷やして置けるのだそうだ。それも、含めて高価なんだと。
焼いたり、煮たり、料理は何種類かあったけれど、そのうちに飽きてきた。
「ほらね、嫌になってきただろう? そういうもんなんだよ」
おばあさんが、ふふふと笑った。
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