第3話 俺様のネズミ退治とお婆さんの思い出(2)
ハンターギルドを出た俺様は、野良ヌコの黒に会いに行った。今日も屋根の上で昼寝していた。また「勝手に縄張りに入るな」とか言ってるけど、ネズミの捕り方を聞いてみた。
「ネズミを捕まえるんだと? 餌を食いにくるのを、物影から飛びかかってバシッとやりゃいいんだけどよ。きたねーから、食っても美味くないし、お前も物好きだな」
あまり参考にならなかった。
「どこの倉庫だ? ギヨム商会か? あの緑の看板のところだ。お前の縄張りの中じゃねえか」
黒に教えてもらって、商会の場所はわかった。大通りを超えたら、あとは屋根を伝って安全に行けるだろう。
たどり着い商会はハンターギルドの倍くらいの大きさ? 裏手に倉庫の入り口があって、馬車が2台ほど通れそうな幅がある。入り口を抜けると、その脇に小さな部屋があった。
ギルドの受付みたいになっていたから、その上に飛び乗る。おじさんが二人、俺様をみて驚いた
よごれたタンクトップのTシャツで筋肉質な体つき。ボディビルダーって感じだな。
「うぉ!? なんだ? ヌコが入ってきたぞ」
「おい。品物に毛が入る。入ってきたらだめだぞ」
しかし、サーモンを食べるまで引き下がる訳にはいかないぞ。
俺様は背中を上げて毛を逆立てて、「シャーッ」と威嚇する。
「うわ、こいつ・・・」
「これ、ハンターギルドのヌコか?」
首のプレートを見て気がついたみたいだ。おじさんの一人が、うーむと考えて
「そういえば、会長がネズミ駆除をハンターに頼むって言ってたな。おまえさんが、やってくれるのかい?」
そう言う事かと、おじさんは、水をお皿に入れて出してくれた。
「客人なら、茶でも出すところなんだが。ヌコだから水のほうがいいだろ? ちょっと会長に知らせてくるから、待っていてくれ」
水を舐めて、おじさん達の仕事を邪魔しながら待っていると、商人さんがやってきた。
「こんなに早く来てくれるとは思いませんでしたよ。そういえば、自己紹介をしていませんでしたね。ギヨム商会のギヨムです。よろしく」
「にゃーぉ」
しっぽをふりふりして、じっと商人さんを見つめる。サーモンくれるよね?
「おや? 契約は成立していると思っていましたが、このタイミングで報酬の交渉ですか?」
あくびをして、そっぽをむく
「たしかに、あなたが受注しなければ、誰もできませんからね・・・。いいでしょう、サーモンを切り身で、200gをお約束しましょう。200gといえば・・・・これくらいの量ですかね」
商人さんは、片手で大きさを示す。
俺様は、しっぽで机をパシン! それじゃあ、おばあさんと二人では少なすぎる。
「ふむ、足りませんか? では、400gでは? これ以上は勘弁して頂きたい」
その様子を見ていた、倉庫のおじさんが商人さんに聞いてきた。
「会長さん、まさか、こいつの言ってることが解るので?」
「いや、解るわけないでしょう? しかし、商売というのは腹の探り合いです。こういう交渉なら、言葉が無くてもわかります」
なるほど、妙に会話が成り立つと思ったぞ。しかし、まだ少なすぎる。
「にゃ〜〜〜〜〜ご」
俺様は、すこし長めに鳴き声を上げた。
「まさか一匹まるごと欲しいと言われるので?」
そうだ、その通りだ。嫌になるほど食べたいのだ。
「いや〜さすがに、それはちょっと・・・」
「うぎゃーお」
「いや、ちょっとまってください、そうですねえ・・・・」
俺様のしっぽは左右にパタンパタン。
商人さんは、何やら道具を取り出して、パチンパチン・・・しばらく待つ。
「では、こうしましょう。この倉庫の害獣駆除を定期的にお願いします。10日に一回の一年間契約でどうですか? それで、キラーサーモンの半身を提供しましょう」
半分だけか、まあ仕方ないな。
「まったく、かわいい顔をしてヌコ様も、なかなか侮れないですね」
よし、交渉成立だな。
ネズミの野郎は、夜に出てくると黒も言っていた。そのまま、倉庫で待たせてもらおう。
今は少し忙しい時期らしくて、倉庫のおじさん達は、よる遅めの時間まで仕事をしていた。
おじさんの夜食のお弁当を横からちょっともらう。チキンっぽいお肉だ。パンは食べないから。娘さんが作ってくれたお弁当だそうだ。
おじさん達が帰ったら、倉庫の中を見回りだ。
気配を絶って、荷物の隙間や壁際を注意深く見ながら歩いていく。
小さな音がした方へ、姿勢を低くして近寄る。いたぞ、ネズミだ。
黒っぽい茶色で、凶暴そうな目付き。ネズミって、ぱくっと咥える位の大きさだと思っていたけど、 思っていたよりデカイ。俺様と同じか、すこし小さいくらいだ。
でもまあ、なんとかなるだろう。
そろそろと、近づいて、荷物の影から様子を伺う。俺様の全力疾走の射程に入った。
一気に走って、ネズミの背後から押え込む。ネズミも気づいて逃げ出したから、両手で押え込むつもりが、右前足の爪だけが、ネズミの背中にかすっただけだ。
ネズミは走っていて荷物の壁にぶつかって倒れた。
あれ? 逃げないのか? とおもって近づくと、背中に大きな傷があって、死んでた。
俺様の爪ってこんなに強力だったっけなあ・・・
こんな所に置いておくと、他のネズミが警戒するから、入り口のところに置いておくか。しっぽを咥えて引きずろうとしたけど、結構重い。途中でめんどくさくなった。
あーそういえば、無限収納とかって荷物を入れられるんじゃなかったっけ?
どうすればいいんだろう。しばらく四苦八苦したけど、結局 入り口まで引きずっていった。
それから、5匹目のネズミを仕留めた所で、どこからか「チャリーン」と音が聞こえた。なんの音だ?
次の日の朝、やってきたおじさん達が、入り口のネズミを踏んづけて、転びそうになっていた。
「うぉぉ、なんだこれ。ネズミか?! こんな所に置いておくんじゃねぇ」
いや、だって、ヌコ業界の様式美だからな。お約束ってやつだよ。
一度、ハンターギルドにもどって、朝ごはんをもらう。
昼間は、いつもの一日を過ごし、夜になったら倉庫へいってネズミを狩る。
3日間で、11匹のネズミを仕留めた。時々、どこかから「チャリーン」と音がしたけど、なんだったんだろう。
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