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がしゃどくろちゃん番外編 雨の日の映画館


今日は大雨。

公園には、誰も来ない。

人魂も、どこか元気がない。


「……暇だな」


がしゃどくろが呟く。



やがて。

影が、ひとつ。

また、ひとつ。



のっぺら。

一つ目。

三つ目。

百目。


元・お化け屋敷の仲間たちだった。




「久しぶりっす、がしゃさん」

一つ目が軽く手を上げる。


「……まだ生きていたか」


「何いってんすか。俺ら妖怪モニュメンツっすよ!?」



少しの沈黙。

雨音だけが響く。




がしゃどくろが言った。


「今日は誰も来ない」


「ですね」


「映画でも行くか。ご馳走してやる」




一つ目が目を輝かせる。

「マジすか!?太っ腹!」


「血肉沸くホラーでも見るとしよう」



一つ目がニヤッと笑う。

「血も肉もないガシャさん、かっけー」


「……バカにしているのか?」


「僕たち骨だけになったら特徴無くなってしまうので」

のっぺらが言う。


「いやいや!そこに痺れる憧れ――」


「ストップ」


間髪入れずに遮る。


「それ以上言うな。炎上する」



「意識高ぇな……」




映画館。

雨のせいか、客は少ない。


「ここが娯楽の最前線……」



受付。


「大人五名で」


係員が、少しだけ固まる。


「……本日は」


紙を見る。


「妖怪千円デーとなっております」



「……何だそれは」


「企画です」



一つ目が前に出る。


「ようよう兄ちゃん」

嫌な予感がした。


「俺は目が一つしかないんだ」


「はい」


「半額にしてくれよ」



「なるほど」



のっぺらが続く。

「じゃあ僕はタダですね」


三つ目、百目も無言で前に出る。

係員は、全員を見渡した。


数秒、沈黙。



「かしこまりました」



「え?」



「では――」

「のっぺらさん 0円」

「一つ目さん  500円」

「がしゃどくろさん 1000円」

「三つ目さん  1500円」

「百目さん   50000円」

になります。



「……は?」



全員、百目を見る。



百目。

沈黙。

目だけが、たくさんある。



一つ目が震える。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」



係員は冷静だった。

「目の数に応じて加算されます」


「誰がそんなルール作った!?」


「一つ目様のご提案ですが、何か?」



がしゃどくろが、静かに言った。

「……合計は」



「53000円になります」




沈黙。




一つ目が、小声で言う。

「……5000円の予定じゃなかったっすか」


「お前が余計なことを言った」


「でも半額に――」


「結果を見ろ」


百目が、ぼそり。

「……ごめん」



その時。

がしゃどくろが、前に出た。


「高い。だが払う!」


全員が止まる。



「……いいんすか?」



少しだけ、間。



「“経験”だ」


「かっけぇ……」



上映中。

百目だけ、ずっと目を閉じていた。


「見ないのか」


「……怖い」



終演後。


「どうだった」


一つ目。

「普通に怖かったっす」


のっぺら。

「表情がない分、逆に想像できて良かった」


三つ目。

「視点が多くて楽しめた」


百目。

少し間があって。

「……コスパが悪い」



「だろうな」




その夜。

今日はうちの映画館にがしゃどくろさんがきてくださいました。


SNSに、支払いの写真が上がっていた。


投稿:映画館受付係


#妖怪千円デー

#目の数で破産

#百目ごめん

#百目で破産した日

#目は多いほど損

#妖怪格差社会


コメント:

・百目かわいそうで草

・そのルールやばい

・逆に行きたい

・がしゃどくろちゃん奢り神



結果

がしゃどくろちゃんのフォロワー5554人


がしゃどくろは空を見上げる。

雨は、まだ降っている。


「……無駄ではなかったな」



ぬりかべがいない夜。

代わりに、仲間がいる。


百目が小さく言った。

「……次は、割り勘で」


少しの沈黙。


「……そうだな」


読んでいただきありがとうございます。

フォロワーあと1人でゾロ目ですね。がしゃさんがんばれー。

もしかして、あの神様、

こういうの普通に作るタイプかもしれない。


次は現実の話です。

こっちも、少しおかしいです。


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