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がしゃどくろちゃん番外編2 おばけ公園同窓会


ある日の昼下がり。

公園のベンチに、見慣れた顔ぶれが集まっていた。


人影はない。

だが、モニュメンツたちは妙に賑やかだった。


「……暇だな」


がしゃどくろが空を見上げて呟く。

風が吹くたび、骨がカラカラと鳴った。


「いやいや、がしゃさん。最近は忙しい方じゃないっすか?」


一つ目小僧が軽い調子で言う。


「俺っちなんか、一眼レフのイメージキャラっすよ。

“視線を逃さない”ってコンセプトで」


胸を張って、続ける。


「目力っす!」


「それ、ただの目じゃないのか」


「違うんすよ、ニュアンスっす!」


のっぺらぼうが穏やかに続ける。


「僕は新年の福笑いイベントに呼ばれてます。

顔がないの、ちょうどいいみたいで」


「まあ、それは分かる」


三つ目が鼻で笑う。


「俺は占い師のところで働いてる。

“もう一つの視点”ってやつだな。なかなか評判いいぞ」


「……みんな、“目”で食ってるな」


がしゃどくろがぼそりと呟く。


百目が静かに手を挙げた。


「僕はランタンにデザインされました。

“見られている安心感”が売りです」


一つ目が横から補足する。


「ソロキャンプでも寂しくないって、レビューは高評価ですよー?」


「それ安心か……?」


「評価は正直です」


「レビュー社会だな……」


ぬりかべが腕を組んだまま、ぽつりとこぼす。


「……みんな、活躍してるな」


一つ目がすぐに食いつく。


「何言ってんすか!かべさんだって“ぬりかべカイロ”、めちゃ人気じゃないっすか!」


「冬限定だがな」


「限定って言葉、むしろ強いっすよ!」


がしゃどくろは少しだけ笑って、ふと思い出したように言う。


「そういえば、雪女の話は聞いたか?」


三つ目が頷く。

一つ目が身を乗り出す。


「今や忙しいからな。“雪女印のふわふわアイス”、大ヒットだ」

そして大げさに言う

「行列っすよ、行列!俺らの中では一番の出世頭っす!」


のっぺらぼうが小さく頷く。

「もう“現場にいない側”ですね。口どけが軽くて、“溶ける前に消える感じ”がいいらしいです」


「へえ……」

がしゃどくろが感心したように言う。


三つ目が少しニヤつく。

「それで、口裂け女がキレてたぞ」


「なんて?」


三つ目が真似するように言う。

「“私の方がキレイなのに”って」


一瞬、間があく。


百目が小さく呟く。


「……自分で言いましたね」


のっぺらぼうが続ける。

「“私、キレイ?”の工程を飛ばしてる」


一つ目が吹き出す。

「手順ミスっすね!」


少しだけ場が和む。


ぬりかべが、ふと思い出したように口を開く。


「……ミイラの話は?」


空気が少しだけ重くなる。


一つ目が声を落とす。


「あいつは……運がなかったっすね」


「何があった」


「最初、病院の入り口に置かれたんすよ。

“リアルでいい”って話だったんですけど」


「……ああ」


「不謹慎って苦情来て、すぐ撤去っす」


「今は?」


「小学校の理科室っす。標本扱いで」


誰もすぐには言葉を続けない。


一つ目が、少しだけ明るさを取り戻すように言う。


「でも、こうやって集まれるの、いいっすよね」


「……そうだな」


「ここ、変わってないし」


百目が周囲を見る。


「誰もいませんが、見られている感じはあります」


「それ、お前のせいだろ」


小さく笑いが起きる。



風だけが静かに通り過ぎる。

がしゃどくろが、ゆっくり口を開く。


「……で」


視線が集まる。


「私は?」


沈黙。


一つ目が視線を逸らす。


「いや、その……がしゃさんは……」


三つ目が言葉を探す。


「ほら、完成されてるというか……」


百目が控えめに言う。


「商品化しづらいと言いますか……」


ぬりかべは何も言わない。


少しして、一つ目がぽつりと口を開いた。


「……でも」


がしゃどくろを見る。


「がしゃさんには、“ここ”があるじゃないっすか」


「ここ?」


「この公園」


少し間を置いて、にやりと笑う。


「それに、SNS」


「……SNS」


「はい。フォロワー順調に増えてるって聞いてますよ」


風が吹く。

骨が、かすかに鳴る。


がしゃどくろはゆっくり空を見た。


「……なるほどな」



誰もいない昼下がり。

それでも確かに、“見られている場所”。


「現場維持、か」


小さく、そう呟いた。


今回は同窓会みたいな話でした。

来るやつもいれば、来ないやつもいる。

それでも、同じ場所にいたことは残る。

がしゃどくろちゃんは、今日も公園にいます。

現場維持、というやつです。

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