第三話 がしゃどくろちゃんは壊れない
昔――
彼は“恐怖”だった。
大型遊園地のお化け屋敷、その入口。
来園した子供たちを絶望させる存在。
巨大な骸骨モニュメント。
それが誇りだった。
そして現在。
「もう少し“怖さ”を強くしたいんですよね」
公園の管理者が言った。
数日後。
おばけ公園に、新しいモニュメントが設置された。
――墓。
無機質な石の塊。
名前も刻まれていない。
ただ、そこにあるだけで“死”を連想させる存在。
「これで、少しは雰囲気が出るはずです」
その日の夜。
SNSは、荒れた。
「これは違う」
「子供が来る場所でしょ?」
「普通に怖すぎる」
「前のが良かった」
“#おばけ公園”
“#改悪”
“#怖すぎる”
炎上した。
がしゃどくろは、それを見ていた。
「……これが、本来の姿ではないのか」
自分もまた、恐怖の象徴だったはずだ。
だが今は。
「可愛いー!」
「写真撮ろー!」
誰も、怖がらない。
「……」
何も、言えなかった。
夜。
風が強かった。
ガコンッ!!
公園のゴミ箱が、倒れる。
転がる。
そして――
ぶつかった。
がしゃどくろに。
音が、響いた。
ひびが入る。
崩れる。
「……あ」
一部が、壊れた。
翌日。
「え、壊れてない?」
「写真撮ろ!」
人が集まる。
スマホが向けられる。
投稿される。
“#がしゃどくろ骨折”
“#骨粗鬆症”
“#骨密度”
笑い声。
「中、空洞じゃん!」
「軽っ!」
「ウケる!」
バズった。
フォロワーは、また増えた。
がしゃどくろは、何も言わなかった。
ただ、空洞の中を見ていた。
何もない。
最初から、何もなかったのかもしれない。
それでも。
人は来る。
写真を撮る。
笑う。
その形だけが、残る。
がしゃどくろは、静かに目を閉じた。
求められる形だけが、残っていく。
「なりたい自分と、求められる自分。どちらが残るのかは、選べないのかもしれません。」




