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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
51、創世を知るドラゴン

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600、別格の友人

そこはベスレムのはずれの草原、多少場所は移動しながら、いまだにリトスの兵達が滞在していた。


いや、その様子は大きく変わっていた。

王子アラダが原因不明の病で急逝し、側近は責任を取って自害した。

そう言う事になっている。

今は大皇が指揮を執り、ヤヌーシュは副官として隣にいた。


様子が変わった大きな要因は、全ての兵を新しく入れ換え、人数を減らして騎兵を増やしたのだ。

しかも、その装備は戦でも始めるかのように重装備だった。


ヤヌーシュがうっとうしく垂れ込める黒い雲に目をやる。

ずっと彼らの頭上だけに降り続いていた雨は、アラダの訃報に合わせて新しい馬車が届いた所で、ヴァシュラムたちが温泉地から戻るとようやく止んだ。


ヴァシュラムは不気味な笑いを浮かべ、雨を降らせていた精霊を捕まえて壊したと言った。

ヤヌーシュは壊したの意味がわからず大皇の顔色を見るが、大皇は相変わらず好きにさせている。


「お爺様、これからルランに向かわれるのでございますか? 」


「さあな、 」


大皇は、酒を飲むばかりで何をするのか計画をヤヌーシュに漏らさない。

だが、確かにお爺様はこの旅の目的を言ったのだ。

美しい地の精霊に、そして火の巫子に会うためだと。


チナとラユールを連れ、少し離れた丘のような場所に登り見下ろしていると、側近のラユールが空を指さし、伝書鳥がきたようなので何か聞いてきましょうか?と訪ねる。


「 鳥? 」


城であれば、水晶で地の魔導師が伝令をするはずだ。

すでに兵の入れ替えは住んで、旅立つだけなのにお爺様はいまだ動かそうとしない。

おかしい、一体どこから来たのだ?




「 ヤヌーシュ殿 」




背後から、ささやくように声をかけられた。

ハッとして、ラユールに視線を動かす。

チナが思わずサッと後ろに立ち、ヤヌーシュを庇った。


「 誰だ 」


振り向かず問うと、思いがけない返事がした。


「覚えておいででしょうか?

私はレスラカーン様の側近、ライアと申します。」


横を見て、チラリと目を動かす。

後ろの茂みに確かに見覚えのある顔が草むらからのぞいていた。


「馬鹿な…… あのケガで? 」


「はい、巫子様のおかげで、こうして生きております。」


「巫子…… そうか、ここはそう言う国だったな。

少し待て、我らは常に監視されている。

チナがうっかり動いてしまった。ラユール、一芝居だ。」


「は、その方、ふざけるな! 」


ドンと突き飛ばされ、チナがよろめく。

チナが急いでヤヌーシュの足下に来ると、彼のベストの裾を手に取り額に当てた。


「殴れ」


ラユールが大きく手を振り上げ、手加減無しで叩いた。

倒れ込むチナに地面を指さすと、彼はヤヌーシュの足下で四つん這いになる。

ヤヌーシュは、その背に腰を下ろした。


「良かろう。下手な芝居だが、何とかするさ。

ライア殿、先のことは我が軍の汚点であると私は思っている。

謝罪する。」


「なんの、地の神殿にて巫子に手当を受けて、生還いたしました。

お気になさらず、 ……と、言いたい所ですが、これはどういう状況か、おたずねしたい。」


ふむ、と一息つく。

情報を渡すか渡さないかなど、考えたこともないが、こうして接触したのは何かの導きだろうと思う。


「先日まで弟が指揮を執っていたが、今は大皇自身が指揮を執っている。

大皇は、火の巫子に会うために来たと私は聞いているのだが、これは……

まるで、(いくさ)準備のようだと思う。

これからのこと、私は聞かされていないのだ。」


「 …… なるほど。」


ライアが潜んだまま少し考える。

空から来た彼は、位置関係がよく見通せた。

だからこそ、その結論に至ったのだ。


「恐らくは…… ベスレムの城を、挟み撃ちにする可能性が高い、 と、考えます。」


ヤヌーシュが、ビクンと顔を上げて動揺する。

その驚きを悟られぬように、立ち上がると伸びをして見回すように振り返った。


「馬鹿な! お爺様がこの国に牙を剥くとは思えない! 

…… い、いや、それはまったくとは言いがたいが、目的を考えるならば、友好的に進めねば話が…… 

いや! いや! そうであった、お主が一番わかっている。

お爺様は使者を殺そうとしたのだった。

気に食わぬのは、あの精霊王の存在だ。

あれとの力関係は、いまだ私にも不可解なのだった。」


ラユールが、横で大げさに手を振った。


「ヤヌーシュ様、伝令が参ります。」


ヤヌーシュが顔から力を抜いて振り向くと、兵が1人駆けてくる。


「ヤヌーシュ様! 大皇陛下がお呼びであらせられます! 」


ラユールが、口に手を当て声を上げた。


「わかった! 何用か? 」


「兵を挙げると! ベスレムへ、別部隊との合同作戦でございます! 」


「 な……ッ! 」


ヤヌーシュが目を剥き、ギリギリと歯を噛みしめ足下の草をバリバリとちぎって捨てる。

大声で叫び出したいような、最悪の状況だった。


「こんなやり方が大国である、我がリトスのやり方だと?

ベスレムは、関も通らぬ大皇の列を黙って通したのだぞ?

使者を殺しかけて、それでも武力ではなく精霊の力で警笛を鳴らし続けた。

あれほど弱体化した我らを討つのは容易であったはずなのにだ。

だが、彼らは討たなかった。

目こぼしを受けたのはこちらの方なのだ。

それをお爺様はわかっておいでか?!


ベスレムなど、攻めて取れるならとうの昔に取っていたはずだ。

だが、いまだ成しえなかった。

ここは精霊国だ、その怖さの片鱗を知らされながらこんなことを…… おのれ、あの精霊崩れが!

今後リトスがアトラーナへ踏み入ることさえ許されなくなる! 」


唇を噛むヤヌーシュに、ライアが大きくため息を付いた。


「ヤヌーシュ様、それでも、我が主はあなたを友だと仰るでしょう。

そう言う方です。

どうか、敵味方となっても…… 」



「  許さぬ!!


 駄目だ!!  それだけは、それだけは絶対に許せぬ!! 


敵味方など、私は許せぬ。

何としても!

隣国で友人が目の前に住まっているのに、会うことさえ許されぬ状況を、誰が指をくわえて見過ごすものか!


敵味方だと?? 駄目だ、絶対に! 」



「ヤヌーシュ様…… 」


普段そんな、甘いことを言う王子ではないと、ラユールは知っている。

だが、それを超える別格の友人が、初めて、この王子には出来たのだ。


それほど、あの修羅場でのあの機転に、感動されたのだ。

盲目の王子に。


「ライア殿、ベスレムを討ち、たとえ互いに人死にが出ようとも……


いや、元よりそのような事があってはならぬ。

だが、どんな状況でも、私は何としても和解へとこの命かけると、

どうか、汝の主へお伝え願いたい。」


「承知しました、では…… 」



ライアが、彼の血を吐くようないらだちを感じながら、そっと下がっていく。

だが、目を見開かねば。

何をすべきか考えねばならぬ。

城にはラクリス様が、果たして残された兵で対抗出来るのか?


ベスレムを取られれば、アトラーナの収入源である、産業の半数を取られてしまう。

我が国の大きな痛手となるのだ。


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