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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
51、創世を知るドラゴン

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591、ドラゴンから聞く、精霊の話

コトン、ズル、ズル、

衣擦れと、何かが這うような音がする。

何か、じゃない、これはシッポだ。

シッポを引きずる音。


その音を聞くと、グレンのお父さんドラゴンが容易に浮かぶほど、ここでの時間も長くなってきた。


「リリス、リリス、赤殿。

寝過ぎだよ、キミ。闇虫が心に入り込むよ。」


ドラゴンが作った寝台に、横になってすっかり眠っていた。

目を開けると、キョロキョロ見回す。


「あー、まだ狭間にいるんだった。」


クッションの上から、ちょろりと小さなドラゴンが飛び出して肩に乗った。


「リリ、リリ、」


「ハイハイ、イネス様、おはようございます。」



「随分疲れてたんだねえ、まあ、私が言えた事じゃないけどね。

キミ、夢でどこか行った? 」


「夢で…… うつろでよく覚えていませんが、隣国のその隣の国に空いた異界との穴を、見に行ったような気がします。」


首をひねって考えながら告げると、ドラゴンが腕を組み、頬杖ついてうなずいた。


「ほう、キミは聖域を離れた場所にも行けるのかい? 」


「行けないんですか? かなり力は削がれますけど、トランでは力を使うことはできました。

あ、主様が同居なさっているからかもしれませんね。」


「ふうん、ふうん、なかなか興味深い。

キミの中の日の神は、聖域を出ることを拒絶しないのかい? 」


ふと、我に返って考える。

そんな事、考えたこともなかった。


「そう言えば、主様は、私のやることにほとんど反対などなさいませんね。

私は私のしたいことばかりに気が行って、主様の存在を感じたことがありませんでした。」


「ほう、ほう、日の神が、ふうん。

そんな事もあるのか、面白いねえ。」


「面白う、ございましょうか? 」


テーブルで、自分の白くて七色に光る髪を編んで、何かを作るドラゴンの向かいに座った。

グレンと同じ長い爪で、不便そうなのに器用に作るのを見ると、やっぱり親子だなあと思う。


「そうだね、日の神は神の中の神だ。

気まぐれだけど、その力は計り知れない。

存在の有無が、命に直結するのは他の神と同じだが、力の大きさが違いすぎる。

何しろ、天に浮かんでいる星神だ。

唯一、日中、神として常に人々の頭上に姿を見せている。

眷属もいない、唯一の神。

そんな神が、地上でうろうろするアリより小さい人間に、意識を向けたことが面白い。

彼は火の神が生まれたとき、双子神で生まれて天に昇ったと言われている。

それは人間さえもいない、この世界の誕生の頃だっただろう。

もっとも古い神だ。

この世界を照らしながら、気まぐれにアトラーナでは巫子を据えることを許している。

許しているのだよ、人間たちのために。

聖域など必要も無いのに、聖域の存在を特別にしているのは日の神だ。」


「聖域が、存在しない? 

でも僕は、確かにアトラーナを出ると力が…… 半減したような、気が。

この通り、疲れて狭間に来てますが。」


ククッと笑って、ドラゴンが長い爪の指でリリスを指さした。


「人間が聖域を作っているのさ。

キミは自分の中で、アトラーナを出たら力が出ないと自分自身に暗示している。

それにとらわれている。

でも実際は、十分に力を使えたはずだよ? 

身体の疲れは、働き過ぎじゃないのかね? 」


そう言えば、確かに。

力が使えなかったなら、あの王子は救えなかっただろう。


「他の、地や水や、風は聖域があるのですか? 」


「彼らは彼らが聖域を決めている。

眷属は、聖域で神を近くに感じ、癒やし、力を蓄える。

アトラーナは、人が精霊の存在を信じているからね。

神殿を建てることで、人間には信仰の対象として念を送らせ精霊の力となっている

人と共にあることで、存在を確たる物にする。

火の眷族もそうだろう?

言うなれば、もっとも人に近しく接することで、存在を維持するんだよ。」


「日、は? 眷属もおりませんが。」


「日は日、自体が力の源だ。

日の神は甘えてくるだろう? わがままで、駄々っ子みたいだろう? 」


なんだか楽しそうに聞いてくる。


「ええ、理由があるのでしょうか? 」


「日の神は、力の源。与えるのが仕事だ。

与えるばかりだから、いつも何かを与えてほしい。

だから、巫子にだけは甘えるんだよ。

巫子にだけは、それが許される。

その代わり、巫子には大きな力を使うことが許される。

だから、日の巫子は1人、格が違うのだよ。」


「そう、でしょうか?

よく、わかりませんが。」


何も与えているなんて気はしないのだけれども。

フィーネお聞かせすると言って、まだだし。


ボンヤリ、実感なさそうなリリスに、ドラゴンが苦笑する。

格が違うと言われても、はあ、そうですかと言った感じで、どんなに力を与えられたと言っても素朴さは変わらない。

それが、この子の良さなんだろう。


何だろうね、とても愛らしい。

人間の白い部分で満ちている。

なのに、良く思考していてフワフワしていない。

この長く生きたことだけが取り柄のドラゴンに、聞きたいことが山ほどあるのだろうに、まだ一言も質問攻めにしてこない。

私が自然に話すのを待っている、そんな、探るような瞳が澄んでいて濁りが無い。

なんて、一緒にいて心地良いのだろうと、ドラゴンは微笑んだ。

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