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赤い髪のリリス 戦いの風〜世継ぎの王子なのに赤い髪のせいで捨てられたけど、 魔導師になって仲間増やして巫子になって火の神殿再興します〜  作者: LLX
51、創世を知るドラゴン

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589、神秘の鳥

金の止まり木に留まる神秘の鳥が、うやうやしく王の前に運ばれてきた。


この国では見られない珍しい鳥だ。

黒い羽根が虹色に輝き、首には王から送られた大きな真紅の宝石のネックレスをしている。

頭には美しい瑠璃色の羽根のトサカがあり、幾本もの長い尾羽が神秘性を増していた。


この鳥は、ある日突然この玉座の間へと飛んでくると、病に伏せている王妃の不調の原因を言い当てた。


原因は夜露を垂らした鏡に映る、女の呪いだと。

王は怪訝な顔で翌日鏡を用意し、前夜集めさせた夜露を数滴垂らして覗き込むと、1人の見覚えのある女官長が写った。

それは王妃の輿入れにも同行してきた、親しい女官だった。

王妃には暇を出したと噓を言って彼女を密かに連行させると、懸命に無実だと訴える。

だが王は一切聞く耳を持たず、逆賊として極秘裏に処刑してしまった。

すると、見る間に妃は元気を取り戻し、伏せることも無くなったのだ。


喜ぶ王は神秘の鳥と名付け、逃げないように足に鎖を付けて3人の世話係を付けた。

鳥はその後、大いなる力を授ける者がやってくると予言し、金を貯めよと谷を指し示した。

そこからは驚くほどに金が産出されるようになり、やがて王宮の壁には異界との穴が空いた。

異界の人間は無礼極まりなかったが、彼らの持つ物は見た事も無い物ばかりで、王はひどく高揚して早速取引をと持ち出した途中だ。


王は何よりもこの鳥の言う事を信じ、大切に扱うようになっている。

鳥が何を言い出すかわからない状況は、人々にはひどいストレスにもなっていた。


「神秘の鳥よ! 

今、アトラーナという国から神に仕える巫子と言う者が隣国に来ているという。

わしはその巫子を手に入れたい。

巫子を手に入れるは吉か凶か、予言をしたまえ。」



黒い鳥は、ブルリと身震いして、いつもの奇妙に歪んだ声で告げた。



『 火ノ巫子ハ、ソノ出現ヺ、凶兆トスル


殺メヨ 』



「なんと、凶事と申すか。

だが殺せばアトラーナはどうするか。」


焦る王子がすかさず声を上げた。


「父上! アトラーナとトランは、今良い関係になっています。

巫子を殺せばトランとも戦争状態に…… 」


だが、王は息子の言葉を手を上げて遮る。

今は、息子よりも鳥の言葉を重んじていた。



『 鏡ヺ、見ヨ。 王子ハ、巫子二、殺サレタ 』



王が、急ぎ鏡を持って来させる。

そこに、夜露の入ったビンから数滴を落とす。

すると、赤い髪の少年が、バルザール王子を剣で刺し殺す姿が映し出された。


「おお…… 何と非情なことよ。」


それを見て、王が額に手を当て目を閉じる。

だが、王子は怪訝な顔で鳥を見た。


「我が弟は、このように一方的に倒されるような弱さなどないはずだが。

この巫子は剣の達人か? 」


鳥が、ゆっくりと目をそらし、3度羽ばたく。

言葉を探しているようにも取れた。

それが、どこか不信感を招く。


「解せぬ…… 1人、戦いを望んだというのか?

弟は、銃という物さえ持っていた。

よもや、その異界の武器の呪いではあるまいな。」


どうしても、納得出来ない王子が鳥に迫る。

取り巻きがあれほどにいて、王子自らが戦いに望むなど……

いいや、バルザールは好戦的だ。

銃の試し撃ちを楽しみにしていた。

だが、巫子には剣で殺されている。

戦いを好むからこそ、弟の剣の腕は確かだ。


おかしい、状況を知る者がいないのが口惜しい。


「控えよ、フェルディ。

鳥が見せた物は事実であろう。

ならば、この赤い髪の巫子には相応の報復をせねばならん。」



『 巫子ヺ殺シ、あとらーな二報復セヨ

あとらーなハ、隣国ト手ヲ取リ、コノ国ヘ攻メテクル 』



鏡には燃え上がるこの城が映し出され、その火が鏡から吹き上がるように写る。

そして、沢山の兵に囲まれ、捕らえられ、首を落とされる王の姿が映った。


思わず王が立ち上がる。

家臣たちが、ザワザワとざわめいた。


「おお…… 」

「なんと言う恐ろしい…… 」


王はその写された自分の姿に苦々しい顔を浮かべ、腰から剣を抜くと鏡に向けて投げつけた。


パーンッ、ガチャン!


バサバサバサッ 『 ギャアアア、ハハハハハ 』


鏡が床に落ち、粉々に割れる。

黒い鳥が笑うように鳴いて、バサバサと羽ばたいた。



『 王ヨ、決断セヨ! 決断セヨ! 決断セヨ! 』



王が忌々しい顔で、鳥を下がらせよと手を振る。

アトラーナの情報は、少ない物だ。

だが、精霊とのトラブルで、城が荒れて弱体化していることは耳に入っている。

だからこそ、ケイルフリント王にアトラーナを攻めさせて、その混乱の中で王子を拉致せよとバルザールには指示したのだ。

ケイルフリントがアトラーナを取り、消耗したケイルフリントを後ろから襲えば、一石二鳥であのアトラーナまで手が届く。

バルザールからは、逐一上手く行っていると良い報告が来ていたのに、この有様だ。

なぜケイルフリント内で騒ぎを起こしたのか、なぜアトラーナを攻める前に行動を起こしたのか、バルザールの浅思慮には歯がゆい。


「アトラーナは、トランと良い関係だと聞いていたな。

巫子が関わったということは、ケイルフリントにも働きかけているのかも知れぬ。

王家の弱体化の噂は偽装ではなかったのか?

油断させ、2国を手玉にとって我が国を襲ってきても不思議では無い。」


急な展開に、集まった者達がザワつく。


「ですが父上、アトラーナはあまりにも遠い国です。

我が国に攻め入る事で得る、利が見えません。」


確かに、アトラーナが我が国で得るものか……


「ふむ…… ケイルフリントにいる部隊は戻ったのか? 」


騎士が前に出て一礼すると、王子がうなずいた。


「報告では、半数しか国に戻っておりません。

あとの半数は騒ぎでケイルフリントの守りが堅くなり、縦断が難しくなったためアトラーナとの国境付近で待機しております。」


「待機だと? どのくらい残っているのか。」


「500ほどは…… 残っていると推測しますが。

多くをケイルフリントとの戦いで失っています。

近くの村を占拠して帰る機会をうかがっていると報告がありました。」


王がしばし考え、ゆっくりうなずいた。


「隣国を越えてまでも、我が国で欲する物。

それは恐らくは金だ。

鳥が教えた金鉱は、良き金が多く出ている。

きっとこの神秘の鳥の噂が、他国にも広がっているに違いない。

鳥が言い当てた金の山は、どれほどの財を生むか計り知れない。

それよりも、 いいや、それよりもだ!


この鳥を狙ってくるのかも知れぬ。

巫子だ。 巫子を捕らえよ!


もし鳥を狙い、巫子と言う神秘を感じる者を先陣に加えたのならば。

戦いに巫子が加わった、その理由は付く!


この、赤い髪の巫子を捕らえよ!


我が国の至宝、神秘の鳥を奪い、我が国の金さえ狙うというのなら、赤い髪の巫子を引き裂き、見せしめとしてアトラーナの城に叩きつけてやろうぞ!


腕や足は多少千切れて構わぬ。生きていれば良い。

ただし顔を傷つけるな。


ケイルフリントにいる残存隊に命令せよ! 」



「はっ! 」


王の命令を受け、ザッと皆が一斉に頭を下げた。



「「「 王の御心のままに! 」」」



一体何人残っているのかもわからぬまま、ケイルフリントに残る兵達には新たな命令が課せられてしまった。

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