報告書⑤ 宛先
五つ目は、██課の受領の記録の写しである。
宛先の██町の住所は、実在する。
建物は無い。
十一年前の秋に取り壊されており、その後は空き地のまま、駐車場にも畑にもなっていない。
表札の跡も残っていない。
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当該の宛先へ出した通知で、宛所に尋ねあたらずとして戻ったものは、十一通である。
十一年、年に一通ずつで、月も揃っている。
戻ったものは、その都度、受け取った日を書いて綴じている。
届け先の変更の届も、転送の申し出も、出ていない。
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十一通である。
市が出したのは、差出簿の上では十一通。
現に出された郵便は、それより一通多い。
戻ったことが記録されているのは、十一通。
戻ってきた封筒は、当課の机の上にある。
これは、その十一通の中に入っていない。
返した記録の無い一通が、返ってきている。
当課は、返す側にも照会を出した。
回答は、「記録に無いものは返していない」である。
返したのなら記録が残る、記録が無いのだから返していない、と書いてあった。
書いてあることは正しい。
宛先の人については、██課の回答に記載があった。
十一年前から所在が分からない。
探した記録はある。
見つけた記録は無い。
探索の端緒は、市の職権ではない。
十一年前に、所在を確かめてほしいという申し出があった。
申し出は一度きりで、以後の照会は無い。
申し出た者の名は、回答には書かれていない。
確かめてほしいと言った者の側も、確かめられていない。
建物が無くなった年と、所在が分からなくなった年は、同じである。
どちらが先かは、回答には書かれていない。
――残るのは、当課が何をどう書いたか、それだけである。




