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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一五 届いたことになっております

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報告書② 切手の受払簿

 市の郵便は、課ごとに預かった切手を貼って出す。

 使った日と、枚数と、額を受払簿に書き、月末に残高と突き合わせる。


 本年の、その月。

 この課が使ったのは、二百二十円ぶんだった。


――――――――――――――――


 私は、██市の会計の係で、切手の受払を預かっております。


 その月に、この課が使ったのは二百二十円です。

 一枚百十円ですから、二枚です。


 差出簿には、その月、一通しか書かれておりません。


 こういう差は、たまに出ます。

 重さで一段上の額になったとか、書き損じて貼り替えたとか。


 ですが百十円がちょうど二枚ぶんとなりますと、貼り替えでは出ません。

 額が二倍になるのは、枚数が二つのときだけです。


 私は月末に突き合わせて、判を押しております。

 押したときには、気づいておりません。


 二枚、使われております。

 書いてあるのが、一通です。


――――――――――――――――


 足し算である。

 百十が二つで、二百二十になる。


 誰にでも検算できるし、実際、当課でも同じ数になった。


 受払簿には、出した日ごとに枚数が書いてある。

 差出簿にある日と、その二日あとに、一枚ずつ。


 二日あとの側には、枚数一、額百十円とだけある。

 受払簿は日と枚数と額だけの帳面で、宛先も、書いた者の名も残らない。


 検算できるのに、差出簿の側は動かない。

 書いてあるものを直すことはできても、書いていないものを、後から他人の名で書くことはできないからである。


 二枚目は、差出簿の外側で使われている。

 差出簿の外で出た郵便は、市の記録の上では、出ていないことになる。


 出ていない郵便に、百十円が使われている。


 ――三つ目は、その郵便そのものである。

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