報告書① 差出簿
一つ目の資料は、差出簿の写しである。
差出簿は、出した郵便を一通ずつ書いていく帳面である。
日付と、宛先と、種類と、出した者の名を書く。
書くのは出す前で、書かずに出すことはできない。
出したあとで書き足すことは、この様式ではできない。
██課から出る郵便は、多くない。
当該の宛先は、十一年ぶん、十一行あった。
行は飛んでいない。
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私は、██市の██課で、通知の発送を担当しております。
この宛先は、引き継ぐたびに申し送ります。
毎年おなじ月に一通、出すことになっている、と。
理由は聞きましたが、私の口から申し上げるようなことではありません。
手続きの上で要る、それだけです。
止めることはできません。
相手の居場所が分かっていようといまいと、出します。
出したことが要るのであって、読まれたかどうかは、こちらの持ち分ではないのです。
宛先が変わったという届は、十一年、一度も出ておりません。
宛名は、いまも手で書いています。
私の前に、三人おりました。
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書いた者は四人。
そのうち二人が、いま市の職員名簿に無い。
一人は退職している。
退職の日も、届も、決裁も残っている。
もう一人は、消えているだけで、いつ辞めたのかが出てこない。
辞めた届が無く、辞めさせた決裁も無い。
市は本人の所在を確かめようとして、確かめられていない。
いなくなったのは、本年である。
私は二つのことを並べて書いた。
年に一通の通知が十一年続いていることと、書いた者のうち一人の居場所が分からないことである。
並べたのは、同じ帳面の上に両方が出てくるからであって、それ以上のことは書けない。
――二つ目は、その年の切手の受払簿である。




