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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一五 届いたことになっております

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報告書① 差出簿

 一つ目の資料は、差出簿の写しである。


 差出簿は、出した郵便を一通ずつ書いていく帳面である。

 日付と、宛先と、種類と、出した者の名を書く。


 書くのは出す前で、書かずに出すことはできない。

 出したあとで書き足すことは、この様式ではできない。


 ██課から出る郵便は、多くない。


 当該の宛先は、十一年ぶん、十一行あった。

 行は飛んでいない。


――――――――――――――――


 私は、██市の██課で、通知の発送を担当しております。


 この宛先は、引き継ぐたびに申し送ります。

 毎年おなじ月に一通、出すことになっている、と。


 理由は聞きましたが、私の口から申し上げるようなことではありません。

 手続きの上で要る、それだけです。


 止めることはできません。

 相手の居場所が分かっていようといまいと、出します。


 出したことが要るのであって、読まれたかどうかは、こちらの持ち分ではないのです。


 宛先が変わったという届は、十一年、一度も出ておりません。

 宛名は、いまも手で書いています。


 私の前に、三人おりました。


――――――――――――――――


 書いた者は四人。

 そのうち二人が、いま市の職員名簿に無い。


 一人は退職している。

 退職の日も、届も、決裁も残っている。


 もう一人は、消えているだけで、いつ辞めたのかが出てこない。

 辞めた届が無く、辞めさせた決裁も無い。


 市は本人の所在を確かめようとして、確かめられていない。

 いなくなったのは、本年である。


 私は二つのことを並べて書いた。

 年に一通の通知が十一年続いていることと、書いた者のうち一人の居場所が分からないことである。


 並べたのは、同じ帳面の上に両方が出てくるからであって、それ以上のことは書けない。


 ――二つ目は、その年の切手の受払簿である。

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