記録室より
十一通である。
十一年のあいだに、██市が同じ宛先へ出した通知の数だ。
年に一通、毎年おなじ月に出ている。
通知の中身は、市の側が相手に知らせなければならないことである。
知らせないまま先へは進めない手続きが、いくつかある。
相手が受け取ろうと受け取るまいと、知らせたという事実だけは要る。
だから、相手の居場所が分からないときにも、市は手を止めない。
決められた手続きを踏めば、その通知は届いたものとして扱ってよいことになっている。
掲げる期間が決まっていて、その期間が過ぎた日が、届いたことになった日として記録に残る。
十一通とも、その日が入っている。
日数にも、書式にも、落ち度は無い。
掲示の記録には、掲げた日と外した日が、年ごとに二つずつ並んでいる。
二十二の日付が、どれも規定どおりの間隔で離れている。
ファイルは、今朝、机の上に、置かれていた。
表紙に、事案番号〇一五。
照会は██課から来ている。
棚に一通あるが、どこにも記録が無い、という一行が添えてあった。
中身は薄い。
差出簿の写しと、切手の受払簿の写しと、掲示の記録の写しと、██課の受領の記録の写し。
それに、封筒が一通。
封筒は写しではない。
現物である。
折られておらず、湿ってもいない。
宛名は、十一通と同じ宛先。
表に、赤い字で、宛所に尋ねあたりません、と押してある。
届いたことになっている通知が、届かなかったものとして戻ってきている。
二つとも、それぞれの側では正しい。
――一つ目は、その差出簿である。




