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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一四 転入の予定

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報告書⑥ 最終行

 六通目は、相談室からの経過の説明である。


――――――――――――――――


 二十行目をもって、票の記入欄は尽きた。


 本年六月以降、当該の相談者の来訪は無い。

 照会の時点で、続きの票は作成していない。


 続きの票は、次の来訪があったときに作る。

 来訪が無いので、作っていない。


――――――――――――――――


 票は表裏で二十行と決まっている。

 行を足すことはできない。


 二十行を使い切ったら、続きの票を作り、前号の欄に前の番号を書いて繋ぐ。

 それが手順である。


 書く場所が無くなった月から、来なくなっている。


 二つを並べて書いたが、片方がもう片方の理由だとは、この説明のどこにも書かれていない。


 票は、これで終わりである。

 終わったが、完結の日は入れられない。


 完結の日を入れるのは、相談が済んだときだからである。


 済んではいない。

 来なくなっただけである。


 処理票を書いた。


 分類の欄に、保留と書いた。

 完結の日が入らない票を、済んだ扱いにはできない。


 だから、そう書いた。


 処理の欄に、事案終了と書いた。

 来ていないので、そう書いた。


 判を押した。

 書庫へ送る手続きをして、台車に載せた。


 載せてから、雨の音がした。


 この部屋に窓は無い。

 前に一度、同じことがあった。


 あのときより、長かった。


 私は席を立たなかった。

 書き終えるまで、そこに座っていた。


 止んでから、台車を見た。


 いちばん上の票の、完結の欄が濡れていた。


 廊下へ出た。

 外は、降っていなかった。

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