報告書⑥ 最終行
六通目は、相談室からの経過の説明である。
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二十行目をもって、票の記入欄は尽きた。
本年六月以降、当該の相談者の来訪は無い。
照会の時点で、続きの票は作成していない。
続きの票は、次の来訪があったときに作る。
来訪が無いので、作っていない。
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票は表裏で二十行と決まっている。
行を足すことはできない。
二十行を使い切ったら、続きの票を作り、前号の欄に前の番号を書いて繋ぐ。
それが手順である。
書く場所が無くなった月から、来なくなっている。
二つを並べて書いたが、片方がもう片方の理由だとは、この説明のどこにも書かれていない。
票は、これで終わりである。
終わったが、完結の日は入れられない。
完結の日を入れるのは、相談が済んだときだからである。
済んではいない。
来なくなっただけである。
処理票を書いた。
分類の欄に、保留と書いた。
完結の日が入らない票を、済んだ扱いにはできない。
だから、そう書いた。
処理の欄に、事案終了と書いた。
来ていないので、そう書いた。
判を押した。
書庫へ送る手続きをして、台車に載せた。
載せてから、雨の音がした。
この部屋に窓は無い。
前に一度、同じことがあった。
あのときより、長かった。
私は席を立たなかった。
書き終えるまで、そこに座っていた。
止んでから、台車を見た。
いちばん上の票の、完結の欄が濡れていた。
廊下へ出た。
外は、降っていなかった。




