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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一四 転入の予定

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報告書① 廃棄前の点検

 一通目は、市民相談室の相談員が書き起こしたものである。

 年限の来た票を廃棄するための点検を、この者が行っていた。


――――――――――――――――


 ██市の市民相談室で相談員をしております。

 来て三年目になります。


 市民相談の票は、完結の日から十年を過ぎたものを、年に一度まとめて廃棄しています。

 本年の対象は九百枚を少し超えるくらいで、二人で三日かけました。


 完結の欄が空のまま残っている票が、一枚ありました。


 最初は、書き忘れだと思いました。

 書き忘れは年に何枚か出ます。


 担当が異動して、そのまま残ることがあります。

 その場合は経過を読んで、こちらで完結の日を入れます。


 読んで、手が止まりました。


 一行目の区分が、継続でした。


 二十行目まで、どの行も継続です。

 初回がどこにも無く、それなのに二十行が続いています。


 初回の票が別にあるのだと思って、票の前号の欄を見ました。

 続きの票を作るときは、前の票の番号をここに書いて繋ぎます。


 空欄でした。


 念のため、同じ氏名で過去の票を探しました。

 票は氏名では並んでいないので、年度ごとに一枚ずつ見ていくことになります。


 三年ぶん見て、やめました。


 面倒だったからではありません。

 見ているあいだに、探しているものが最初から無いのだと分かったからです。


 この相談を受けたことは、一度もありません。

 名前にも見覚えがありません。


――――――――――――――――


 書き忘れではない、という判断だけが、ここに書いてある。


 この者は、票を廃棄しなかった理由も、廃棄できない理由も書いていない。

 年限が来ていないので、そもそも廃棄の対象ではない。


 ――二通目は、その票である。

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