報告書① 廃棄前の点検
一通目は、市民相談室の相談員が書き起こしたものである。
年限の来た票を廃棄するための点検を、この者が行っていた。
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██市の市民相談室で相談員をしております。
来て三年目になります。
市民相談の票は、完結の日から十年を過ぎたものを、年に一度まとめて廃棄しています。
本年の対象は九百枚を少し超えるくらいで、二人で三日かけました。
完結の欄が空のまま残っている票が、一枚ありました。
最初は、書き忘れだと思いました。
書き忘れは年に何枚か出ます。
担当が異動して、そのまま残ることがあります。
その場合は経過を読んで、こちらで完結の日を入れます。
読んで、手が止まりました。
一行目の区分が、継続でした。
二十行目まで、どの行も継続です。
初回がどこにも無く、それなのに二十行が続いています。
初回の票が別にあるのだと思って、票の前号の欄を見ました。
続きの票を作るときは、前の票の番号をここに書いて繋ぎます。
空欄でした。
念のため、同じ氏名で過去の票を探しました。
票は氏名では並んでいないので、年度ごとに一枚ずつ見ていくことになります。
三年ぶん見て、やめました。
面倒だったからではありません。
見ているあいだに、探しているものが最初から無いのだと分かったからです。
この相談を受けたことは、一度もありません。
名前にも見覚えがありません。
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書き忘れではない、という判断だけが、ここに書いてある。
この者は、票を廃棄しなかった理由も、廃棄できない理由も書いていない。
年限が来ていないので、そもそも廃棄の対象ではない。
――二通目は、その票である。




