記録室より
同じ人が、十三年、同じことを訊きに来ている。
訊いているのは、転入の手続きについて、である。
役所の窓口で訊かれることのうち、いちばん多い部類のものだ。
移ってくるとき、何を持って、どこへ行けばよいか。
答えは決まっている。
決まっているので、答えるほうも五分で済む。
五分で済むものを、二十回、訊きに来ている。
十三年のあいだに、答えるほうは五人いる。
訊くほうは替わっていない。
ファイルは、今朝、机の上に、置かれていた。
表紙に、事案番号〇一四。
中身は薄い。
市民相談の票の写しが一枚と、ほかに何通かあるだけである。
票には、来た日と、受付の時刻と、用件と、区分と、応対した者の名を書く。
一行ずつ書く。
同じ相談が続くときは、次の行に書き足していく。
区分の欄は、初回か、継続かの二つしかない。
初めての相談には初回と書き、同じ相談の二度目からは継続と書く。
それだけの区別である。
書き間違えようがない。
一行目の区分に、継続、と書いてある。
二十行のうち、初回は、一つも無い。
初回が無いのに、継続が二十ある。
完結の日の欄が空なので、年限が始まらない。
始まらないものは廃棄の対象にならず、だから十三年、残っている。
束をほどいた。
相談室から来たものが四通、当課で作った記録が二通。
それだけである。
薄いものほど、読み終わるのに時間がかかる。
――一通目は、その票を見つけた者の話である。




