報告書⑤ 陳情の記録
五通目は、当該の橋に係る陳情の記録である。
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市の陳情の受付簿に、当該の橋に関するものが十件ある。
十八年前から九年前まで、毎年一回。
九年前を最後に、以後は無い。
いずれも同一の者からで、文面は毎年同じである。
市販の便箋に、本文は一行しかない。
母が渡れませんので、架け替えてください。
末尾に住所と氏名がある。
ほかに記載は無い。
十四年前の架け替えの後も、文面を変えずに出され続けている。
市の回答も毎年同じで、架け替えは済んでいる旨を伝えている。
陳情者の母は十一年前に死亡している。
除票により確認した。
母の死亡後にも二件が出されている。
文面は変わっていない。
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この記録には、陳情者からの聞き取りが添えてある。
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私は、██市██町に住んでいます。
七十を、いくつか過ぎました。
あの橋のことは、長くお願いしていました。
一度目のときは、たしかに架けていただきました。
新しくなりました。
けれど、母が渡れませんでしたので、そのあとも同じものを出しました。
役所の方には、もう架け替えましたと言われました。
そうですね、と申し上げて、翌年また出しました。
二度目に架けていただいてから、お願いはしていません。
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橋は、架けてくれと言われて架かる。
この橋については、言った者がいる。
十年、毎年である。
一度目のあとも言い続け、二度目のあとで言わなくなった。
――六通目は、床版の出荷に関する記録である。




