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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一三 二度目の橋

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報告書⑤ 陳情の記録

五通目は、当該の橋に係る陳情の記録である。


――――――――――――――――


市の陳情の受付簿に、当該の橋に関するものが十件ある。

十八年前から九年前まで、毎年一回。


九年前を最後に、以後は無い。


いずれも同一の者からで、文面は毎年同じである。

市販の便箋に、本文は一行しかない。


母が渡れませんので、架け替えてください。


末尾に住所と氏名がある。

ほかに記載は無い。


十四年前の架け替えの後も、文面を変えずに出され続けている。

市の回答も毎年同じで、架け替えは済んでいる旨を伝えている。


陳情者の母は十一年前に死亡している。

除票により確認した。


母の死亡後にも二件が出されている。

文面は変わっていない。


――――――――――――――――


この記録には、陳情者からの聞き取りが添えてある。


――――――――――――――――


私は、██市██町に住んでいます。

七十を、いくつか過ぎました。


あの橋のことは、長くお願いしていました。


一度目のときは、たしかに架けていただきました。

新しくなりました。


けれど、母が渡れませんでしたので、そのあとも同じものを出しました。


役所の方には、もう架け替えましたと言われました。

そうですね、と申し上げて、翌年また出しました。


二度目に架けていただいてから、お願いはしていません。


――――――――――――――――


橋は、架けてくれと言われて架かる。

この橋については、言った者がいる。


十年、毎年である。


一度目のあとも言い続け、二度目のあとで言わなくなった。


――六通目は、床版の出荷に関する記録である。

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