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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇〇二 十一時の電話ボックス

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報告書① 証言

 一通目は、調査員の報告ではない。

 ある女性の、聞き取り証言の記録である。


 彼女の身に起きたことを、担当者が書き起こしたものだ。

 以下、原文のまま記す。


――――――――――――――――


 あの電話が鳴ったのは、二十三時十一分でした。

 時計を見たので、覚えています。


 うちの電話に、番号は出ませんでした。

 非通知でもない、ただの空白。


 出るつもりはなかったんです。

 でも、なぜか、手が伸びていました。


 母の声でした。


 三年前に亡くした、母の声です。

 「元気にしてる?」って、いつもの調子で。

 私、泣いてしまって。

 しばらく、話しました。


 母は、私しか知らないはずのことを、いくつも言い当てました。

 仏壇の花を替え忘れていることまで。


 最後に、母は言いました。

 「もうすぐ、迎えに行くからね」。


 優しい声でした。

 だから私、「うん」って、答えてしまったんです。


――――――――――――――――


 証言は、ここで終わっている。

 担当者の付記によれば、この聞き取りから三日後、この女性は、自宅前の交差点で、車に撥ねられて亡くなった。


 信号は、青だったという。

 目撃者は口を揃えて言った。

 「あの人、誰もいない方に向かって、笑って、頭を下げて、それから道路に出ていった」と。


 痛ましい事故だ。

 だが、これだけなら、我々の扱う事案ではない。


 問題は、同じことが、県内で、他にも起きていたことだ。

 死んだ肉親から、二十三時十一分に電話が来る。


 数日のうちに、その人が死ぬ。

 二通目は、その"電話"の出所を、突き止めようとした記録である。

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