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特異事象調査記録  作者: モリタ・ハク
事案〇一一 先に数えてある

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記録室より

数える、というのは、済んだことに使う言葉だと思っていた。


出席をとる。

売れた数を書く。


通った人を数える。

どれも、起きたあとで数えている。


起きる前に数を確かめる様式を、この課は持っていない。

たぶん、どこも持っていない。


事案番号〇一一。

表紙には日付の欄がいくつもある。


私はいつも、先を読んでから、そこへ戻ってくる。


舞台は、██市立██郷土資料館である。

木造の平屋を改装した小さな館で、農具と、この土地の古い書きものを並べている。


職員は嘱託の管理人が一名。

ほかに、週に二日、受付の補助が入る。


受付には、そのどちらかが座る。

年に来る人は、二千に届かない。


館は、耐震の工事のために閉まっていた。

前年の五月二十日から、本年の二月二十八日まで。


二百八十五日である。


その間、来館者は一人もいない。

入り口は施錠されていた。


館の入り口の上には、人が通ると数える装置が付いている。

八年前からある。


日ごとの人数を中に記録していて、月に一度、読み出して紙に出す。

年度末に、来館者数として市に報告するためのものだ。


ファイルに綴じてあるのは、その装置の記録と、受付の日報と、保守点検の報告書。

それと、それぞれについての照会の結果である。


紙は薄い。

数字ばかりで、文章はほとんど無い。


この課の様式には、数を書く欄が多い。

件数、人数、点数、日数。


どれも、確かめた日より前のことを書くための欄である。

埋まっていれば、済んだことだとみなしてよい。


そういう決まりで、私たちは仕事をしている。


館は休んでいた。

装置は、休んでいなかった。


まず、申し立てから読んだ。

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